要介護認定を受けたらどんなサービスが使えるの?
昨今、高齢者人口の増加が加速する中、要介護状態と認められる人は、毎年約20万人弱増え続けています。今回は要介護認定を受けた場合、その人らしく生活していく為にどのようなサービスが受けられるのか、「介護福祉士」の西原さんに話を伺いました。
監修:
西原 裕貴(介護福祉士)
西九州大学健康福祉学部社会福祉学科介護福祉専攻卒業。介護福祉士。社会福祉法人にて老人福祉施設や通所介護、障がい者就労継続支援A型などにおいて介護職や支援員に従事。5年で管理職昇格後は新規事業立ち上げや事業企画・採用・広報など現場と兼務しながらマネジメント領域に従事。退職後はフリーランスとして営業職などを経験し、現在は株式会社いきいきらいふの社長室マネージャーとして、採用責任者や事業・研究開発などを推進。
そもそも介護が必要になる「要介護状態」ってどんな状態なの?
編集部
まず、介護が必要になる「要介護」状態ではどのような影響が予測されるのでしょうか?
西原さん
要介護者や家族からは、「大きな病気になって、急に『介護が必要になります』と言われても何をしたらよいか全くわからない」という話をよく聞きます。その言葉からは、本人も家族も「介護」について何も準備できていない中で肉体的、精神的、経済的負担が一気にのしかかっている状態だと想像します。
編集部
具体的な生活への影響はどうでしょうか?
西原さん
介護が必要になった場合、ご飯を食べたり、歩いたり、お風呂に入ったり、買い物に行ったりという生活のあらゆる場面において、一人で当たり前に出来ていたことがスムーズに出来なくなります。そのため表面的に見える「できないことが増える」ことはもとより、「自分が思うようにできないことが増える」という要介護者の精神的な負担が大きいことが予想されます。
編集部
家族はどのような点に注意して要介護者と接すればいいのでしょうか?
西原さん
要介護状態になった方の著しい機能の回復や元々の状態に戻るのは難しいことが多いため「残存している部分」に着目した接し方が重要になります。残された機能に対して「昨日よりトイレ動作が上手にできた」「移乗するときに踏ん張りがきくようになった」など、小さな改善点を見つけ、一つひとつの喜びを共有してください。後ろ向きなことが多い介護場面ですが、こうした小さな喜びの積み重ねが、精神状態の安定にもつながります。
要介護認定を受けることでプロが味方に!
編集部
介護が必要だと感じたら、まずどんなことをしたらいいのでしょうか?
西原さん
まずは要介護認定を受けて「介護給付」を受ける準備をする必要があります。要介護認定を受ける手続きは、お住まいの役所の窓口で要介護認定の申請をします。申請後は市区町村職員などから訪問にて聞き取り調査(認定調査)が行われ、その後、様々な審査を経て要介護度が決定されます。
編集部
実際に認定を受けた後は、どのようにサービスを依頼すればいいのでしょうか?
西原さん
要介護認定を受けたら、どのようなサービスが要介護者や支える家族にとって必要なのか整理しなければなりません。認定を受けた時点から、居宅介護支援事業所に所属する「介護支援専門員」で、通称ケアマネジャーと呼ばれるスタッフに相談できるようになります。このケアマネジャーは、いわば「介護が必要になった方の生活をマネジメントするプロ」で介護職のエキスパートになります。
編集部
ケアマネジャーへの依頼にも費用はかかるのでしょうか?
西原さん
この居宅介護支援における費用は全額介護給付から支払われるので、費用負担はありません。生活におけるあらゆる課題を整理して、必要なサービスや制度、社会機能と結びつけてアドバイスをしてくれます。
要介護認定を受けることで、安心できる暮らしが維持できる!
編集部
実際に生活をサポートしてくれるサービスにはどのようなものがあるのでしょうか?
西原さん
自宅に伺ってサービスを提供する「訪問型」と介護スタッフのいる事業所に通ってサービスを受ける「通所型」の二つがあります。食事、入浴、排泄、掃除、洗濯、買い物など、生活のあらゆる場面でサポートしてくれます。
編集部
「訪問型」のサービスについて具体的に教えてください。
西原さん
訪問型介護は、介護士が自宅に訪問して身体介護などの介助や掃除、買い物などを行います。そのほかにも、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリなどのサービスがあります。
編集部
「通所型」のサービスについても具体的に教えてください。
西原さん
通所型介護は事業所で入浴や食事、リハビリ、ほかにも普段の生活に楽しみを持てるようなレクリエーションなどのサービスが受けられます。また、「リハビリだけ」など目的に合わせて通う通所リハビリや、家族が一次的に不在になる際に泊まれる短期入所(ショートステイ)など、本人の状態やそれぞれの家庭の事情に合わせて依頼できる多様なサービスがあります。
編集部まとめ
介護が必要になってからではなく、事前に要介護認定の申請方法や介護サービスについて知り、起こり得る介護生活の準備をしておく必要がありそうです。こうしたサービス制度を理解しておくことが、要介護状態となった後も余裕をもって安心して暮らすことの土台ともいえます。