「睡眠時無呼吸症候群」の中枢性と閉塞性の違いを医師が解説 原因や治療法の違いはある?
寝ている間に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」。最近はメジャーな疾患として、疾患の認知も広がりつつあります。では、この睡眠時無呼吸症候群に「閉塞性」と「中枢性」があることはご存知でしょうか。今回は、睡眠時無呼吸症候群の病態やその原因、治療法などについて、「とだ小林医院」の小林隆之先生に解説していただきました。
監修医師:
小林 隆之(とだ小林医院)
目次 -INDEX-
眠っている間に息が止まる睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは 原因や症状を医師が解説
編集部
睡眠時無呼吸症候群について教えてください。
小林先生
睡眠時、つまり眠っている間に呼吸が止まったり,浅くなったりする疾患です。とはいえ、「眠っている間、ずっと呼吸が止まっている」というわけではありません。たいていの場合、無呼吸の時間と呼吸している時間を一晩中繰り返しています。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
小林先生
※日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
編集部
睡眠時無呼吸症候群には、「睡眠時の無呼吸」以外の症状もあるのですか?
小林先生
はい。無呼吸以外で最も顕著な症状は「いびき」です。また、多くの場合、熟睡感が得られないので日中の眠気や倦怠感を伴います。ほかにも、寝汗や起床時の頭痛を訴える人も多くいらっしゃいますね。
編集部
様々な症状が表れるのですね。
小林先生
そうですね。日中の眠気や倦怠感は、作業効率の低下や居眠り運転、勤務中のミスや事故(労働災害)などの原因になってしまいます。また、睡眠時無呼吸症候群は、「高血圧症や2型糖尿病などの生活習慣病と関係している」という報告もあります。さらに、「脳血管障害や心筋梗塞などの重篤な病気の発症リスク」や「交通事故の発生リスクを高める」というデータもあるほかに、「突然死」との関連も報告されています。
睡眠時無呼吸症候群の種類「中枢性」「閉塞性」の特徴や違い
編集部
睡眠時無呼吸症候群の原因は何ですか?
小林先生
睡眠時無呼吸症候群の原因には肥満や顎の小ささなど、様々なものが挙げられますが、大きく分けると、空気の通り道である上気道が物理的に狭くなり、呼吸が止まってしまう「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」と、呼吸中枢の異常による「中枢性睡眠時無呼吸(CSA)」の2つのタイプです。また、2つのタイプを併発する「混合型」のケースもあります。
編集部
それぞれ詳しく教えてください。
小林先生
まず閉塞性睡眠時無呼吸は、呼吸の通り道である上気道が何らかの要因で塞がってしまい、結果的に呼吸ができなくなってしまう状態です。物理的な原因が多く、例えば「肥満で首の周りに脂肪がたくさんついている」「下顎が小さいため、気道がもともと狭い」「仰向けで寝ると、自分の舌が喉の方に下がってしまい、気道を塞いでしまう」などが挙げられます。
編集部
もう一方、中枢性睡眠時無呼吸は?
小林先生
私たちは、眠っている間も脳から「呼吸をしなさい」という指示が出ています。それをキャッチすることで呼吸を続けていられるのですが、脳血管障害や心不全など、何らかの原因でその「呼吸指令」が出なくなってしまうのが、中枢性睡眠時無呼吸です。
編集部
中枢性睡眠時無呼吸の原因は何ですか?
小林先生
脳、とくに脳幹部の異常や心臓や腎臓の疾患などでみられる場合が多いのですが、基礎疾患のない場合でも中枢性睡眠時無呼吸がみられることがあり、その原因はよく分かっていません。心臓病、とくに心不全では数10%の患者さんに認められます。
睡眠時無呼吸症候群の治療法や予防法 中枢性と閉塞性で対策は変わる?
編集部
睡眠時無呼吸症候群は自分で気づけるのでしょうか?
小林先生
眠っている間のことなので、なかなかご自身で気づかないケースも多いと思います。例えば、家族やパートナーに「いびきが大きい」「いびきが突然止まる」と指摘された場合は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。また、「いくら寝ても眠い」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きると頭痛がする」など場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。睡眠時無呼吸症候群の疑いがあれば、お近くの医療機関に相談することをおすすめします。
編集部
医療機関では何をするのですか?
小林先生
まずは問診で評価をおこなって、どんなときにどんな症状があるのかを確認します。多くの場合「ESS(Epworth Sleepiness Scale)」という質問票が用いられます。ESSはご自身でも簡単におこなえるため、セルフチェックに使ってみるのもおすすめです。その後、「PSG検査」という体にセンサーを装着して夜間睡眠中の呼吸状態などを測定する検査をします。PSG検査には、「簡易型」と「精密型」がありますが、簡易型であれば、検診器をご自身で取り付けてご自宅で測定することができるため、入院の必要はありません。簡易型の検査は、お近くのクリニックでも受けられることが多いですね。
編集部
検査で睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、どのような治療をするのですか?
小林先生
閉塞性睡眠時無呼吸の場合は、基本的には「CPAP療法」という睡眠中に鼻マスクをつけて気道に空気を送り、気道の閉塞を防ぐ治療が選択されます。睡眠時無呼吸症候群の診断基準を満たしている場合は、保険が適用され、CPAPの装置も医療機関からレンタルすることができます。中枢性睡眠時無呼吸の場合は、心不全など、原因となる疾患の治療をおこないます。場合によっては、閉塞性睡眠時無呼吸と同じCPAPで改善するケースもあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小林先生
睡眠中にいびきや無呼吸があり、日中の眠気や倦怠感などで日常生活に支障をきたしている人、高血圧などの生活習慣病がある人は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。睡眠時無呼吸症候群の診断治療は、クリニックの外来でおこなえます。CPAPで日常生活が楽になり、治療効果を存分に実感している人もいらっしゃいます。CPAPの治療データはオンラインで確認することができ、受診ごとにフィードバックします。CPAPを装着している睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、客観的な数値からも治療効果を実感することができます。症状が気になる人は、一度お近くの医療機関で相談してみてくださいね。
編集部まとめ
今回は、睡眠時無呼吸症候群のメカニズムや「中枢性」と「閉塞性」の違い、原因や治療法などを解説していただきました。眠っている間のことなので自分ではわからず不安ですが、特徴的な症状やセルフチェック方法があるとのことでした。生活習慣病や脳血管障害、心筋梗塞、そして突然死のリスクも高まる睡眠時無呼吸症候群、気になる人は医療機関に相談してみることをおすすめします。
医院情報
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診療科目 | 内科、呼吸器内科、整形外科、リハビリテーション科 |