タバコに含まれるタールやニコチンの有害性を医師が解説 禁煙のコツやメリットもご紹介
「タバコは体に悪い」と言われても、実際に禁煙できる人は少ないと思います。具体的に「何が、どんな風に体に悪いのか」「どうやったら禁煙を成功させられるか」を、専門家からきちんと説明してもらえたら、モチベーションも少し変わるのではないでしょうか。今回はタバコの有害性を今一度確認するとともに、禁煙の健康効果や禁煙のコツなどについて、「とだ小林医院」の小林隆之先生にお話を伺いました。
監修医師:
小林 隆之(とだ小林医院)
目次 -INDEX-
タバコに含まれる有害成分を医師が解説 タール・ニコチン・一酸化炭素の有害物質・発がん性物質とは
編集部
タバコに含まれる有害物質について教えてください。
小林先生
タバコに含まれる有害物質は、約5000種類と言われています。そのなかでも知っておいてほしいのは、三大有害物質と呼ばれる「タール」「ニコチン」「一酸化炭素」の有害性です。
編集部
それぞれの有害物質について、解説をお願いします。
小林先生
まずタールは、いわゆる「タバコのヤニ」です。正確に言えばタールという物質名があるのではなく、タバコの不完全燃焼によって発生する燃焼副生成物のうち、一酸化炭素やガス状成分を除いた粒子状の成分の総体をタールと呼んでいます。タールには60~70種類の発がん性物質が含まれ、「タール害」などとも呼ばれています。
編集部
ニコチンの有害性はどうでしょうか?
小林先生
タバコの葉に含まれるニコチンには、精神や体に強い依存性があります。喫煙がやめられないのは、「ニコチン依存症」という病気だからです。ニコチンの依存性は麻薬と同程度と言われています。また、ニコチンそのものには発がん性は認められていませんが、ニコチンが分解される際に生み出される「ニトロソアミン類」には発がん性があるとされています。
編集部
最後、一酸化炭素についても教えてください。
小林先生
一酸化炭素自体は無味・無臭の気体ですが、「一酸化炭素中毒」という言葉のとおり、非常に毒性の強いガスです。普段は酸素を全身に運搬するために使われる「ヘモグロビン」と強く結合してしまうため、体内の酸素欠乏を引き起こします。
タバコのタールやニコチンが体に及ぼす悪影響 低タール・低ニコチンのタバコなら害はない?
編集部
やはり、それぞれに悪影響があるのですね。
小林先生
そうですね。「タバコは体に良くない」と一言に言っても、「発がん性」「依存性」「中毒性」と、様々な側面から身体に悪影響を及ぼすことがわかると思います。
編集部
最近は「低タール・低ニコチン」のタバコもたくさん出ています。少しは健康的になりますか?
小林先生
たしかに、低ニコチン・低タールのタバコに変えることで、悪影響をある程度小さくすることができると思う人は多いかもしれません。しかし、低タール・低ニコチンであっても、タバコが健康に悪影響であることには変わりなく、肺がんや心筋梗塞、狭心症などのリスクは非喫煙者に比べるとまだまだ高いと言えるでしょう。
編集部
そうなのですね……。
小林先生
はい。さらに「軽すぎて満足感が得られない」「低タール・低ニコチンだからちょっと安心」といった理由から、吸う本数が増えてしまうケースもあるので注意が必要です。
編集部
やはり、「節煙」ではなく「禁煙」が最も効果的なのですね。
小林先生
そのとおりです。タバコは喫煙者本人だけでなく、周りの人への「受動喫煙(副流煙)」の悪影響も報告されています。さらに、喫煙期間が長くなればなるほど、経済的損失も大きいので、やはり節煙ではなく禁煙をおすすめしたいですね。
タバコをやめれば発がんリスクが下がって健康になる?禁煙の効果や医師おすすめの禁煙方法
編集部
では、禁煙すると健康になるのでしょうか?
小林先生
そうですね。「SGR」と呼ばれるアメリカの公衆衛生長官の報告書では、「禁煙は性別・年齢・喫煙による病気の有無を問わず、全ての人々に大きく、かつ迅速な健康改善をもたらす」と報告しています。この報告書のほかにも、世界中で様々な研究データが禁煙の健康効果を示しています。
編集部
例えば、禁煙にはどのような効果があるのでしょうか?
小林先生
※厚生労働省 e-ヘルスネット「禁煙の効果」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-08-001.html#:~:text
編集部
禁煙のコツはありますか?
小林先生
禁煙後2~3日は、ニコチンの離脱症状(禁断症状)が最も強く出ます。そのため、禁煙を開始して3カ月くらいは、「できる限り喫煙者と会う予定を入れないようにする」「周りの人にも禁煙を宣言して協力してもらう」などを心がけることで禁煙に近づけると思います。
編集部
ほかにもあれば教えてください。
小林先生
禁煙の経済的なメリットは、モチベーションにつながる人が多いようです。仮に1日1箱タバコを吸う人が禁煙すると、1年で20万円ほどの節約になります。これを10年続けると、車が買える金額が節約できますよね。ほかには、禁煙外来などを利用するのもおすすめです。医師のサポートを受けながら、パッチや飲み薬などを使って禁断症状を和らげます。一定の基準を満たせば保険が適用されますので、まずはお近くの禁煙外来をおこなっている医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小林先生
喫煙によるメリットは一切ないです。その一方で、ご自身や周囲の人たちの健康への悪影響、経済的負担などのデメリットはたくさんあります。また、妊娠中・子育て中の人は、赤ちゃんやお子さんの健康や発達への悪影響があります。喫煙者はタバコを吸うと集中力が上がると思いがちですが、それはニコチン依存症による錯覚にすぎません。禁煙ができないのは、ご自身の意思が弱いからではなく、ニコチン依存症という病気だからです。禁煙をする際には、サポートしてくれる人はたくさんいますので、1人で悩まずお近くの禁煙外来にご相談ください。
編集部まとめ
タバコの有害物質には、「タール」「ニコチン」「一酸化炭素」をはじめとして、たくさんの種類があります。そして、「発がん性」「依存性」「中毒性」など、様々な有害性が報告されています。将来の健康や経済的メリットのためにも、禁煙を強く推奨するとのことでした。また、禁煙できる自信のない人は、ぜひ一度「禁煙外来」を受診されてみてはいかがでしょうか。
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