FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 親が認知症にならないために覚えておきたい知識・対策方法をご紹介

親が認知症にならないために覚えておきたい知識・対策方法をご紹介

 更新日:2023/03/27

認知症は、本人や周囲の行動に左右されず発症する可能性があります。「親の認知症は、子どもの責任」と言うつもりはありません。しかし、何かしらできることもあるはずです。責任論ではなく、むしろ親子の交流に軸を置いた認知症対策について、「ふくろうクリニック自由が丘」の伊澤先生に伺いました。

伊澤 真理子医師

監修医師
伊澤 真理子(ふくろうクリニック自由が丘 副院長)

プロフィールをもっと見る

東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大橋病院勤務後の2021年、東京都世田谷区に位置する「ふくろうクリニック自由が丘」の副院長就任。脳を中心とした疾患にチーム医療で対応している。日本脳神経外科学会専門医、日本認知症学会専門医・指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医。

認知症は予防できるのか

認知症は予防できるのか

編集部編集部

そもそも、認知症の予防は可能なのでしょうか?

伊澤 真理子医師伊澤先生

認知症の原因物質は発症の20~30年前から蓄積が始まっているとされます。しかし、対処が可能な認知症のリスク因子もいくつかあげられており、理論的には認知症の発症リスクを40%程度低下させることが可能という報告もあります。そのなかで、生活習慣病予防、身体活動(運動)、社会的活動、知的活動は重要な項目とされています。

編集部編集部

認知症対策としての運動量の目安はありますか?

伊澤 真理子医師伊澤先生

WHO(世界保健機関)は、認知症予防策として、「週に150分以上の中等度以上の有酸素運動」を推奨しています。そのため、できれば毎日、20分強の運動に取り組ませてください。社会活動としては、ご友人とのつながり、習い事やカルチャーセンターなどのコミュニティへの参加があります。また、知的活動としては、囲碁将棋やパズルゲーム、音楽演奏、絵画、書道、園芸、手芸などがあります。

編集部編集部

感染症の影響で、以前の一般論が通用しなくなってきたと思うのですが、いかがでしょうか?

伊澤 真理子医師伊澤先生

感染症が怖いから運動を一切諦めるという極論ではなく、感染症の中で「どう、取り組むか」が大事だと思います。屋外の散歩であれば感染症のリスクは低いですし、自宅でオンラインの体操・ヨガなどを利用されている人も実際にいらっしゃいます。

編集部編集部

なるほど。ただ、運動は本人が嫌いだとなかなか受け入れてくれませんよね。

伊澤 真理子医師伊澤先生

運動不足が目に余るけれど家族の勧めでは動かないようなら、外部のサービスを積極的に導入してみてはいかがでしょうか。介護保険では、訪問や通所のリハビリを受けることができます。

親との接し方について

親との接し方について

編集部編集部

実際は、親と離れて暮らすケースの方が多そうです。

伊澤 真理子医師伊澤先生

たしかに、そうかもしれませんね。そのため、顔を出す頻度を増やして「兆し」に気づくことも大切ですよね。「消費期限が切れたものが冷蔵庫にある」「同じものがたくさんある」など、実際に見てみないとわからないこともあります。また、ガスコンロのつけっぱなしによる小火(ぼや)が比較的多いため、安全装置付きのガスコンロやIHクッキングヒーターへ替えることも検討してみましょう。

編集部編集部

医療の話題に絡めるとしたら、「処方薬の管理」などでしょうか?

伊澤 真理子医師伊澤先生

薬が多い場合、1回分の処方薬を1つにまとめてもらう「一包化」をおすすめします。また、認知機能が低下してきたとき、1日数回の内服は難しくなってきます。飲み忘れが多いことを主治医の先生に相談し、できれば1日1回にまとめられないか相談してみるといいと思います。加えて、複数の医療機関を受診して同じような効果の薬が処方されていることもあるので、総合的な評価をしてもらえる主治医の先生がいると安心です。

編集部編集部

お金の管理や詐欺被害も気になります。

伊澤 真理子医師伊澤先生

被害を未然に防ぐために、日頃からこまめに様子を確認しておきましょう。自動通話録音機能のついた電話の利用や、留守番電話にしておいて相手を確認してから出るようにするといった対策をおすすめします。また、警備会社がおこなっている見守りサービスでは、本人の動きが分かるほか、不審者の出入りも確認できます。認知症ではなくても、今後の財産管理に不安がある場合には「任意後見人」の制度や、すでに判断能力が不十分である場合は「成年後見制度」の利用を推奨します。

編集部編集部

そうした「変化・変更」を、子どもの側から積極的にしていくのがいいということですか?

伊澤 真理子医師伊澤先生

親御さん自身が必要性を理解して、自分だけでできれば問題ないです。しかし、認知症の初期段階でご本人が気づくことができることは多くはなく、「まだできる、まだ大丈夫」と受け入れられないことがほとんどです。慣れ親しんできた生活からの「変化・変更」は、誰でもストレスに感じますよね。少しずつでいいので、できるところから手伝ってあげてください。

施設の利用も検討

施設の利用も検討

編集部編集部

先ほど話しにあったように、手に負えなくなってきたら施設の利用も検討したいです。

伊澤 真理子医師伊澤先生

熱心なご家族ほど「私が看なくては」と抱え込みがちですが、介護は一朝一夕のものではありません。そのため、介護サービスは積極的に利用しましょう。例えば「ショートステイ」は、介護施設などに数日~数週間の宿泊利用できるサービスです。ご家族様のご予定の際、あるいは身体・精神的な休養として利用することをおすすめします。

編集部編集部

入居に限らず、通いのデイケアもありますしね。

伊澤 真理子医師伊澤先生

はい。要支援・要介護の認定を受けた人が対象のデイケア(通所リハビリテーション)、要介護の認定を受けた人が対象のデイサービス(通所介護)があります。施設によってまちまちですので、見学会などに親子で参加して、サービスの中身を確認しておくといいと思います。実際、一般的にイメージされている内容とは違うと思いますし、ご家族の安心材料にもなるはずです。

編集部編集部

いずれにしても、時間のかかりそうな話題です。

伊澤 真理子医師伊澤先生

2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると予測がされています。生活・介護のサポートや財産管理のサポートについて、誰にどのような支援を希望されるのか、判断能力が十分なうちに意思を確認しておきましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

伊澤 真理子医師伊澤先生

活動的なライフスタイルは、認知機能低下の予防に重要です。認知症予防のための介入は、早すぎることも遅すぎることもありません。また、認知機能の衰えを早期に察知することで、認知症の予防につながることもあります。受診を勧めづらい場合は、医療機関には伝えたうえで「健康診断」という形で一緒に来院されるのも手だと思います。

編集部まとめ

認知症予防に必要なことは、「運動」「社会的な交流」「知的な活動」でした。ただし、電話やメールで親に教えたところで、実効性に乏しいと考えられます。必要に応じて、民間サービスを積極的に活用してください。その際は「言い方」に気を配りたいですね。親の性格は子どもが一番知っていると思うので、結果に結びつく「言い方」を選びましょう。

医院情報

ふくろうクリニック自由が丘

ふくろうクリニック自由が丘
所在地 〒158-0083 東京都世田谷区奥沢6−20−23 フォーラム自由が丘1F-A・2F-A
アクセス 東急東横線「自由が丘駅」 徒歩7分
東急大井町線「九品仏駅」 徒歩7分
東急目黒線「奥沢駅」 徒歩7分
診療科目 脳神経外科、脳神経内科、整形外科、リハビリテーション科

この記事の監修医師