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「成長ホルモン分泌不全症」の症状や治療法を医師が解説 低身長症の主な原因もご紹介

 公開日:2023/07/13
「成長ホルモン分泌不全症」の症状や治療法を医師が解説 低身長症の主な原因もご紹介

疾患や遺伝などが原因となって発症する「成長ホルモン分泌不全症」。成人にもみられる疾患ですが、成長期の子どもにも発症して低身長の原因となっています。今回は成長ホルモン分泌不全症の原因や治療法などについて、「東京神田整形外科クリニック」の田邊先生に詳しく教えていただきました。

田邊 雄

監修医師
田邊 雄(東京神田整形外科クリニック)

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金沢医科大学医学部卒業。その後、順天堂大学医学部附属順天堂医院の関連施設にて研修・勤務、都内整形外科の院長を務める。2020年、東京都千代田区に「東京神田整形外科クリニック」を開院。医学博士。日本整形外科学会整形外科専門医。日本再生医療学会、日本成長学会の各会員。

成長ホルモン分泌不全症とはどんな病気? 成長ホルモン(GH)が分泌されにくくなる主な原因や低身長などの症状を医師が解説

成長ホルモン分泌不全症とはどんな病気? 成長ホルモン(GH)が分泌されにくくなる主な原因や低身長などの症状を医師が解説

編集部編集部

成長ホルモン分泌不全症とはなんですか?

田邊 雄先生田邊先生

体内で成長ホルモンが正常に作られなくなる疾患のことを成長ホルモン分泌不全症と言います。成長ホルモンは脳の下垂体という部位で作られるのですが、何らかの原因により下垂体の働きが悪くなることで発症します。

編集部編集部

成長ホルモン分泌不全症は、子どもに発症する疾患なのですか?

田邊 雄先生田邊先生

はい。子どもに発症する疾患ですが、多くの場合、生涯にわたって継続します。発症頻度は6~17歳の学童期で、1万人あたり男児2.14人、女児0.71人とされています(※)。男女比でみると、男児に多く発症することがわかっています。

※小児慢性特定疾患情報センター「成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症:疫学」
https://www.shouman.jp/disease/details/05_04_006/#:~:text=%E7%96%AB%E5%AD%A6,%E5%A5%B3%E5%85%90%E3%80%810.71%E4%BA%BA%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82

編集部編集部

成長ホルモン分泌不全症になると、どのような症状が起きるのですか?

田邊 雄先生田邊先生

一般に、以下の症状がみられるとされています。
●子どもの場合
年齢が上がっても身長が伸びない
身長が低い
年齢より顔つきが幼い

●成人の場合
疲れやすい(スタミナの低下)
集中力が落ちる
気力が低下する
うつ状態になる
性欲が低下する
皮膚が乾燥する
体脂肪(内臓脂肪)が増える
筋肉量が減少する
脂質代謝異常が起きる
脂肪肝になる

成長ホルモン分泌不全症の診断基準・検査方法やなりやすい人(子ども・成人)の特徴

成長ホルモン分泌不全症の診断基準・検査方法やなりやすい人(子ども・成人)の特徴

編集部編集部

成長ホルモン分泌不全症の原因はなんですか?

田邊 雄先生田邊先生

様々な原因があり、以下のようなことが考えられます。

・下垂体腫瘍、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫など頭の病気の既往がある
・頭部外傷やくも膜下出血を起こしたことがある
・骨盤位分娩、新生児仮死など出産時に異常があった
・出生時に頭の損傷があった
・放射線治療などによる物理的な障害がある
・視床下部下垂体系などの遺伝子に異常がある
・小児がんを発症し、放射線治療を受けた経験がある

編集部編集部

成長ホルモン分泌不全症は、どのように診断されるのですか?

田邊 雄先生田邊先生

子どもの場合、身長が標準と比べてどれくらい低いかを調べるのに「SDスコア」という指標を用います。SDスコアは、「SDスコア=(身長の実測値-平均身長)÷標準偏差(SD)」という式で表され、SDスコアが-2.0SD未満だと低身長と診断されます。

編集部編集部

ほかには、どのような診断基準がありますか?

田邊 雄先生田邊先生

子どもでも成人でも、成長ホルモンを出すように指令を出す物質を体内に入れて、成長ホルモンがどれくらい分泌されるかを調べる「成長ホルモン分泌刺激試験」という検査をおこないます。インスリン、アルギニン、GHRP-2などの負荷試験によって判定します。

編集部編集部

成長ホルモン分泌不全症を発症すると、どのように進行するのですか?

田邊 雄先生田邊先生

多くの症例において、成長ホルモン分泌不全症は一生涯、継続するとされています。しかし、治療をすることで症状が改善したり、進行を予防したりすることは可能です。子どもの場合は骨の成長がストップしたら基本的に治療も終了となりますが、成人の場合は生涯を通じて治療をおこなうケースもあります。したがって、成長ホルモン分泌不全症が疑われる場合には、早めに専門の医療機関を受診しましょう。

成長ホルモン分泌不全症の治療法 ホルモン治療(注射)で対処できる? 治療の費用の目安は?

成長ホルモン分泌不全症の治療法 ホルモン治療(注射)で対処できる? 治療の費用の目安は?

編集部編集部

成長ホルモン分泌不全症は、どのように治療するのですか?

田邊 雄先生田邊先生

成人の場合も子どもの場合も、成長ホルモンを毎日自分で注射していただきます。成長ホルモン補充療法」と呼ばれ、小さい子どもの場合には保護者が注射しますが、小学校高学年以降は自分で注射することも可能です。

編集部編集部

どれくらいの頻度で注射が必要なのですか?

田邊 雄先生田邊先生

基本的に1日1回(週6~7日)、入浴後や就寝前に注射します。ペン型の専用注射器を用いて、臀部、腹部、太もも、上腕のいずれかに皮下注射するのが一般的です。

編集部編集部

注射によるリスクはありますか?

田邊 雄先生田邊先生

不足している成長ホルモンを注射によって補う治療なので、それほどリスクはありません。ただし、注射部位の発赤、股関節痛、膝の痛みなどの副作用がみられることもあります。また、血糖値の上昇、糖尿病のリスクがあることもあるので、定期的に医師の診察を受ける必要があります。それから、悪性腫瘍がある人は成長ホルモンの投与ができません。

編集部編集部

治療費はどれくらいですか?

田邊 雄先生田邊先生

自費で受けようとすると、成長ホルモン治療は高額になってしまいます。しかし、自治体の医療費助成制度や、小児慢性特定疾病としての医療費助成制度が適用になるケースもあります。助成を受けるには-2.5SD以下など、成長ホルモン治療の対象基準を満たす必要があるので確認しておきましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

田邊 雄先生田邊先生

「成長ホルモン分泌不全症と診断された」、もしくは「成長ホルモン分泌不全症かもしれない」と悩んでいる人は、大きな不安を抱えていらっしゃると思います。しかし、成長ホルモン分泌不全症は適切な治療を早期に開始することで、十分な改善効果が認められています。治療を開始したい、あるいは成長ホルモン分泌不全症かどうか診断してほしいという場合には、専門医に相談することをおすすめします。

編集部まとめ

成長ホルモン分泌不全症は決してよくある疾患ではありませんが、発症すると治療が長期に及ぶことから、家族の負担も大きくなりがちです。しかし、着実に治療を続ければ期待した効果が得られるとのことでした。治療に対する不安や心配事は、早めに専門医に相談して解決しましょう。

医院情報

東京神田整形外科クリニック

東京神田整形外科クリニック
所在地 〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町2-8-6 メディカルプライム神田3階
アクセス JR「神田駅」 徒歩1分
診療科目 整形外科

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