「糖尿病性腎症」の診断基準はご存じですか? 症状・原因・予防法も医師が解説!
糖尿病3大合併症の1つである「糖尿病性腎症」。腎臓の機能が低下し、重症になれば人工透析が必要になることもあります。今回は、糖尿病性腎症の症状や原因、治療法などについて「徳井内科クリニック」の徳井先生に解説していただきました。
監修医師:
徳井 幹也(徳井内科クリニック)
目次 -INDEX-
糖尿病性腎症の診断基準とは? 尿検査や血液検査などでアルブミン尿やクレアチニンを調べる?
編集部
糖尿病性腎症について教えてください。
徳井先生
糖尿病性腎症は、糖尿病による3大合併症の1つです。腎臓の機能が衰え、悪化すると、腎不全に移行したり、人工透析が必要になったりします。
編集部
糖尿病性腎症は、どのように診断されるのですか?
徳井先生
糖尿病性腎症は、初期の場合ほとんど無症状なので、糖尿病と診断されたら定期的に尿検査や血液検査をおこないます。尿検査では「アルブミン尿」や「尿タンパク」などの項目を調べます。これらの成分は体に必要なもので、本来あまり尿中に排泄されないのですが、糖尿病性腎症になると尿中に漏れ出てしまいます。そのため、これらの数値が高くなることで、糖尿病性腎症を見つけることができます。
編集部
一方、血液検査ではどのような項目を調べるのですか?
徳井先生
主に糸球体のろ過量(GFR)を調べます。腎機能が低下するということは、例えるならフィルターに目づまりが起きるようなものです。その結果、腎臓がろ過できる血液の流量が減少します。糸球体のろ過量がどれだけ減少しているかを調べることで、腎機能の低下の度合いがわかるのです。
編集部
どんな項目をみるのですか?
徳井先生
具体的には、血清クレアチニンという項目を調べて、推算糸球体ろ過量(eGFR)を算定します。
糖尿病性腎症の原因・症状をステージごとに医師が解説 糖尿病患者の疲労感・食欲低下・吐き気は糖尿病性腎症のサイン?
編集部
糖尿病性腎症の原因はなんですか?
徳井先生
本来、腎臓は糸球体と呼ばれる組織で血液をろ過して不純物や余計な水分を取り除き、尿として排泄する役割を担っています。そのため、糸球体には細かな血管が張り巡らされているのですが、血糖値が高い状態が続くと、動脈硬化によって血管が傷ついたり詰まったりします。それにより、糸球体の機能が低下してしまうのです。
編集部
どのような症状が出るのですか?
徳井先生
症状が進行している程度により、病期は1~5期まで分類されます。初期には無症状のことが多いのですが、進行するにつれてむくみが生じてきます。さらに、第4期になって腎不全になると、息切れ、貧血、食欲不振、全身倦怠感などの症状が表れることがあります。
編集部
腎不全とはなんですか?
徳井先生
糸球体の血管が動脈硬化により傷害され、腎臓の働きが正常の30%以下に低下した状態を腎不全と言います。
編集部
腎不全は、治療をすれば治るのですか?
徳井先生
いいえ、一度腎不全を発症したら腎機能を回復させることは困難です。そのため、腎不全へ至る前に治療を開始し、腎症の進行を抑制する必要があります。特にアルブミン尿が多いほど、その後の腎機能低下を招く可能性が高くなります。さらに、腎機能の低下は心筋梗塞などの心臓血管合併症を併発しやすいので注意が必要です。
編集部
そうなると、治療はどのような目的でおこなわれるのですか?
徳井先生
治療において重要なのは、それ以上病状を進行させないことです。そのため、血糖値は勿論のこと、ほかのリスクファクターもコントロールし、腎機能をキープすることを目的におこなわれます。
糖尿病性腎症は治る? 治療法や腎不全など重症化予防のための食事療法
編集部
糖尿病性腎症はどのように治療するのですか?
徳井先生
糖尿病性腎症に対する治療の基本は、血糖値をはじめ、血圧や脂質などの危険因子をコントロールすることです。基本的には食事療法をおこないますが、それに加えて薬物療法も重要です。
編集部
食事療法では、どのような点に気をつければいいのですか?
徳井先生
どの病期も共通して、塩分制限が重要となります。それに加えて、第2期や第3期では厳格に血糖コントロールをおこなうため、低カロリー食が基本になります。そして、第4期では厳格な低タンパク食を基本にしながら、病態に合わせてカリウムを制限します。しかし、この病期に至ると低栄養は腎臓に大きな負担となるため、適切にエネルギーを確保する必要があります。第5期からは人工透析が必要になり、食事内容は透析患者の食事療法に準ずる必要があります。
編集部
食事療法以外に、糖尿病性腎症の治療法はありますか?
徳井先生
薬物療法では、糖尿病の治療薬を積極的に使用するほか、降圧薬を用いたり、むくみに対して利尿剤を用いたりすることもあります。特に血圧管理は非常に重要で、降圧剤は多剤併用することが多いですね。また現在、糖尿病性腎症の進行を抑制するには、糖尿病の治療薬であるGLP‐1受容体作動薬やSGLT2阻害薬が有効であることがわかっています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
徳井先生
糖尿病性腎症の治療では血糖コントロールだけでなく、血圧や脂質など、集約的な管理が必要になってきます。そのため、薬剤の管理は難しく、糖尿病専門医がいる医療機関に通うことをおすすめします。特に血清クレアチニンが高値となり、eGFRが30未満になった場合には腎不全と診断されますが、この段階になると糖尿病内科だけでなく、腎内科との併診も必要になってきます。地域の基幹病院などの腎内科と連携している医療機関で治療をおこないましょう。
編集部まとめ
糖尿病3大合併症の1つである糖尿病性腎症は、人工透析に至る可能性のある疾患です。糖尿病と診断されたら早めに腎機能の検査を受け、腎症の早期発見に努めるとともに、血糖や血圧をコントロールし、病期を進行させないように気をつけましょう。
医院情報
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診療科目 | 内科、糖尿病内科、消化器内科、循環器内科 |