「ワクチンの副反応が怖い!」子どもの予防接種は受けさせないといけないの?
ここ数年、メディアで「ワクチン」という言葉を聞かない日はなかったと言っても過言ではありません。とくに、子どものワクチンや予防接種については、どうするのが適切なのかわからない保護者も多いかと思います。今回は、子どものワクチン接種のメリット・デメリットについて、「渡部クリニック」の平石先生にお話を伺いました。
監修医師:
平石 知佳(渡部クリニック)
子どものワクチン接種は必要? それとも不要?
編集部
まず、ワクチンについて改めて教えてください。
平石先生
私たちの体は一度感染症にかかると、原因となるウイルスや細菌などの病原体に対する「免疫(抵抗力)」ができます。この仕組みを利用して、「感染症にかかる前に免疫を作っておこう」という手段がワクチンです。感染症の原因となるウイルスや細菌を加工し、病原性(毒性)を弱めたり、なくしたりして、体にとって安全な状態にしたものを使用します。
編集部
なるほど。今回の本題である「子どもの予防接種」ですが、受けないといけないのですか?
平石先生
副反応やリスクが心配になってしまうお気持ちもよくわかりますが、個人的には「子どもの健康を守るために予防接種は必要である」と考えています。予防接種を受ける際には、それぞれのワクチンのメリットとデメリットの両方をしっかり理解した上で接種していただくことをおすすめします。
編集部
具体的に、どのようなデメリットがありますか?
平石先生
やはり、ワクチン接種後の副反応は一定の割合で起こります。 例えば、接種した部分が赤く腫れたり、熱が出たりするといった軽い局所反応などです。ただし、ほとんどの場合、これらの副反応は2~3日でおさまります。
子どものワクチン接種による副反応やリスクを医師が解説
編集部
副反応には、重篤なものもあるのですか?
平石先生
稀ですが、「アナフィラキシーショック」が表れることもあります。また、「心筋炎」や「心膜炎」が引き起こされた例も報告されています。さらに、生ワクチンの場合はウイルスを「不活化」していないので、副反応のリスクはやや高くなります。
編集部
生ワクチンについて、もう少し詳しく教えてください。
平石先生
現在、日本における予防接種で生ワクチンを使っているのは、水痘、麻しん・風しん(MR)、おたふくかぜ、ロタウイルスなどがあります。おたふくかぜワクチンであれば「髄膜炎」、ロタウイルスワクチンであれば「腸重積」などの副反応が報告されています。しかし、おたふくかぜのワクチン接種後に起こる髄膜炎よりも、おたふくかぜにかかった後の髄膜炎の方が、発症率も高く重症化しやすいと言われています。また、ロタウイルスワクチン後の腸重積は、接種時期が早い(月齢が早い)ほどリスクが低くなることもわかっています。ワクチンを打つか迷っているうちに、おたふくかぜにかかったり、月齢が進んだりする方が高リスクなので、早めの接種を検討してみてくだい。
編集部
ほかのワクチンについても、先生の見解を聞かせてください。
平石先生
例えば、麻しん・風しんや、おたふくかぜのワクチンを接種せず、もし妊娠中にこれらの病気にかかった場合、胎児に大きな影響を与えます。はしか、おたふくかぜ、風しんは治療方法がなく、本人の回復を待つしかありません。とくに、はしかは肺炎や脳症を合併した場合の死亡率がかなり高く、おたふくかぜは難聴、不妊、髄膜炎の合併症があります。実際、2015~2016年の2年間で、359人の子どもが難聴になっています。
編集部
結核(BCG)や新型コロナウイルスのワクチンについては、海外では接種を推奨していないところもあるようですが?
平石先生
この質問も非常に多くお受けします。結核については、継続したBCG接種の甲斐もあって、2021年に初めて日本も低蔓延国に入ることができました。引き続きこのレベルを保つために、そして近隣アジア諸国はまだ結核の患者数が多く海外からの持ち込みのリスクが高いことからも、BCGは受けた方がいいと考えています。また、新型コロナウイルスワクチンも同様に、小児の接種を推奨しています。
編集部
一口にワクチンと言っても、様々な種類があるのですね。
平石先生
そのとおりです。「ワクチンが良いか悪いか」ではなく、それぞれの病気やワクチンの種類、報告されているリスクや副反応などをしっかり理解した上で、接種するかどうかを決めることをおすすめします。
子どもが予防接種を受ける際、保護者が気をつけた方がいいことは?
編集部
では、予防接種を受ける際、気をつけた方がいいことなどはありますか?
平石先生
まずは、先述したとおり「どんな病気に対するワクチンで、どんな副反応やリスクがあるのか」を理解した上で接種しましょう。また、接種当日は朝から子どもの状態をよく観察し、普段と変わったところがなく元気であると確認しておきましょう。「いつもと様子が違うな」「体調が悪そうだな」と思ったら、医師に相談してワクチンを接種するかどうかの判断を仰いでください。
編集部
接種後に注意すべき点はありますか?
平石先生
接種後も普段と違うところはないか、しっかり観察してあげてください。子どもは何かあったとしても、適切に訴えることができない場合がほとんどです。不機嫌でぐずぐずしているのが続いている、ずっとぐったりしているなど、保護者の「なんか変だな」という気づきはとても大切です。違和感を覚えたら、かかりつけ医に相談してください。
編集部
予防の観点からは何かありますか?
平石先生
例えば、インフルエンザワクチンなどは、流行する時期がある程度決まっています。ワクチン接種も非常に大事ですが、ワクチンだけで安心せず、「うがい」「手洗い」「マスクの着用」「換気」「人混みを避ける」など、基本的な感染対策は怠らないようにしてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
平石先生
はじめて母子手帳を手にしたとき、子どもに接種を推奨されるワクチンの多さに驚くかもしれません。しかし、赤ちゃんや子どもは、それだけかかる可能性のある病気が多く、重症化すると危険な病気も多いということでもあります。現在はワクチンによって、たくさんの病気から子どもを守れるようになったので、子どもたちが元気で過ごせているのです。また、ワクチンで防げる病気(VPD:Vaccine Preventable Diseases)やワクチンの副反応・スケジュールについて詳しく載っているウェブサイトもあるので、活用してみてください。子どもの将来を守るためにも、ぜひワクチン接種を検討してみてくださいね。
編集部まとめ
今回は、子どものワクチン・予防接種の副反応やリスク、接種時の注意点などについて解説していただきました。一口にワクチンと言っても、その種類は多岐にわたり、副反応の種類やリスクもそれぞれ異なるとのことでした。「メリットとデメリットの両面をきちんと知る」ことで、不安な思いを解消できたらいいですね。
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