糖尿病患者がストレスを減らすためにできる運動とは?
糖尿病患者のなかには、薬物療法や食事療法、通院、合併症への恐怖などで「ストレス」を感じている方も多いようです。しかし、「ストレス」を減らすことが糖尿病の予防や改善にも有効である可能性があると言います。運動をすることでストレスにはどのような影響を与えるのでしょうか。日常生活で健康的にストレスを緩和する鍵はどのようなことなのかも気になるところです。そこで今回は、理学療法士の河江さんに「糖尿病とストレスの関係」や「運動でどのようにストレスを解消していくのがいいのか」について伺いました。
監修理学療法士:
河江 敏広(理学療法士)
目次 -INDEX-
糖尿病とストレスの関係性とは
編集部
糖尿病患者がストレスを感じる主な原因は何ですか?
河江さん
糖尿病患者におけるストレスの要因は、日々実施しなければいけない服薬、運動、食事療法から、さらには通院、合併症への恐怖など様々なものがストレスになっています。
編集部
ストレスを減らすことが糖尿病の予防や改善に、どのように役立つのですか?
河江さん
人はストレスを感じると交感神経の活動が高まり、血糖値を上昇させるホルモンが分泌されてしまいます。そのため、ストレスを減らすと、血糖値を上昇させるホルモン分泌を抑えることが出来るため、糖尿病の予防や改善にも有効であると考えられています。
編集部
ストレスが糖尿病のコントロールや合併症に与える影響についても教えてください。
河江さん
ストレスは血糖値に影響を及ぼすため、血糖コントロールが不良となり、それにより合併症が重症化する恐れは十分に考えられます。また、過度なストレスにより糖尿病に必要な治療への意欲が低下することもあるため、可能な限りストレスは減らすように生活することが望まれます。
運動によるストレス緩和
編集部
運動することでストレスを減らすことはできるのですか?
河江さん
運動は終了後に達成感を得られることや、ストレスに影響を受ける自律神経活動のバランスを整えることが知られています。すなわち、運動を行うことでストレス軽減につながる可能性があると考えられています。
編集部
集団での運動はストレスを減らす効果を高めますか?
河江さん
集団での運動も仲間がいることで、継続することに対するストレスの軽減につながります。しかしながら、激しく運動の成績を競い合ったり対人関係で問題が生じたりする場合は、反対にストレスが高くなる恐れもあるため、集団での運動は楽しみながら行えているか、自身で確認しながら行うことが望まれます。
編集部
ストレス緩和のために、日常生活でできることは何かありますか?
河江さん
糖尿病の方は様々なストレスを抱えています。ストレスを緩和する方法としては、ストレスを感じていることを身近な人に相談しましょう。もし、身近な人がいなければ、かかりつけ医や看護師、理学療法士などに相談するのも一つの手です。他人に自分の悩みを相談することはストレス緩和において非常に効果のある方法です。また、糖尿病の方は常に服薬や食事、運動療法によって日常生活を制限されていると感じている方が多くいらっしゃいます。そのような場合には、何か治療目標を達成した場合の「自分へのご褒美」を設定することがおすすめです。HbA1cが7.0%に達したので旅行に行く、欲しかったものを購入するなどがいいですね。何か少しでも、自身を解放できる事柄を作ることがストレス緩和の一助になることでしょう。
運動の実践方法
編集部
ストレスを減らすためにできる運動の種類や特徴について教えてください。
河江さん
ストレスを減らすための運動に決まりはありません。ストレス緩和を目的とするのであれば、まずは自分が出来そうな運動、やってみたい運動を行うようにしてください。一方で、高強度の運動やボクシングなどの運動は、合併症の程度により実施できないことがあるので、実施する前に医師や理学療法士に相談をすることがおすすめです。また、目標設定も重要で、目標が高すぎると達成できないことにストレスを感じてしまいます。まずは、必ず達成可能な目標を設定して徐々に目標を高くするようにしましょう。
編集部
運動を行う際の効果的な頻度や時間、タイミングなどはありますか?
河江さん
ストレスを減らすための運動において、実施時間は早朝が望ましいかもしれません。早朝であれば周囲も静かですし、人も少ないので周囲に気を遣わず運動をすることが可能です。しかし、早朝の空腹時は低血糖のリスクがあるため、空腹での運動は避けるようにしましょう。頻度やタイミングについては、自分で出来そうな頻度、タイミングで実施することがストレス緩和には重要です。
編集部
運動時の注意点も教えてください。
河江さん
ストレス緩和のための運動で注意したいことは、過度な目標設定をしないことです。例えば1か月で体重を10㎏減らす、HbA1cを3%減らすなどは医学的にも安全ではありません。目標設定の際は、医師や理学療法士に相談しながら達成可能な目標を立てて運動を行うようにしましょう。最も重要なことは自分が運動を楽しみながら行えているかどうか、考えながら自分に合った方法を模索していくことがストレス緩和の運動療法につながり、運動習慣の獲得への近道になります。
編集部まとめ
ストレスを減らすことが糖尿病の予防や改善にも良い影響があるとのことでした。運動はストレスを軽減する効果があり、達成感や自律神経のバランス調整にも寄与するとのことです。ただし、目標設定には注意が必要で、自分のペースで楽しみながら行うことが大切とのことでした。また、日常生活では身近な人や医療スタッフに相談することや、自分に合った運動の方法を見つけることがストレス緩和の鍵であると教えて頂きました。