【闘病】“胃がん”で胃の2/3を切除してから10年経過 「早く元に戻りたかった」
今回お話を聞いたのは、30代で胃がんを経験したがんサバイバーの渡邊さん(仮称)です。渡邊さんは2012年に受けた人間ドックで胃がんの疑いとなり、腹腔鏡手術を受けて10年以上経った現在も元気に過ごされています。腹腔鏡手術で胃の3分の2を切除した経験から、がんにおける手術の決断、自分にとって最良の選択は何かを語っていただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年10月取材。
体験者プロフィール:
渡邊さん(仮称)
家族と4人で暮らす40代女性。2012年12月に人間ドックを受けたところ、精密検査の案内が届く。受診した大学病院で再検査した結果、「ステージ1の胃がん」が発覚。胃の全摘術と腹腔鏡手術で悩んだ末、腹腔鏡手術により胃の3分の2を切除。胃がん発覚から10年が経ち、年に1度の胃カメラ検査で再発の有無を注意深く見ている。
記事監修医師:
梅村 将成(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
ショックは受けたが、早く元の生活に戻りたいと手術を決意
編集部
はじめに、渡邊さんが胃がんと診断された経緯を教えてください。
渡邊さん
2012年12月頃にたまたま受けた人間ドックの結果に、精密検査を受けるよう書かれていました。不安を感じながら大学病院を受診し、再検査の結果「胃がんのステージ1」と診断を受けました。
編集部
ステージ1はどのくらいの進行度なのでしょうか?
渡邊さん
胃がんのステージ1は胃の表面の粘膜層や粘膜下層、またはその下の固有筋層までのがんです。胃がんの中ではかなり早期のもので、自覚症状はほとんどありません。私の場合も運よく人間ドックで見つかりましたが、自覚症状はありませんでした。
編集部
医師からの告知や具体的な治療についてどのように説明を受けましたか?
渡邊さん
医師からは「胃を2/3切除する手術」か「がんだけを切除する手術か」という2つの選択肢を提案されました。ただ、もしもほかの臓器やリンパ節に転移していた場合、がん部分だけを取り除く方法に加えて抗がん剤治療も必要と言われました。
編集部
最終的には胃切除を選ばれたのですね。
渡邊さん
2013年2月に腹腔鏡下胃切除術を受けて、胃の3分の2を切除しました。当時はとにかく早く手術して、今まで通りの生活に戻りたいと考えていました。胃を切除することが、日常生活に大きな影響を与えることは手術前には全く想像できませんでした。この記事を読んでいる読者の皆さんには手術前に医師から十分な説明を聞いて、家族や周りの方としっかり相談し、納得のいく選択をしていただきたいです。
編集部
告知を受けた時の心境について教えてください。
渡邊さん
最初に再度精密検査を受けることになった時は、「どうか間違いで合ってほしい」と思い、検査結果を聞くまで震えが止まりませんでした。告知を受けてからは、とにかく早く元の生活に戻ることを考えていて、落ち込んだり、泣いたりすることもなく淡々としていたと思います。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
渡邊さん
やはり家族と子どもたちの存在が大きかったです。「早く元気になって、いつも通りのお母さんにならないと」という思いで治療を乗り越えられたと思います。
編集部
術後の経過はどうでしたか?
渡邊さん
術後半年間は毎月通院を行い、半年以降は3カ月に1度の通院が続きました。また、経過観察のために半年に1度は胃カメラと腹部CTもしました。5年間経過観察を続け、再発がないということで経過観察は終了しています。現在は1年に1度胃カメラを受け、問題がないか診てもらっています。
治療に取り組む前に、医師の説明はよく聞いてほしい理由
編集部
術後は体調の変化などを感じることはありましたか?
渡邊さん
幸いにも、手術の前までの生活とそこまで変わりありませんでした。子どもたちに心配をかけたくないという思いもあり、普段通りの生活に戻したというほうが近いかもしれません。
編集部
現在の生活の様子も教えていただけますか?
渡邊さん
今は至って健康です。お酒も食べ物も美味しいと感じています。やりたいことには何でも挑戦して、楽しく生活できていますが、唯一の悩みは「もう少し食べられたらいいな」と思います。
編集部
胃の3分の2を切除するというのは大きな変化だと思います。ほかにも食事に関して大変なことはありますか?
渡邊さん
体は元気なのですが、やはり胃を切除している影響もあって食べられる量、体に吸収される量に限界があると感じます。そのせいか体重が増えません。ただし、胃がんという大きな病気の治療の経過が良いのは幸いなことなので、その代償だというふうにも考えています。
編集部
渡邊さんが普段から取り組んでいることは何がありますか?
渡邊さん
今取り組んでいることとしては、無理のない範囲で仕事をしようと就職活動を始めました。ほかにも、体力作りのために約3カ月前から月2回ほどバドミントンを始めています。また、体調によって食べられないこともあるので、食べたいと思った時に。思う存分に食べるようにすることも大事にしています。
どんな状況でも前向きに進むことが大切
編集部
渡邊さんのがんの経験を通して、治療にあたる医療従事者にお伝えしたいことはありますか?
渡邊さん
医師にとって私のようながん患者を診る機会は、きっと数えきれないほどたくさんあると思います。ただ、私もそうだったように患者にとっては初めてのがん治療で、不安なことだらけです。わからないことだらけで不安な患者の話を聞いていただけると、ありがたいと思います。
編集部
渡邊さんの経験を通して、がんやそのほかの病気について読者にお伝えしたいことを教えてください。
渡邊さん
普段から周囲を見ていると、毎日忙しくてご自身に気を遣っていない方が多い気がします。体のどこかに何か少しでも異変を感じたら、すぐに病院に行って診察を受けていただきたいです。そして病気になったという方は、治療の時にしっかり医師の説明を聞いた上で治療に取り組んでほしいと思います。
編集部
最後に記事の読者の方に向けてメッセージをお願いいたします。
渡邊さん
突然の病気に驚き、不安に思う人もいると思います。ですが、どんな状況でもあまり悲観せず、前向きに進むことが大事だと私自身の経験から学びました。気持ちが前向きであれば、必ず良い方向に進むと思います。
編集部まとめ
胃がんはがんの罹患者数の中でも、日本人男性で2位、女性で4位と上位にある疾患です。2020年に発表された75歳未満の年齢調整死亡率では、日本は男女ともに胃がんでの死亡率が世界1位になっています。がんによる死亡率は年々減少傾向にあるものの、決して油断してはいけない疾患の1つと言えるでしょう。胃がんは人間ドックで比較的見つかりやすい疾患ですから、定期的な検査と受診が大切です。渡邊さんの体験談から学び、定期検診を受けることで胃がんを含むすべてのがんの早期発見、早期治療を心掛けましょう。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。