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重症化すると足の切断も!? 本当は怖い足の血流低下について専門医が解説

 公開日:2023/12/14
重症化すると足の切断も!? 本当は怖い足の血流低下について専門医が解説

足が冷たい、歩くと足が痛むといった症状には「末梢動脈疾患」という病気が隠れている場合があります。放置し続け病状が進行すると、最悪の場合、足の切断につながる可能性もあると専門医は言います。「末梢動脈疾患」はどのような病気なのでしょうか。セルフチェックや治療法なども含めて、TOWN訪問診療所城南院院長の宇都宮誠先生に詳しく解説して頂きました。

宇都宮 誠

監修医師
宇都宮 誠(TOWN訪問診療所城南院)

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2002年東邦大学医学部卒業。2002年東邦大学医療センター大橋病院循環器内科、2008年京都桂病院心臓血管センター、2013年東京労災病院循環器内科など、高度先進病院で内科専門医・循環器専門医として経験を積む。心臓カテーテル治療を行うとともに、下肢の動脈硬化やフットケアを行う外来診療に従事。2020年より現職。日本内科学会専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、日本フットケア・足病医学会評議員。

末梢動脈疾患とは?

末梢動脈疾患とは?

編集部編集部

はじめに「末梢動脈疾患」という病気について教えてください。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

脳梗塞・心筋梗塞と同様に、動脈硬化によって血管に詰まりが生じて起こる病気です。全身に起こりますが、特に足の動脈で発病することが多いですね。

編集部編集部

最初にどのような症状が表れるのでしょうか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

初期にはあまり症状は出ず、足がなんとなく冷たいと感じる程度です。

編集部編集部

進行していくと、足の状態や症状はどのようになりますか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

歩くと足が痛い」「休むと治まる」という症状が表れます。一定の距離を歩くと症状が出現してくるので、休みながら自分のペースで歩くことは可能ですが、誰かと一緒に出かけることが難しくなります。痛みが出ることで自ら歩くことを制限すると症状は感じなくなります。ご高齢の方の場合は、あまり症状を訴えずに、徐々に足腰が弱くなってしまうこともあります。足の血流が乏しい状況でなにかしらの傷ができてしまうと傷はなかなか治らず、徐々に拡大し、時に潰瘍・壊疽の状態まで悪化することがあります。適切な治療ができなければ足を切断せざるを得ない場合もあります。

こんな方は要注意!? リスクと治療法について学ぶ

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編集部編集部

末梢動脈疾患なのかチェックする方法はありますか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

もっとも簡単な方法は「足の脈を触ること」です。正常であれば、手首で脈が触れるのと同様に、足の甲の中央からやや内側で脈に触れることができます。左右ともに同じ強さで脈に触れることができれば、末梢動脈疾患である可能性はほぼ否定できます。一方で、足が冷たく、脈拍に左右差がある、もしくは両足とも触れない場合には末梢動脈疾患を疑います。

編集部編集部

末梢動脈疾患になりやすい人にはどのような特徴がありますか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

末梢動脈疾患の原因の多くは動脈硬化によるので、心筋梗塞や脳梗塞といった病気と同様です。糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病がある方は要注意です。最も危険なのは喫煙です。喫煙歴のある方は動脈硬化が起こっている可能性が高く、脳梗塞や心筋梗塞を過去に起こしたことがある方もハイリスクで注意が必要です。

編集部編集部

末梢動脈疾患の予防や進行を抑える方法はありますか? 病院に行くタイミングについても教えてください。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

最も重要なことは禁煙です。また、生活習慣の改善と糖尿病などの病気があればしっかりとコントロールすることも重要です。足が冷たい、歩くと足が痛い、なかなか治らない傷があるなど末梢動脈疾患を疑う症状がある場合には専門の医師に相談するようにしましょう。また、明らかな症状が無くても、「足がなんとなく冷たく、脈が触れない」という時には検査のために一度受診されることをお勧めします。足の血流低下をきっかけに全身の動脈硬化が明らかになることも多くあります。

末梢動脈疾患の治療法について知る

末梢動脈疾患の治療法について知る

編集部編集部

末梢動脈疾患はどのように治療するのでしょうか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

主に「薬物療法」「手術療法」「運動療法」「食事療法」の4つがあります。末梢動脈疾患に対する薬物治療では、症状を軽減する薬予後を改善する薬があり、歩行時の足の痛みを軽減する薬にはシロスタゾールというものがあります。心臓に病気があると使いにくいなどのデメリットはありますが、歩行時の症状は軽減できます。潰瘍・壊疽に至ってしまうと、医学的根拠のある薬は少なく、血行再建術という手術が必要になる場合が多いですね。

編集部編集部

予後を改善する薬はどのようなものですか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

予後を改善する薬としては抗血小板薬、いわゆる血液をサラサラにする薬です。心筋梗塞や脳梗塞など全身の動脈硬化疾患を予防します。近年では新しい抗凝固薬が承認され、いま期待が高まっています。

編集部編集部

手術療法について教えてください。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

薬物治療や運動療法で改善しない歩行時の痛み、足の潰瘍・壊疽に至ってしまった場合には、血流を改善する治療が必要です。詰まった血管の先まで血液を送る治療にはバイパス手術とカテーテル手術という2つの方法があります。病変の部位や血管の長さなどによって治療法が選択されます。一般的にはバイパス手術の方が効果は長持ちすると考えられていますが、体への負担や入院期間が長くなるなどの問題があります。一方、カテーテル治療は体への負担が少なく、入院期間は短いので適応が拡大しています。潰瘍や壊疽がある場合には傷に対する治療も必要になるため治療は長期化します。

編集部編集部

運動療法や食事療法についても教えてください。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

歩行時の足の痛みに対しては運動療法も有効です。病院で理学療法士と一緒にプログラムを考え、歩行や筋力トレーニングを行います。長期的なことを考えた場合、食事療法も重要です。動脈硬化を予防する意味では一般的にバランスの取れた食事が良いと思います。また潰瘍・壊疽がある場合には傷の治りを良くするために栄養をとり、傷が治るために必要なエネルギーを補充することが重要と考えます。

編集部まとめ

「末梢動脈疾患」という病気は、重症化すると“壊疽”や“足の切断”の可能性もある怖い病気であると教えて頂きました。心筋梗塞や脳梗塞といった多くの人が知っている病気と同様に、動脈硬化が原因であるとのことでした。一方で、セルフチェックをもとに、予防や早期発見も可能であると学びました。ご自身の足の状態を確認し、気になる症状がある場合には、ご自身の生活を振り返るとともに、早めに受診してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修医師