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「痔」の種類と治療法を医師が解説! 知っておきたい基礎知識と注意点もご紹介

 公開日:2024/01/30

日本人の多くが悩んでいるとされる「」。しかし、一口に痔といっても色々な種類があり、それぞれの治療法は異なります。今回は痔の種類やそれぞれの治療法、痔のセルフケア法や日常での注意点などについて、「川﨑病院」の川﨑先生に教えていただきました。

川崎 俊一

監修医師
川崎 俊一(川﨑病院)

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東京医科大学卒業。その後、東京医科大学茨城医療センター消化器外科、社会保険中央総合病院(現・東京山手メディカルセンター)、東葛辻仲病院などで肛門疾患を学ぶ。2014年、茨城県日立市に位置する「川﨑病院」の院長に就任。医学博士。日本外科学会、日本消化器外科学会、日本大腸肛門病学会、日本臨床肛門病学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本癌学会、日本レーザー医学会、日本遺伝性腫瘍学会などの各会員。

そもそも、痔とはどんな疾患? 種類や特徴を医師が解説!

そもそも、痔とはどんな疾患? 種類や特徴を医師が解説!

編集部編集部

まず、痔について教えてください。

川﨑 俊一先生川﨑先生

痔とは、肛門や肛門周辺の疾患の総称です。統計によると、日本において痔の症状がある人はだいたい10人に1人とされています。また、検査をして痔が見つかる人は20~50%の確率で存在しているため、決して珍しい疾患ではありません。

編集部編集部

痔にはどのような種類があるのですか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

大きく分けて、痔は以下の3つに分類されます。

  • いぼ痔(痔核):肛門にいぼ状の腫れができたもの
  • 切れ痔(裂肛):肛門の皮膚が切れたり避けたりした状態
  • 痔ろう:肛門の内部が化膿して、肛門の内と外がトンネルでつながった状態

編集部編集部

そのなかで、最も多い痔は?

川﨑 俊一先生川﨑先生

最も頻度が高いのは、いぼ痔です。歯状線という直腸の粘膜と皮膚の境目よりも上(内側)の、粘膜の部分にできるものを「内痔核(ないじかく)」、それより下(外側)にできるものを「外痔核(がいじかく)」と言います。歯状線よりも上の部分は痛みを感じにくいため、一般には外痔核の方が痛みを伴うことが多いとされています。

編集部編集部

どこにいぼ状の腫れができるかによって症状が違うのですね。

川﨑 俊一先生川﨑先生

はい。現在、日本人で最も多いのはいぼ痔ですが、そのなかでも内痔核は一番多いタイプです。内痔核は痛みなどの自覚症状がほとんどないので、出血をして初めて自覚するケースも少なくありません。

痔の原因と治療法

痔の原因と治療法

編集部編集部

痔の原因はなんですか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

便秘や下痢、排便時のいきみが主な原因です。また、座りっぱなしの姿勢が続くと下半身の血行が悪くなって、いぼ痔ができやすくなります。加えて、重いものを持つことが多い人や、辛いものをよく食べる人なども痔になりやすいとされています。

編集部編集部

どのように痔を治療するのですか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

痔のタイプや症状によって異なりますが、多くの場合、塗り薬や座薬を使用して治療します。例えば、患者数が最も多いいぼ痔の内痔核では、進行度で4段階に分けられます。最も軽度なⅠ度であれば出血することはあっても肛門からいぼが出てくることはなく、この場合には生活習慣の改善や座薬、軟膏などで治療します。ただし、あくまで対症療法なので、治るわけではない点はご留意ください。

編集部編集部

症状が進むとどうなるのですか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

Ⅱ度になるといぼが大きくなり、排便時に肛門から出てきて、排便後は引っ込むという状態になります。この場合には座薬や軟膏に加えて、いぼの血流を止めて壊死させる「ゴム輪結紮療法(けっさつりょうほう)」や、いぼ痔を小さくする効果が期待できる「硬化療法(注射)」をおこなうこともあります。

編集部編集部

さらに進行すると?

川﨑 俊一先生川﨑先生

いぼが肛門の外に出てきて指で押さないと戻らない、あるいは指で押しても戻らない状態をそれぞれⅢ度、Ⅳ度と言いますが、この場合には手術でいぼを切除する場合があります。

編集部編集部

薬で根治することはできるのですか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

いいえ、痔の種類によっては薬では治らない場合もあります。痔は自然に治癒することがなく、塗り薬や座薬を使うことで症状を落ちつかせることはできたとしても、ほとんどが対症療法であり、薬で治らない場合には手術が必要になります。

編集部編集部

症状によって治療法を選択する必要があるのですね。

川﨑 俊一先生川﨑先生

はい。痔のタイプによっても治療法は異なり、痔ろうなら切除する根治術が必要になります。また、慢性的に切れ痔を繰り返すことで周囲の皮膚が荒れて膨らむことを「見張りいぼ」と言い、場合によっては手術で切除することもあります。それから、肛門が硬くなり、狭くなった場合には切除して広げることもあります。

痔をセルフケアするには? 知っておきたい基礎知識

痔をセルフケアするには? 知っておきたい基礎知識

編集部編集部

痔を改善するには、生活でどんなことに気をつければいいのでしょうか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

まずは、便秘や下痢を起こさないようにすることが重要です。「肉食に偏らない」「水分をしっかりとる」といったことに気をつけるとともに、発酵食品やオリゴ糖、食物繊維などを積極的に摂取して、腸内環境の改善を意識しましょう。

編集部編集部

そのほかには注意点がありますか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

適度な運動も大切です。また、ストレスが溜まると自律神経が乱れ、腸の働きが悪くなるので、ストレスを溜めないことや、きちんと睡眠をとることも心がけましょう。それから、「同じ姿勢を続けない」「トイレでは長時間強くいきまない」なども注意してみてください。

編集部編集部

トイレで長くいきむのはダメなのですね。

川﨑 俊一先生川﨑先生

はい。反対に、どれだけリラックスしていても「トイレに長く座っていると、痔核の発生率が高くなる」という報告もあります。中にはスマートフォンを見ながらトイレに座っている人もいるかもしれませんが、痔のリスクを高めるので気をつけましょう。

編集部編集部

どのような状態になったら、医療機関を受診した方がいいのでしょうか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

例えば、市販薬を使用しても痛みがおさまらないときや、痔を指で押してもなかなか戻らないときには、早めに医師の診察を受けましょう。また、痔ろうから膿が出てきた場合には周辺に範囲が広がることもあるので、速やかに受診することをおすすめします。

編集部編集部

そのほかに、知っておきたい危険なサインはありますか?

川﨑 俊一先生川﨑先生

出血がみられた場合、「痔のせい」と放置してしまう人もいますが、じつは痔ではなく大腸がんによる可能性もあります。そのため、出血が見られたら早めに医療機関を受診しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

川﨑 俊一先生川﨑先生

肛門の病気は、「恥ずかしいから」といって受診を渋る人も少なくありません。しかし、大腸がんが隠れている可能性もありますし、クローン病や潰瘍性大腸炎を発症している場合もあります。命に関わる疾患が潜んでいるリスクもあるため、「いつもと違う」と感じる症状がみられた場合には、早めに専門医による診察を受けましょう。

編集部まとめ

痔にはいくつかの種類があり、病期によっても治療法は異なるとのことでした。また、早期に治療を開始すれば、治療もスムーズに進むかもしれません。市販薬を試しても治らない場合や出血がみられた場合などは、早めに医師の診察を受けましょう。

医院情報

川﨑病院

川﨑病院
所在地 〒319-1234 茨城県日立市大和田町1862-2
アクセス JR常磐線「大甕駅」 車で8分
診療科目 消化器内科、消化器外科、肛門外科、肛門内科、婦人科、泌尿器科、呼吸器科、外科、内科

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