「椎間板ヘルニア」手術後の生活やリハビリを医師が解説 腰椎手術後のケアや「やってはいけないこと」とは?
腰椎椎間板ヘルニアは発症直後から激しい痛みを生じますが、実際の病変は本当に小さく、ほとんどの場合数mmの傷口から摘出が可能なのだそうです。そこで腰椎椎間板ヘルニアの手術や術後の生活について、整形外科医の出沢明先生(出沢明PEDクリニック 理事長)に話を聞きました。
監修医師:
出沢 明(出沢明PEDクリニック)
目次 -INDEX-
腰椎椎間板ヘルニアとはどんな症状、痛みがあるの? 腰痛以外に足のしびれも出るのはなぜ?
編集部
「腰椎椎間板ヘルニア」とはどんな病気なのですか?
出沢先生
そもそも、ヘルニアの語源はラテン語の「飛び出す」からきています。背骨は「椎骨」という骨が24個連結しているのですが、この椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている「椎間板」が潰れて、「髄核」という部分が外に飛び出してしまい、神経を圧迫するのが椎間板ヘルニアです。
編集部
どんな症状があるのですか?
出沢先生
脊椎には多くの神経があり、飛び出した髄核のせいで炎症が起こると、腰や臀部に激しい痛みが出現し、ひどいときには眠るのも困難となります。
編集部
腰以外に症状が出ることも多いのですか?
出沢先生
そういう方がたくさんいます。腰痛だけではなく、足全体に力が入らなかったり、足先が焼けつくようにしびれたりするなどの症状が起こることもあります。
編集部
なぜ、腰の病気なのに足などに症状が出るのですか?
出沢先生
それは脊椎に通っている神経が原因です。足全体、もしくは足先の運動や感覚を司る神経が腰椎の部分を通っているために、腰の病変で足の症状が出るのです。また、同様の理由から、腰椎椎間板ヘルニアによって、失禁などの排尿障害が出ることもあります。
腰椎椎間板ヘルニアの治療 早く治すには手術が必要? 椎間板ヘルニアの手術にはどんな方法・種類がある?
編集部
腰椎椎間板ヘルニアの治療にはどんなものがありますか?
出沢先生
大きく分けて、「保存療法」と「手術療法」があります。飛び出したヘルニアは、体内の免疫作用によって小さくなったり、自然と消失したりすることもあるため、まずは保存療法で様子をみます。鎮痛剤などの薬物療法やブロック注射、脊柱の周りの筋肉を強化する運動療法(リハビリテーション)などは代表的な保存療法です。それでも改善が見られなければ、手術を検討します。
編集部
手術になるケースは多いのですか?
出沢先生
ヘルニアを発症すると、激しい痛みを伴うため、必ず手術をしなければならないと思う方もいるようです。しかし、特に最近では「ヘルニアは自然治癒する」という認識も広まってきており、実際に手術まで至るケースは著しく減っています。正確なデータはありませんが、手術になるのはヘルニア発症者の数%とも言われることもあります。不必要な手術をしないよう患者さんの生活習慣や、検査などによって得られた情報を総合的に分析したうえで、手術をするかどうか、するのであればどんな術式がベストかなどの検討をしていきます。
編集部
腰椎椎間板ヘルニアの術式について教えてください。
出沢先生
腰椎椎間板ヘルニアの手術は、主に「ヘルニアの飛び出た髄核部分に薬剤を注入し、圧力を減らす方法」と「飛び出た部分を直接切除する方法」とに分かれます。直接切除すると言っても、最近は内視鏡を使って腰椎椎間板ヘルニアを摘出する術式がほとんどで、手術の侵襲も少なくなっています。中でも特に効果が高いのは、「MED(メド/内視鏡下椎間板摘出術)」「FEL(フェル/全内視鏡下椎弓切除術)」「FED(フェド/全内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)」などで、特にFEDの場合は局所麻酔での手術のため、患者さんの身体への負担も少なくなっています。
編集部
最も負担の少ない「FED」とはどんな手術なのですか?
出沢先生
FEDは、椎骨の隙間から極細の内視鏡を入れて、飛び出た部分を切除します。骨を削ったり、筋肉を剥がしたりしないので、入院期間は1泊2日、場合によっては日帰りで手術も可能です。FEDは一刻も早い社会復帰を望まれる方に適した治療法といえます。 基本的には手術の当日または前日に入院していただき、手術当日は注射や点滴などの事前準備を行ったあと、手術となります。
腰椎椎間板ヘルニアの手術後のリハビリやケアは何をする? 術後にやってはいけないこと、運動再開時期も教えて
編集部
手術後に動作の制限などはありますか?
出沢先生
早い復帰に適したFEDなら手術を終えた数時間後から、コルセットをつけて歩くことができます。コルセットは動くときに着用していただきますが、横になっている時は着用しなくても構いません。術後10日~2週間程度は、腰をねじったり、かがんだりする姿勢を避けていただいています。術後2週間後頃から学校や職場に復帰することもできますが、特に座っている時間の長い方などは、1時間ごとに必ず立って腰を伸ばしたり、步いたりしてから、また座るようにして腰椎への負担を減らしてもらうことも必要になります。
編集部
仕事復帰や運動再開の時期はどうですか?
出沢先生
当院の場合、デスクワークでしたら術後10日~2週間を過ぎたあたりから可能です。さらに、術後の外来で、レントゲン検査、MRI検査などで椎間板の状態を確認した上で、問題なければスポーツなども再開していただけます。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
出沢先生
これまでに診てきた傾向として、体幹の弱い方がヘルニアになるケースが多いと感じています。体幹が弱いことでヘルニアを引き起こしている方は、ヘルニアだけでなく「腰部脊柱管狭窄症」も併発しやすく、これらを併発した「ヘルニア狭窄」の方が、最近特に多く見受けられます。「ヘルニア狭窄」となった場合には、どちらの治療を優先し、どの治療を選択するのかなど、的確な診断・治療が重要となってきます。腰椎の不調で医療機関にかかることがあれば、ぜひ、腰椎を専門にやっている医療機関を選択していただけたらと思います。また、普段から意識して体幹を鍛えておいていただきたいと思います。
編集部まとめ
自然治癒するケースもあることや、手術自体も、低侵襲で回復の早いものがあるということ、さらに、ヘルニアと狭窄症を併発するケースが最近増えていることなどを知りました。自分に合った治療を選択するためにも「腰椎の専門医」に相談することが大切なのですね。
医院情報
所在地 | 〒214-0014 神奈川県川崎市多摩区登戸2141 |
アクセス | 小田急電鉄小田原線「向ヶ丘遊園駅」 徒歩3分 JR・小田急「登戸駅」 徒歩7分 |
診療科目 | 整形外科、リハビリテーション科 |