【喘息】勝手に治療を辞めるのは危険!? 「喫煙者と同じ肺レベル」になることも…医師解説
近年、喘息を発症する人の数が増加傾向にあるようです。特に大人になってから喘息を発症すると治りづらく、通院が長引く・治療が長期間にわたるなども考えられます。ですが、「喘息の治療っていつまで続くの? 治ったら治療はやめられるの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。喘息の治療はどれくらいの期間継続すべきか、症状が治っても治療は必要なのか、浦賀メディカルクリニックの柿沼先生に教えていただきました。
監修医師:
柿沼 一隆(浦賀メディカルクリニック)
目次 -INDEX-
喘息は治療して発作が起きなくなったら、吸入薬・飲み薬をやめても大丈夫?
編集部
喘息の治療は、どのようにして行うのですか?
柿沼先生
喘息の治療には「症状が起こらないように毎日行うもの」と、「症状や発作が起きた時に行うもの」の2種類があります。それぞれ、使用する薬も違います。
編集部
どのような薬を使うのですか?
柿沼先生
まず「症状が起こらないように毎日行う治療」では、慢性の気道の炎症をおさえるために吸入ステロイド薬や長時間作用性β2刺激薬およびそれらの合剤などを使います。一方、「症状や発作が起きた時に行う治療」では、気管支を広げる短時間作用性吸入β2刺激薬やステロイドの内服を使うのが一般的です。
編集部
発作が起きなくなったら、治療を中断しても良いのでしょうか?
柿沼先生
発作や症状が起きなくなっても自己判断で治療はやめないでください。水面下では気管支に炎症が起きている可能性があり、炎症が長期間続くことで気管支が硬く・太くなる「気道リモデリング」が起きてしまいます。気道リモデリングが起きると気管支の壁が厚くなり、元に戻らなくなって喘息発作が起きやすくなる、薬が効きにくくなるなどの可能性があります。そのため、発作が起きなくても医師の指示に従い、治療を継続するようにしましょう。
編集部
発作が起きなくなっても、治療を続けた方がいいのですね。
柿沼先生
はい、喘息の治療は「現状の症状をとる」と「将来のリスクを下げる」の2本柱で行うのが基本です。喘息を放置すると発作が起きやすくなり、将来的に喫煙者と同じくらいまで呼吸機能が低下してしまうリスクがあります。そのため発作が出なくても治療を継続して気道の炎症を抑え、そうしたリスクを下げます。
そもそも喘息はなぜ起こる? 呼吸器内科が喘息の仕組みと治療期間を解説
編集部
そもそもなぜ、喘息が起きるのですか?
柿沼先生
アレルギーなどが原因となって気道で慢性的に炎症が起こると、わずかな刺激でも気道が過敏に反応してしまいます。その状態が喘息です。
編集部
喘息になると、どのような症状が出るのですか?
柿沼先生
咳や痰が出たり、呼吸困難を伴う喘息発作が起きたり、気道の狭窄などが起こったりします。具体的には「主に夜間や早朝に息苦しくなる、咳が止まらなくなる」「呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒューという音がする(喘鳴)」「運動したり冷気に当たったりすると息苦しくなり、咳が出る」といった症状が見られます。
編集部
喘息の原因はアレルギー以外にありますか?
柿沼先生
アレルギーのほかには喫煙、呼吸器感染症など環境的素因、遺伝子素因、アトピー素因など個体因子も関係しています。そのほか、出生時の体重や肥満も喘息の発症に関係しており、BMIが高いほど喘息を発症するリスクが高いとされています。
編集部
いろいろなことが原因になるのですね。
柿沼先生
はい。それから子どもの喘息の場合には、親の喫煙も大きく関わってきます。また小さい時にRSウイルスに感染すると、喘息の発症リスクが高まります。
編集部
喘息の治療はどのように行うのですか?
柿沼先生
喘息の治療は症状の重症度によってステップを調整します。つまり、喘息症状の悪化やコントロールが難しくなってきたら治療の内容や強度をステップアップし、反対に「発作が起きない」「症状がない」などコントロールできるようになったら、少しずつ治療をステップダウンしていきます。
編集部
どれくらいの期間を見込めばいいのですか?
柿沼先生
基本的に、喘息は慢性疾患なので生涯を通じて付き合っていくものと考えた方が良いでしょう。その上で、症状の程度に応じて治療の内容をアップ・ダウンしていきます。例えば喘息の症状が安定している場合、少なくとも3カ月は様子を見てステップダウンすることが大切です。
喘息・気管支喘息になる原因は風邪やストレスも? 喘息治療後も気をつけたい発作が起こるきっかけなど
編集部
喘息の症状が出ず、治療を一旦中断している時に気をつけなければならないことは何でしょうか?
柿沼先生
ストレスの蓄積や体重増加などによって喘息が悪化し、再び症状が出ることがあります。十分な睡眠をとり、ストレスを溜めない生活を心がけるとともに、体重維持にも気をつけましょう。
編集部
ほかに気をつけるべきことはありますか?
柿沼先生
喘息がある人は喫煙が厳禁であり、受動喫煙も自分がタバコを吸うのと同じくらいの害があるので気をつけましょう。そのほか、風邪、インフルエンザ、肺炎などの呼吸器感染症は、喘息を悪化させる誘因になるので注意してください。
編集部
受動喫煙にも注意が必要なのですね。
柿沼先生
はい。たとえ自宅ではタバコを吸っていなくても洋服にタバコの煙や成分が付き、それが原因で子どもが喘息を発症することがあるのです。喘息治療のため、確実に禁煙するようにしましょう。
編集部
季節・気候などで気を付けるべきこともありますか?
柿沼先生
気圧や気温の変化が激しい時期や花粉の時期、黄砂が飛ぶ時期は、喘息の症状が悪化することがあります。喘息は変動性が高い気道疾患であることを理解し、そうした時期は気を引き締めて治療に臨んでほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
柿沼先生
以前に比べて減少しているものの、現在でも喘息で亡くなる人がいます。人によっては放置すると将来、肺の機能が喫煙者と同レベルにまで低下して、健康を害するリスクがあります。そうした危険性があることを理解したうえで、しっかり治療を継続することが必要です。症状が出ないからといって油断することなく、慢性疾患であることを理解し、継続して治療に取り組んでください。不安なことがあれば、かかりつけ医まで相談しましょう。
編集部まとめ
高血圧や糖尿病の患者が生涯にわたって生活習慣に気をつけて投薬を続けるのと同じように、喘息も慢性疾患であるため長期的な視点で治療に取り組むことが必要です。自己判断で治療を中断するとかえって悪化することもあるようですね。医師の指示に従い、治療を継続するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒239-0813 神奈川県横須賀市鴨居2-6-1 |
アクセス | 京急本線「浦賀」駅より徒歩16分 |
診療科目 | 内科、呼吸器内科、アレルギー科 |