【闘病】更年期症状と思ったら「関節リウマチ・シェーグレン症候群」だった
更年期症状と思ったら、関節リウマチとシェーグレン症候群と診断されたと語るまひろさん(仮称)。この疾患は更年期障害の症状と似ている部分があり、診断が確定するまでに時間を要することがあるそうです。具体的にどんな症状があり、どういう経緯で診断・治療が進んでいくのでしょうか? 今回は、まひろさん(仮称)に経験を話していただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年10月取材。
体験者プロフィール:
まひろ(仮称)
1967年生まれ、石川県在住。60代の夫と2人暮らし。1989年から正看護師として働く。個人クリニック勤務の2012年10月、関節リウマチ・シェーグレン症候群の診断を受ける。定期通院・内服治療を継続しながらフルタイムで働くも、徐々に症状に関連してQOLが低下。ワークライフバランスを考え、2021年に医療事務・医師事務作業補助の民間資格を取得し、医療関連の事務職に転職した。その後、休職や勤務先を変え、パートタイム勤務、契約職員として働きながら体調管理を行う。2022年秋から半年間看護師として復帰したが契約期間終了。夫と相談して働き方を見直し就活した結果、2023年8月から健診・人間ドック事業施設にて雑務を担う職種として週20時間のパートタイム勤務中である。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
更年期障害と思っていたら、病気が発覚
編集部
まずはじめに、病気が判明した経緯について教えてください。
まひろさん
私は産科・婦人科の個人クリニックに勤務しており、2012年10月に職員健診で採血検査がありました。当時、週末になると左親指の関節が赤く腫れて痛みがあったので、自主的にRF(リウマチ因子)の項目検査追加をお願いした結果、陽性でした。そのため、リウマチ科のある最寄りの個人クリニックを受診して再度採血した結果、関節リウマチとシェーグレン症候群の抗体が陽性と言われ、大学附属病院のリウマチ膠原病内科を紹介されました。そこで詳しく調べ、正式に診断されたのが2012年12月です。
編集部
自覚症状などはあったのでしょうか?
まひろさん
週末になると特に左親指の関節が赤く腫れて痛みがあり、数日で治まるといった状態を繰り返していました。母が数年前に手首が腫れて痛いと訴え、リウマチの可能性があるかもしれないと言っていたことを思い出してなんとなく気になったのと、血液検査が診断の目安になることも知っていたので検査を受けられてよかったです。また、発覚する数カ月前からは四肢の冷えや疲れやすさ、頭痛や足が重たくだるくてむくみやすいなどの症状が目立つようになっていたのですが、更年期症状なのかなと思っていました。更年期の症状とリウマチやシェーグレン症候群の多彩な症状は非常に似ています。今思えば、過去に眼科でドライアイを指摘される、口が乾きやすかいなどの症状があったので、もっと前から発症していたのかもしれません。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
まひろさん
「投薬治療をメインに進めます」と説明を受けました。比較的軽症なので弱めの薬から始めると言われた記憶があります。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
まひろさん
関節リウマチについては、やっぱりという気持ちが強かったです。これまで関節リウマチの症状が重い患者さんと接していたのである程度病気の知識や理解はできましたし、関節破壊や炎症はないと言われて安心しました。シェーグレン症候群については、初めて聞く病名だったのでネットで調べました。私の場合は軽症ということで、漠然とした不安はありつつも落ち着いていました。しかし、当時の職場は人手不足なこともあり、なかなか休みづらいなど治療と仕事の両立に不安がありました。加えて年齢的にも更年期に差し掛かり、ホットフラッシュや、肩こり、冷え性、頭痛、めまいも起こるようになりました。プライベートでは、当時離婚直後で一人暮らしになり、相談できる人がなかなかいなくて将来への経済的不安もありました。
夫の支えが闘病と向き合う力になっている
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
まひろさん
病気と更年期の症状に加えて職場環境もストレスになり、心身のバランスが不安定になりました。しかし、仕事ができないわけではないので簡単に休めず、周囲の理解も得られずつらい状況でした。しばらくして離職して、その後転職をいくつか経験します。定期通院しながら、体調管理に気を配るといった経過をたどり、2017年現在の夫と再婚しました。
編集部
そうだったのですね。辛い状況がうかがえます。
まひろさん
その後、夫の理解や支援のもと家事と仕事の両立を目指して転職しました。ですが、2019年4月ごろ両下肢がしびれる症状が出始め、シェーグレン症候群の合併症の疑いで大学附属病院の脳神経内科に入院・精密検査をしました。検査結果では、明らかな合併症はなく「身体表現性障害」と言われてショックを受けたことを覚えています。当時の職場も1カ月近く勤務できなかったため解雇されました。その後、夫と相談しながら医療事務系資格取得・転職などを経て、パート勤務をしています。下肢のしびれは以前より増強し、正座した後のしびれのような感覚と焼けるような痛みが常にあります。手指もしびれ・こわばりや感覚鈍麻を感じるため採血などの業務は自信がなくなり、体力が必要な業務は避けています。夫の趣味の登山にもなかなか同行できません。
編集部
ほかに気になる症状はありますか?
まひろさん
朝起床時に目が開かないくらいドライアイが酷く、点眼は必須です。左目には2019年に精査入院の際に涙点プラグをしていただきました。コンタクトレンズを使用しますがシリコンタイプで高額なものでないと長時間装着できません。眼鏡で過ごしても、しばしば角膜の炎症(痛み)や充血がみられるためステロイドや抗生剤の点眼でケアしています。
編集部
精神的にも経済的にも負担が大きいのではないでしょうか?
まひろさん
2019年8月に特定医療費支給認定(指定難病)の申請をして、医療費自己負担が軽くなるように手続きをしました。また、通院は1~2カ月に一度ペースで、最初に受診した個人クリニックへ通院しています。指定難病更新の手続きをするためにはある程度の症状を証明する診断書が必要です。そこで毎年、大学附属病院で検査して診断書をもらっているのですが、検査は自費負担です。普段の通院や薬代は2割負担で、収入によって上限額が決まっているため、経済的に安心です。万が一症状の悪化や合併症で何かあって入院となっても、高額医療費免除の手続きできるので、毎年更新できればと思っています。
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
まひろさん
何より夫の理解と支えです。家事を協力してもらっています。一人暮らしは生活面も精神面も不安定だったので再婚して本当に良かったです。2人の間に子どもはいませんので健康面に気を付けて趣味を楽しみながら老後を仲良く暮らしていきたいです。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
まひろさん
「若いころに人生設計を」と伝えたいですね。若いうちに生命保険などを検討してほしいです(膠原病で審査が通らないことを経験しました)。そして、関節リウマチやシェーグレン症候群は完治する病気ではないけど、急激に悪化する可能性は少ないからうまく付き合ってと伝えたいです。そして、身近に相談できる人を探して、とも伝えたいですね。
「怠けているわけではない」ことを知ってほしい
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
まひろさん
シェーグレンの代表的な症状はもちろんのこと、耳下腺部分の痛みやしこりなどの症状も出現しています。発症当初からだいぶ薬の量が増え、免疫抑制剤に加えステロイドの少量内服と神経痛・神経障害を軽減する内服薬も服用しています。また、仕事の関係で眼科へ頻繁に通院できないため、点眼薬は最初から通っている個人クリニックで処方していただいています。ドライマウスについては薬治療もできますが、私は水分補給をこまめにして様子をみています。そして、定期的な採血で炎症の有無や合併症が出てないか、肝機能や甲状腺ホルモンの数値なども留意しています。
編集部
婦人科へも通われているそうですね。
まひろさん
少しでも症状改善や体調管理につながるならと、発症後から更年期障害についても婦人科クリニックでHRT(ホルモン補充療法)通院をしています。ステロイドと更年期で骨粗しょう症リスクが上がっているため、骨粗しょう症内服治療もしています。ここ2年ほど、手首の痛みや腫れ、股関節痛が頻回に出て数日でピークは過ぎますがADL(日常生活動作)は辛いです。手首痛は仕事や家事に影響を及ぼし、階段昇り降りや座る動作、車の運転など支障があります。最近MRI検査やレントゲン検査を受けましたが明らかな異常はなく、様子を見るしかありません。シェーグレンの患者さんは、関節痛が突然いろんな所で起こり、数日で軽快することが多いそうです。関節の炎症所見がなければ様子見ですが、ほかにも悪性リンパ腫や末梢神経障害などの腺外病変を発症する可能性もあり、定期通院・検査は必須です。
編集部
まひろさんの病気を意識していない人に一言お願いします。
まひろさん
わかりにくい症状で元気そうに見えるかもしれませんが、関節痛、ドライアイ、しびれなど地味に辛い毎日です。ドライマウスでむし歯になるリスクもありますし、食事も時間がかかるし飲み物もかかせません。外出時、水筒やペットボトルは必ず持参しなければならず、QOLが下がります。シェーグレン症候群の人は特に得体の知れない倦怠感が強い人も多いそうです。さぼっている、怠けていると思わないでほしいと思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
まひろさん
自分自身が医療従事者なので、今回患者さん目線を知ることができました。やっぱり、個人によってさまざまな症状がありますし、共感と理解が大切だと感じました。また、「身体表現性障害」や「不定愁訴」ではなく、具体的な病名や原因を追究できれば患者さんも安心できるということを改めて知りました。そして、患者さんの悩みなどは聞いてあげるのも治療のモチベーションにつながることを学びました。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
まひろさん
40~50代の女性でシェーグレン症候群を発症することが多いといわれています。疲れやすさや頭痛、むくみなどの症状から更年期障害を疑い、婦人科や整形外科的なアプローチから内科、心療内科まで受診して、最終的に確定診断されるまで遠回りしてしまう方もいるかもしれません。ぜひ、この病気に理解がある方が増えると嬉しいです。自分ももしかしたら?と思うなら、まずはリウマチ膠原病内科などでの血液検査をお勧めします。膠原病は指定難病手続きができることが多いので主治医と相談して治療費に心配がないようにしてください。
編集部まとめ
まひろさんは、関節痛やドライアイ、ドライマウス、倦怠感、四肢のしびれなどさまざまな症状に悩まされ、看護師として働くことに支障を来たすようになったそうです。症状が更年期障害と重なる部分もあり、心身とも大変辛かったとのことです。もし似たような症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。