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「介護費用の目安」を介護福祉士に聞く 月額の平均費用から負担を軽くする制度まで解説

 公開日:2023/06/20
介護費用の目安を介護福祉士に聞く 月額の平均費用から負担を軽くする制度まで解説

介護が必要になったら介護保険サービスを使う機会が多くなると思いますが、いったい介護には月々どれくらいのお金が必要なのでしょうか。大切なお金のことはしっかり理解しておきたいですよね。そこで今回は、介護に月々どれくらいのお金がかかるのか、お金の負担を減らすための制度はないのかについて、介護福祉士の寺田さんに解説していただきました。

寺田 英史

監修介護福祉士
寺田 英史(介護福祉士)

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2003年より介護業界に従事。介護福祉士として高齢者の自立と尊厳を守るためのケアに尽力する。2016年より高齢者のQOL向上を目指し介護保険外サービス事業を運営する傍ら、後進の育成のために介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修の講師を務める。

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編集部編集部

一般的に介護にかかる年数は平均でどれくらいなのでしょうか?

寺田 英史さん寺田さん

介護が必要になった時の年齢や、介護が必要になった原因にもよりますが、要介護者の介護をおこなった期間は平均で約5年1ヵ月です。最も多く見られたのが4~10年の31.5%ですが、10年以上介護をおこなった方も17.6%います。介護生活はいつ終わるのかがまったく不透明なまま進みますので、それが介護者の心身の負担にも繋がりやすくなっています。

編集部編集部

在宅での介護には月平均どのくらいの費用がかかりますか?

寺田 英史さん寺田さん

公益財団法人生命保険文化センターがおこなった2021年の「生命保険に関する全国実態調査」によると、在宅介護の場合は平均4万8000円かかっています。それ以外にも、在宅介護を開始しようとする場合のベッドや住宅の改造にかかる費用が平均で74万円かかっています。平均4万8000円の費用には、介護保険サービス以外にも紙おむつ代などの介護に必要な費用が含まれていますが、そこにさらにトロミ剤や介護食なども必要になると費用はさらにかかってくるものと思われます。

※参照:公益財団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/research/report/zenkokujittai.html

編集部編集部

では、介護施設に入所された場合の費用は月平均でどれくらいかかるのでしょうか?

寺田 英史さん寺田さん

これもまた先述した調査によりますと、施設介護の場合は平均12万2000円かかっています。しかし、これはあくまでも平均です。介護施設と一言で言っても介護施設には特別養護老人ホームや老人保健施設、介護医療院といった施設系サービス以外にも有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの施設もあり、入所する介護施設の種類によって料金には差が生じます。費用の中には介護保険サービス以外にも居住費や食費が含まれていると思われますが、こちらもやはり要介護者の状態により費用は変動が大きいでしょう。

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編集部編集部

介護保険サービスを利用する費用はどれくらいかかりますか?

寺田 英史さん寺田さん

介護保険サービスはデイサービスやホームヘルパーといった在宅介護サービス、特別養護老人ホームなどの施設介護サービスで料金が変わります。介護保険制度では利用料の1~3割を自己負担金として、サービスの利用者が事業所に支払います。自己負担額を月の平均で見るとデイサービスで約9500円、訪問介護で約8500円、特別養護老人ホームで約2万9800円が目安です。

※参照:厚生労働省「令和3年度 介護給付費等実態統計の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/21/dl/11.pdf

編集部編集部

自己負担金は誰が払うのでしょうか?

寺田 英史さん寺田さん

明確な決まりはありませんが、一般的にサービスを利用されたご本人が支払います。親の介護でかかったお金はなるべく親のお金で支払うのが理想ですが、収入が少ない場合などは子が支払うこともあります。

編集部編集部

介護にかかる費用は人によって違うのでしょうか?

寺田 英史さん寺田さん

生活に必要な費用は生活環境によって異なるため一概に言えませんが、介護サービスの料金は要介護度や要支援によって金額が変わります。デイサービスの利用に必要な費用を要介護度1と要介護度5で比較すると、7時間~8時間利用で要介護度1が約6550円、要介護度5が約1万1420円の利用料で、この費用から自己負担金として1~3割を支払います。

編集部編集部

訪問介護の場合でも、要介護度によって費用が変わるのですか?

寺田 英史さん寺田さん

訪問介護の場合は要介護度によっての費用の違いはありませんが、サービス提供時間が長くなるほど高額になるほか、家事などのサービスを提供する「生活援助」であるか、入浴や排泄をケアする「身体介護」であるかで金額が変わり、身体介護の方が高額になります。要介護度が高くなるほど身体介護を要するケースが増えますので、やはり要介護度が高くなるほど介護にかかる費用は多く必要になるといえます。

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編集部編集部

少しでも介護費用を抑えたい場合はどうすればいいのでしょうか?

寺田 英史さん寺田さん

介護費用を抑えるためには、極力介護保険サービスに頼らないことが大切です。介護が必要な状態でも要介護者自身の望む日常生活を続けていけるように、自分ではできないところだけ、もしくは介護サービスを使うことでより日常生活が豊かになるよう必要なサービスを必要な分だけ利用することが望ましいでしょう。要介護者自身にできることは自分でやってもらうといった自助努力が重要です。

編集部編集部

介護費用を抑えるために役立つ介護保険制度はありますか?

寺田 英史さん寺田さん

介護施設やショートステイなどでしたら、所得に応じて食事代や部屋代の減免が受けられる「特定入所者介護サービス費」、住宅を改装するならば要介護者一人につき最大20万円まで介護保険の対象となる「住宅改修」、介護保険サービスを使いすぎた際に上限が設けられている「高額介護サービス費」、その他、自治体によって異なりますが日常的に紙おむつを使用される方におむつ代の補助などが利用できます。

編集部編集部

ほかに、介護費用を抑えるための制度があれば教えてください。

寺田 英史さん寺田さん

所得控除、障害者控除、生活保護制度、家族と同居している場合は世帯分離などの方法があります。所得控除や障害者控除は介護費用を直接抑えられるわけではありませんが、介護が必要な高齢者や障害者が家族にいる場合、確定申告の際に控除を受けることができ、間接的にお金の負担を減らすことができます。世帯分離はその逆で、要介護者と世帯を切り離すことで要介護者の所得を下げ保険料などの税金を安く抑えることに役立ちます。生活保護制度は日本国憲法25条の「生存権」によって保障されている「健康で文化的な最低限度の生活を送る権利」を守るための制度です。生活保護の受給者は介護保険サービスの自己負担分は介護扶助として支払いが免除されます。どうしても介護のお金が苦しい場合は市区町村に相談してみましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

寺田 英史さん寺田さん

大切な家族にはいつまでも長生きしてもらいたいと考えますが、いつまで続くか分からない介護には思った以上にお金がかかります。なるべく介護が必要にならないように健康を維持することが最も重要です。もしも介護が必要になったらどれくらいの費用がかかるのかを把握し、負担なく介護生活を続けていけるようしっかり検討しましょう。

編集部まとめ

介護費用は月平均で在宅介護なら約4万8000円、施設介護では約12万2000円かかること、要介護度が高くなるほど介護費用はかかることが分かりました。大切な家族の介護のことだからこそ、介護保険サービスやその他の制度を有効に活用しお金の負担を減らすことも考えていく必要があります。介護に関するお金の悩みはお住いの市区町村に相談してみましょう。

この記事の監修介護福祉士