喘息発作への正しい対処を医師が解説! 重症度別の適切な処置とは
子どもだけでなく、大人でも突然発症することのある喘息。いつ発作が起こるかわからないという怖さがあるうえ、ひどい場合は救急車を呼ばなければならないほど重症化することもあります。一体、どのような状態なら救急受診をした方が良いのでしょうか。みらいメディカルクリニック茗荷谷の松本先生に目安を教えてもらいました。
監修医師:
松本 昌和(みらいメディカルクリニックグループ)
喘息はなぜ起きる?
編集部
そもそも喘息とはなんですか?
松本先生
喘息とは、気道に炎症を繰り返すことで、さまざまな刺激に対して気道が敏感になる状態のことです。発作的に気道が狭くなり、呼吸困難に陥ったり、呼吸をするときにヒューヒュー、ゼイゼイといった喘鳴(ぜんめい)が生じたりします。
編集部
なぜ、喘息が起きるのですか?
松本先生
原因はさまざまあります。たとえば、ダニやハウスダスト、ペットの毛などがアレルギーを引き起こし、それが原因となって炎症が起こる場合もあります。アレルギー以外では、風邪、過労によるストレス、タバコ、大気汚染、気温や気圧の変化などが刺激となって発作につながることもあります。
編集部
「炎症を繰り返して気道が細くなる」とはどういうことですか?
松本先生
気道は空気の通り道で、主に気管支を意味します。アレルギーなどが原因となって気管支が発作的に収縮し、喘息の発作を起こします。その発作が収まれば、気管支の収縮も元に戻り、呼吸は楽になります。しかし、気道の慢性的な炎症が続いていると、少しの刺激でも敏感に反応するようになります。
編集部
炎症がずっと続くと、どうなるのですか?
松本先生
慢性炎症が続き、発作を繰り返すことで気管支粘膜がむくみ、気道壁は厚く硬くなります。これを気道のリモデリングといい、喘息の難治化につながります。
編集部
喘息というと、子どもがかかる病気というイメージがあります。
松本先生
確かに、概ね15歳までに発症する小児喘息が多いですが、一方、大人になって発症するケースも少なくありません。小児喘息が治りきらず、大人になってから再発するタイプと、中高年以降、新たに喘息を発症するタイプがあります。特に中高年以降に発症した喘息の場合、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、ほかの疾患が合併していることもあり、治療しづらく、治りにくい場合があります。
喘息の発作が起きたら、救急で受診すべき?
編集部
喘息はどのように治療するのですか?
松本先生
一般的に、吸入ステロイドを主体とした薬物療法を行います。喘息の原因となっている気道の炎症を抑え、発作を予防するために用いられるのが「長期管理薬(コントローラー)」です。病状によって複数の薬を組み合わせて治療します。
編集部
長期管理薬は発作を予防するために用いられるのですね。では、発作が起きたらどうするのですか?
松本先生
発作が起きた時に使うのが「発作治療薬(リリーバー)」です。これは気管支を広げる働きがあり、すぐに効果が現れる薬です。
編集部
それらの薬をずっと使い続けなければならないのですか?
松本先生
一般的に喘息は、短期間治療して完全に治ってしまうという病気ではないので、発作が起こらないようにしっかり管理することが大切です。そのため、薬物療法も長期にわたって行う必要があります。
編集部
症状が出なくても薬を使う必要があるのですか?
松本先生
いいえ、コントロール良好の状態を3〜6か月程度保つことができれば、薬を減量することができますし、場合によっては投薬を中止できることもあります。ただ、症状が出なくても、発作の予防のために薬の継続が必要な場合が多いですね。
編集部
喘息の発作が起きたらどのように対処すれば良いのでしょうか?
松本先生
喘息の発作は重症度によって、小発作、中発作、大発作の3段階に分けられます。程度に応じて、適切な処置を行う必要があります。
編集部
どのような処置を行えば良いのですか?
松本先生
まず小発作とは、「軽い喘鳴はあるけれど、安静にしていれば呼吸困難はほとんどなく、横になることができる」という状態のこと。この場合は、気管支拡張薬を使用して、安静にして発作が治るのを待ちましょう。もし、悪化するようなら再度、気管支拡張薬を使用します。それでも改善しなければ、すみやかに救急外来を受診しましょう。
編集部
中発作の場合はどうすれば良いのですか?
松本先生
中発作とは、喘鳴が明らかで、安静にしていても軽い呼吸困難があり、動くと苦しく、会話もやや困難な状態のことをいいます。この場合も、気管支拡張薬を使用して少し様子を見ます。症状がおさまらなければ、20〜30分後に再び気管支拡張薬を使用します。それでも改善しない場合は、救急外来を受診しましょう。
救急受診のタイミングは「大発作」
編集部
最後に、大発作の場合はどうすれば良いのでしょうか?
松本先生
大発作とは、安静にしていても苦しくて動くことができない状態。「起坐呼吸」(きざこきゅう)といって、上半身を起こした姿勢だと、まだ呼吸をすることができますが、横になるとたちまち苦しさが増し、呼吸困難が強くなってしまいます。会話もとぎれとぎれにしかできません。この場合は、気管支拡張薬を使用しながら、すぐに救急外来を受診し、病院で治療を受けてください。救急外来を受診することが難しい場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
編集部
大発作の場合はすぐに病院で治療を受けたほうが良いのですね。
松本先生
そうですね。吸入ステロイドによる管理が行われるようになって、以前に比べたらだいぶ人数は減っていますが、現在でも喘息が原因で多くの人が亡くなっています。喘息の発作は突然に起こりますから、喘息と診断されたら、平時から喘息の管理をしっかり行い、いざという時の対処法をしっかり確認しておくことが必要です。
編集部
大発作以外にも、救急受診したほうが良いときはありますか?
松本先生
たとえば、発作治療薬を使用しても効果が十分に得られない場合や、苦しくて眠れない場合、いつもの喘息発作以外の症状がある場合などは、すぐに医療機関を受診したほうが良いでしょう。
編集部
ほかにも、喘息と診断された人が平時から気をつけたほうが良いことはありますか?
松本先生
自分が使用している薬について、その使い方、回数、非常時の使用法などを確認しておくことが必要です。また、かかりつけ医でなくとも、救急で診察してくれる病院の連絡先を控えておくと良いでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
松本先生
喘息と診断されたあと、症状がおさまってきたからといって、自己判断で薬の使用を中断してしまう人がいますが、薬をやめるタイミングは必ず医師の指示に従うようにしましょう。発作が出ていないとしても、まだ、炎症が続いている場合もあります。また、発作が出やすいのは、一般的に春や秋の季節の変わり目。それから、寒暖差が激しい時期や梅雨も気をつけたい季節です。湿度や温度によって息苦しさを感じることもありますから、喘息と診断されたことがある人は、そのような時期には普段以上に体調管理に気をつけ、異変を感じたらかかりつけ医を受診しましょう。
編集部まとめ
強い発作が起きたとき、ひとりで対処するのは困難な場合もあります。会社や学校など、いつも身近にいる人に喘息が持病であり、発作を起こす可能性があることを伝えておくと、いざというときに安心かもしれません。
医院情報
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診療科目 | 内科、アレルギー科、小児科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、腎臓内科 |