【闘病】余命宣告も「まだ死ねない」 スキルス性胃がんと闘う母親がそう語るワケ
闘病者の佐藤さんは、胃がんリスク検査の結果は問題なかったものの、胃カメラによってスキルス性胃がんが発覚しました。胃がんリスク検査ではわからないタイプだったため、異常なしという結果が出たのだそうです。そんな佐藤さんに、スキルス性胃がんが発覚するまでの経緯や治療内容、そしてご家族や友人への想いなど話してもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年3月取材。/p>
体験者プロフィール:
佐藤 祐子
1976年生まれ、大分県大分市在住。夫、6年生の娘との3人暮らし。診断時の職業は広告代理店の営業と前職のラグジュアリーブランドの販売手伝い。2020年3月に4型(スキルス性)胃がんが発覚し、翌月手術、8クールの術後補助化学療法を受け経過観察に入るも、2022年11月に腹膜への再発転移(腹膜播種)。現在はオプジーボと抗がん剤療法(capeox療法)を続けながら、楽しく過ごしてがんを撃退しつつ、同時にいざという時のため、終活中。
記事監修医師:
梅村 将成(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
胃カメラを先送りにしたのちの胃がん診断
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
佐藤さん
違和感を自覚しながらも、近所の病院での診察や健康診断の結果は悪くなかったので胃カメラを先延ばしにしていたところ、初めて味わう激痛が起きました。2020年3月、さすがにいつもと違うと思って受けた胃カメラで胃潰瘍からがん細胞が見つかりました。
編集部
どのような自覚症状があったのでしょうか?
佐藤さん
1年間くらい、みぞおちの左側に時折拳をぐりぐりと押しつけられているような痛みがありました。2019年6月に、近所の内科でCTを撮ったところ、「お酒の飲みすぎが原因なのではないか」と言われました。お酒を控えたら少し改善されましたが、やはり痛みは続き、同年10月に別の消化器内科を受診しました。その日は院長先生が不在だったので代理の医師の診察を受けたところ、胃カメラを勧められましたが、翌月に健康診断を控えていたので予約はせずに帰宅しました。
編集部
その後、健康診断を受けられていかがでしたか?
佐藤さん
11月健康診断にて胃がんリスク検査を受けましたが、こちらでも異常なしの結果が出ました(後に私は胃がんリスク検査に反応しないタイプであるらしいことが判明)。しかし、痛みは引かず、仕事の忙しさから胃カメラを先送りにしていました。すると、食後食べたものが込み上げてくるようになり、左腹部に身動きが取れないほどの激痛、嘔吐もあり、胃カメラの予約をしたという流れです。
編集部
スキルス性胃がんはどのように告知されたのでしょうか?
佐藤さん
胃カメラの結果、大きい胃潰瘍があったため生体組織採取検査に出し、結果を一週間後に聞く予定が、数日後に電話ですぐに病院へ来るように言われました。悪性の腫瘍が見つかり、大きな病院を紹介してもらうことになりました。「今なら切ってしまえば生きられるからね」と送り出されました。紹介先の病院での検査で、3型胃がんと診断されたものの、その後の胃カメラで胃潰瘍の奥にさらにスキルス性の4型胃がんがあったことが発覚し、家族を呼んでの説明がありました。
編集部
医師から治療はどのように進めていくと説明されましたか?
佐藤さん
まずは腹腔鏡で腹膜を確認し、腹膜播種(がんの腹膜への転移)がないかを確認するとのことでした。その後については、3つのパターンの説明がありました。まず「播種なし(1)」だった場合、予想ステージ3A。開腹して胃と腫れたリンパ切除で手術の所要時間3~4時間とのことでした。5年生存率50%。「播種なし・すい臓浸潤あり(2)」の場合、予想ステージ3Bで開腹して胃とリンパとすい臓、脾臓を摘出。所要時間5~6時間ほど。5年生存率30%。「播種あり・手術不可(3)」なら予想ステージ4。5年生存率10%以下とのことでした。また、(1・2)の場合は、術後補助化学療法8クールとの説明がありました。
編集部
結果的にどちらのパターンだったのでしょうか?
佐藤さん
「播種なし・すい臓浸潤あり(2)」のパターンでした。ただし、すい臓への浸潤はわずかだったようで、「すい臓は摘出せず、皮だけ剥がした」そうです。
編集部
セカンドオピニオンは受けられたのでしょうか?
佐藤さん
受けませんでした。友人からもセカンドオピニオンを紹介してくれるとの話はありましたが、コロナ禍に突入したばかりの状況で東京に行くことや予約がずいぶん先になること、手術の日程も通常より遅くなることがリスクとなりそうでしたし、それまでに主治医と話して納得がいっていたので、地元の病院と主治医に委ねました。
発症後の生活と心の支え
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
佐藤さん
自覚症状もあり、電話で呼び出されては看護師さんに気を遣われていたので、ある程度覚悟はできていました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
佐藤さん
※ダンピング…これまで胃の中を通っていた食べ物が直接腸に流れ込むために、めまい、動機、発汗、頭痛、手指の震えなどの不快な症状が起こること
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
佐藤さん
まずは家族です。主人が家事・育児ができるタイプなので、安心して頼ることができました。何より「娘に一生分の愛情を注いで、自分は確かに愛されていたんだという記憶を植え付けるまでは死ねない」という気持ちがモチベーションでした。それから、心配して御守やら食べられそうな食料を届けてくれる友人やママ友たち。意外と大きいのがインスタグラムで知り合ったがん友さん達と「がん患者あるある」で盛り上がれることも支えになっていました。そして、経済的にも援助してくれる両親ですね。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
佐藤さん
今は腹膜播種があり、余命宣告も出ています。飲み薬の副作用は前回の「TS-1」よりも今服用しているカペシタビンの方が比較的楽です。3週間に一度、オキサリプラチン(体重が36kgになってしまい通常量の半分)とオプジーボの注射、そこから2週間のカペシタビン(1回2錠を朝夕)の服用が1セットで、今は4クール目を終えたところです。播種の影響で大腸が狭くなっているため、消化に良い食事のみ摂りつつ、便をやわらかくする酸化マグネシウム(1回2錠を毎食後)と、排便を促すピコスルファートナトリウム内用液(就寝前に15〜20滴)を毎日使用して何とか腸閉塞にならないように過ごしています。
立場や考え方が違ってもお互いを少しでも理解しあえるようになってほしい
編集部
同じ病気を抱えている人に伝えたいことはありますか?
佐藤さん
私はメンタルが強めなので、そこまで落ち込んだり深刻になったりしていないのですが、そうならなかったのは適度に吐き出せているからだと思っています。家族からは、「自分の病気のことを人に話すと、その人にも荷を負わせることになるからあまり話さない方がいいのでは?」と言われたこともありましたが、自分と家族だけで抱え込むなんて無理です。確かに健康な人にはわかりにくいと思うので、がん友さんとつながったり、ストレスにならない程度にSNSをうまく利用したりして、抱え込まないでほしいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
佐藤さん
幸い主治医や看護師さんに恵まれました。なので、今私がしてもらっているように、話をきちんと聞いてくれる、些細な訴えに耳を傾けてくれる、そんな医療従事者の方が多ければいいなと思います。主治医の包容力と、天使のような看護師さんに救われています。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
佐藤さん
この記事をお読みになるということは、ご自身か周りに同じような境遇の方がいらっしゃるのかもしれません。お互い、立場が違うし、患者、患者の家族、友人、それぞれ完全にはお互いを理解することは難しいのかもしれませんが、こうして情報を取り入れて少しでも理解しあえるようになったらいいなと思います。
編集部まとめ
この記事を読んでいる方の中には、バリウムや胃カメラは苦手だという人も多いのではないでしょうか。佐藤さんは、健康診断だけでなく、バリウムや胃カメラの大切さを読者に伝えたいとおっしゃっていました。どちらか一方ではなく、両方の検査を定期的に受けることが大切なのだそうです。また、「がん保険にも絶対に入って」「辛い治療中は話せる仲間が大切! 一人で抱え込まないで」と強調していました。娘さんへの「一生分の愛情を、自分は確かに愛されていたんだという記憶を植え付けるまでは死ねない」という想いが実を結ぶことを願います。