認知症かも… 病院を受診するタイミングを医師が解説 家族の対応方法や早めの検査が良い理由とは?
「家族が認知症かも……?」それだけでも不安なのに、いつ、どのように、どこに相談したら良いのか、医療機関ではどんなことをするのか……。よく分からないとさらに不安になってしまうでしょう。そこで病院を受診するタイミングについて、内科医の塚本 善峰先生(あいあいクリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
塚本 善峰(あいあいクリニック)
目次 -INDEX-
認知症の初期症状や原因が知りたい 病院は何科を受診すべき? 若年性認知症とは?
編集部
「認知症」について教えてください。
塚本先生
「認知症」とは、脳に何らかの障害が起こることによって、記憶力や判断力などが低下した状態をいいます。発症する要因としては、脳卒中、交通事故などによる頭部外傷やアルコール、最近だと新型コロナウイルス感染症などさまざまですが、最も多いのは「加齢」によるものです。脳卒中や交通事故などによるものと異なり、軽い症状から徐々に進行するので、特にご自身で気づくことが難しいかもしれません。
編集部
「軽い症状」とは、例えばどんなものがありますか?
塚本先生
多いのは、「もの忘れ」や「季節や曜日がわからなくなる」「言葉が出にくくなる」といったことなどですね。ほかには「料理や調べものなど、今までできていた作業ができなくなった」というようなことも多くみられます。
編集部
性格が変わることもあると聞きました。
塚本先生
そうですね。「怒りっぽくなった」という場合や、逆に「無気力になってうつ状態」という場合もあります。さらに、人によっては「不安が強くなった」「興奮しやすくなった」ということもあり、さまざまな心理症状がみられます。
編集部
医療機関を受診したほうが良いのでしょうか? 何科に行けば良いのですか?
塚本先生
よく聞かれる質問です。まずはかかりつけの内科などで相談してみるのも良いと思います。かかりつけ医がいない方やもう少し専門的な検査を希望している方であれば、精神科、神経内科、脳神経外科などでも良いと思います。医療機関によっては「認知症外来」や「もの忘れ相談」などがありますので、調べてみると良いでしょう。
認知症は早めのタイミングで病院を受診・診断を受けた方が良い理由を医師が解説 どんな認知症検査が必要になる?
編集部
「認知症かも……」と気になったらすぐに受診するのが良いのでしょうか?
塚本先生
そうですね。先ほどもお伝えしたように、加齢による認知症は気づかないうちに進行しているケースも多いため、「あれ?」と思ったら速やかに受診することをお勧めします。
編集部
どんな検査をするのですか?
塚本先生
「神経心理学検査」と呼ばれる、簡単な質問や作業による検査を行います。最も有名なのは、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」という検査ですね。記憶を中心とした大まかな認知機能を調べる検査です。ほかには「脳画像検査」や「MCIスクリーニング検査」なども行われます。
編集部
「脳画像検査」では、どんなことがわかるのですか?
塚本先生
「脳画像検査」では、脳の萎縮や脳血流量の低下がないかを調べられます。認知症となった脳は「萎縮」といって、画像で見ると痩せたように細くなってしまったり、特定の場所の血流量が減少してしまったりするのです。
編集部
では「MCIスクリーニング検査」はどのような検査ですか?
塚本先生
「MCIスクリーニング検査」は血液検査によって、認知症の危険度がわかります(注:保険適用外)。「MCI」は「軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)」という意味で、簡単に言うと「認知症の入り口にいるかどうか?」がわかる検査ですね。
「家族に認知症の疑い…」 本人が病院受診を拒否する場合の早めに受診させる方法・対応・怒らせない伝え方のコツは?
編集部
「家族が認知症かも?」と思ったら、どうしたら良いでしょうか?
塚本先生
繰り返しになりますが、認知症は早期発見が大事ですので、やはり速やかに専門家に相談することをお勧めします。認知症は、放置すれば進行してしまいますが、早期発見や適切な治療、生活習慣の見直しをすることで回復する場合があります。早期に正しく診断・治療し、生活習慣を改善することが重要となるのです。
編集部
「認知症かもしれないから病院に行こう」とは、なかなか言い出しにくいと思います。
塚本先生
そうですね。意を決して伝えたとしても「そんな必要ない」と拒否されてしまうことも多いようです。例えば、「病院を受診しよう」よりも「専門家に相談しよう」と、言い方を変えるだけで印象も変わると思います。そういった意味では「精神科」などよりも「もの忘れ相談」などの方が、入口としてはハードルが低いかもしれませんね。
編集部
ほかに、伝え方のコツなどありますか?
塚本先生
みなさん「健康診断」や「人間ドック」は、そこまで抵抗が無いかと思います。「もの忘れ相談」や「認知症外来」も、それと同じような感覚で捉えていただけたらと思います。「健康診断の一環として」「何もなければ安心できるから」など、軽い気持ちで相談できるよう促していただけたらと思います。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージをお願いします。
塚本先生
家族の方に認知症の疑いを感じたら、大きな不安があるかと思います。しかし、意を決して受診を勧めたとき、本人が「実は自分も気になっていた」というケースも少なくありません。まずは、軽い気持ちで「専門家に相談してみよう」と伝えてみることが大事です。あとは、はじめて受診する方は気合(緊張)が入っていて、検査などがいい結果になることも多いので、その1回で異常がなかったとしても、定期健診のような形で繰り返し検査を受けていくことも重要だと思います。
編集部まとめ
認知症は放置すれば進行してしまいますが、早期発見や適切な治療、生活習慣の見直しなどで回復する場合があるとのことでした。早期に正しく診断・治療し、生活習慣を改善することが大事なのですね。健康診断のような感覚で、定期的に認知機能をチェックしてもらうのが当たり前になっていくと良いですね。
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診療科目 | 内科 |