誤った「喘息(ぜんそく)」診断されているかも? 診断に必要な検査を医師が解説
激しい咳が続いたり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。その場合、もしかしたら喘息(ぜんそく)かもしれません。大人になって初めて喘息と診断される場合、どのような診断基準があるのでしょうか。梅屋敷さわもとクリニック院長の澤本先生にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
澤本 修一(梅屋敷さわもとクリニック)
目次 -INDEX-
呼吸が苦しくなる喘息(ぜんそく)とはどんな病気? 医師が原因や症状・発作についても説明
編集部
喘息とはなんですか?
澤本先生
喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなっている状態のことを言います。そのため、呼吸が苦しくなったり、呼吸をするときに「ゼイゼイ、ヒューヒュー」とする呼吸音が聞かれたりします。このような気道狭窄音を喘鳴(ぜいめい)と言います。
編集部
なぜ、炎症が起きるのですか?
澤本先生
主にアレルギーが原因となって発症します。アレルゲンとなるものはさまざまあり、ダニ、ハウスダスト、ペットの毛などが代表的です。そのほか、喫煙、ストレス、過労、天候なども原因になります。
編集部
どのような症状が起きるのですか?
澤本先生
代表的な症状は、激しい咳、呼吸をするときの喘鳴、痰、労作時の息切れなどです。激しい咳や喘鳴が続いて呼吸困難に陥ったり、胸痛が生じたりすることもあります。
編集部
どんなときに発作が起きるのですか?
澤本先生
一般に、夜間や早朝に起こりやすくなります。なぜなら、この時間帯は副交感神経が過剰に優位になって気道の筋肉が収縮し、気道が狭くなるからです。また、季節の変わり目に発作が出ることも多く、特に梅雨の時期や台風の時期は気圧や湿度の変化により、発作が起きやすいとされています。
喘息の検査は病院で何をするの? 問診・呼吸機能検査・血液検査以外に検査方法は?
編集部
喘息が疑われるときには、病院でどんな検査をするのですか?
澤本先生
まずは問診で症状や既往歴、家族歴などを詳しくお聞きします。症状がいつ頃から見られるのか、どんなときに、どのくらいの頻度で起きるのか、また子どもの頃に喘息があったか、家族で喘息の人がいるかなどもお聞きします。それから、ペットを飼っているか、自分または家族に喫煙歴はあるかなども確認します。
編集部
そのあとはどのような検査をするのですか?
澤本先生
聴診器を用いて喘鳴の有無を確認します。また、胸部レントゲン検査や呼吸機能検査、気道の抵抗を調べるモストグラフを行うほか、気道で炎症が起きているか調べるために喀痰検査や呼気NO検査などを行います。
編集部
ほかにはありますか?
澤本先生
アトピーの素因があるかを確認するため、血液検査も行います。特異的IgE抗体の存在を調べることで何がアレルゲンとなっているかがわかります。
編集部
さまざまな検査で喘息と診断されるのですね。
澤本先生
しかし、喘息のような症状を引き起こす疾患は非常に多く、患者さんによって症状の表れ方もさまざまです。また、なかには典型的な症状が見られない患者さんもいるため、正しく診断するのは非常に難しいとされています。
編集部
なぜ、正確に診断するのが難しいのですか?
澤本先生
最も大きな理由が、正確に検査をできる施設が限られているということです。喘息かどうかを鑑別するにはさまざまな検査を行う必要があり、総合的に診断をつける必要があります。しかしそれらの医療機器をすべて備えている医療機関はごくわずか。「喘息の患者が専門医を受診している割合は、約1割」とも言われています。そのため、喘息ではないのに喘息の治療をされていたり、あるいは、喘息なのに喘息の治療をされていなかったりする人が非常に多いのです。
病院で喘息かどうかを調べる検査費用はいくら? 診断後の治療方法・流れについても医師が解説
編集部
喘息かどうか、調べるための検査はどれくらいの費用がかかるのですか?
澤本先生
喘息の疑いがある場合、どの検査を受けるかによっても金額が変わりますが、3割負担の場合は、胸部レントゲン検査が約900円、アレルギー検査が約5000円です。
編集部
喘息と診断された場合には、どのような治療を行うのですか?
澤本先生
基本的に吸入ステロイドを基本とした薬物療法を開始します。合わせて生活を見直すことも必要。特に、風邪やインフルエンザなどの感染症や、喫煙、室内のダニやカビは喘息を悪化させる要因になります。こうしたことに気をつけ、悪化のリスクを取り除くことが大切です。
編集部
喘息は治すことができるのですか?
澤本先生
子どもの喘息は完治することもありますが、一般に、大人の喘息は治すのが難しいとされています。しかし、生活を見直したり薬物療法を適切に継続したりすることで、発作が出ないようにコントロールすることは可能です。症状が落ち着いたからといって自己判断で薬物療法を中断せず、必ず医師の指示に従うようにしましょう。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
澤本先生
咳が長引く場合には、ぜひ専門医を受診しましょう。ただし喘息を正しく診断するのは非常に難しいため、専門医を受診することを強くお勧めします。インターネットで検索したり、医療機関のウェブサイトを確認したりして、喘息やアレルギーの専門医が診察してくれるところを探しましょう。喘息と診断されたけれど、実は、呼吸が苦しいのは喘息が原因ではなかったということも少なくありません。また、咳が続くので受診したら風邪と診断されたけれど、いつまで経っても咳が良くならず、あちこちたらい回しになった結果、最終的に喘息と診断された、という人もいます。早く正確な診断がつけば、苦しい思いを長引かせることもありません。ぜひ、早期のうちに専門医を受診しましょう。
編集部まとめ
喘息の発作が起きると日常生活もままならなくなり、QOLが著しく低下してしまいます。しかし、喘息は治療薬で症状をコントロールすることが可能です。喘息が疑われる場合には、必ず専門医を受診すること。喘息やアレルギーを専門で診察している医師を訪ね、ワンストップで診断をつけて、治療を始められるようにしましょう。
医院情報
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アクセス | 京急線「梅屋敷」駅より徒歩1分 京急バス(蒲67)「梅屋敷」より徒歩2分 |
診療科目 | 内科・呼吸器内科・アレルギー科 |