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最期の「看取り」 医師が体調の変化と経過に伴う家族の心構えについて解説

 更新日:2024/02/05
最期の「看取り」 医師が体調の変化と経過に伴う家族の心構えについて解説

高齢化に伴い、自宅での看取りを希望する高齢者が増えています。また、「自宅で看取りたい」と考える家族も多いでしょう。しかし慣れないケアに家族の不安は大きいもの。看取りに際し、家族はどんな心構えをしておくべきなのか、しろひげ在宅診療所の山中先生に話を聞きました。

山中 光茂

監修医師
山中 光茂(しろひげ在宅診療所)

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慶應義塾大学法学部法律学科・群馬大学医学部医学科卒業。世界の各地で孤児支援や医療支援をおこなった後の2009年、三重県松阪市長に就任。任期後は「看取り」までケアする在宅医療に従事。2019年、東京都江戸川区に「しろひげ在宅診療所」を開院。地域づくりや地域包括ケアなどを手掛けている。

在宅での看取りのメリット

在宅での看取りのメリット

編集部編集部

在宅での看取りのメリットはなんですか?

山中 光茂先生山中先生

質の高い在宅診療と訪問介護が連携をすることで、たとえ「重症度が高い方でもご自宅でご家族と一緒に最後まで過ごせる」ということです。特にコロナ禍においては、病院や施設では十分に面会できないこともありました。しかし、在宅での看取りならそうしたことはありません。患者さんが住み慣れた環境で、安心して最期の時を迎えられます。

編集部編集部

ほかにメリットはありますか?

山中 光茂先生山中先生

患者さんのストレスを軽減できるというのも在宅での看取りのメリットです。病院に入院して行う治療では、大人数で一部屋だったり、食事内容が制限されていたり、行動範囲が定められていたりして、思い通りに動くことができません。また、施設のルールに基づいたり、治療行為の選択が制限されたりすることもあります。しかし、ご自宅ならそうした制限がないのでストレスを大きく減らすことができます。

編集部編集部

さまざまなメリットがあるのですね。

山中 光茂先生山中先生

ほかにも、24時間365日、医師や看護師が病状に応じてサポートできるというのもメリットです。病院や施設では夜間や休日などの場合、普段の担当医と連携が取れないこともありますが、在宅での看取りなら自宅にいながら専門性の高い医療を受けることができます。

編集部編集部

患者の家族側のメリットもありますか?

山中 光茂先生山中先生

在宅での看取りでは、訪問診療を行ってくれるかかりつけ医が必要なので、患者さんが医師のもとへ出向く必要がありません。そのため、これまで患者さんが通院するときご家族が付き添っていたのであれば、その負担を軽減することもできます。また、訪問リハビリテーションや訪問薬剤指導などのサービスも受けることができます。つまり、医療環境や介護環境を整えることでご家族の負担を減らすことができるのです。

在宅での看取りのデメリットと注意点

在宅での看取りのデメリットと注意点

編集部編集部

反対に、在宅での看取りにはどのようなデメリットがありますか?

山中 光茂先生山中先生

介護保険の制度などを活用しなければ、家族の負荷が増えるということが挙げられます。患者さんが体を自由に動かすことが難しければ、排泄や入浴、食事など、1日に何度もお世話をすることが必要になります。ただし、介護保険などを利用して、在宅での介護サービスを活用すれば、家族の負荷を大きく軽減することができ、むしろ、通院よりも負担は少なくなると思います。

編集部編集部

ほかには、どんなデメリットがありますか?

山中 光茂先生山中先生

外来診療と比べると、費用が高いということも在宅での看取りのデメリットと言えるかもしれません。入院と比べれば訪問診療は費用を抑えることができますが、外来診療と比べると訪問診療を依頼したり、訪問介護を利用したり、家族の負担を減らすためにさまざまなサポートを活用したりすれば、経済的な負担が増えることもあります。

編集部編集部

在宅での看取りをする場合、家族はどんなことに不安や悩みを感じることが多いのでしょうか?

山中 光茂先生山中先生

ご家族にとって一番の不安は、「患者さんの苦しみに対して、緩和が不十分なのではないか」と考えてしまいがちなことです。そのため、医療や介護の適切なサポートによって患者さんの身体的・精神的な苦しみを緩和することができれば、ご家族の不安感も軽減されます。そのためにも、質の高い医療介護体制を整えることがとても大切です。不明なことはケアマネージャーに相談しながら、納得いく看取りを実現するために、しっかり医療介護体制を整えるようにしましょう。

編集部編集部

患者の急激な変化に対して、家族が不安を抱くことも多いと思います。そうした不安に対して、家族はどのように対処すれば良いのでしょうか?

山中 光茂先生山中先生

確かに「先週できたことが、突然できなくなる」など、急激な変化が起こるとご家族は不安を感じるものです。そういうときには、訪問医や訪問看護師、訪問介護士などに相談すると良いと思います。特に医師は、患者さんの容態からこの先どうなっていくかなどをある程度予測することができるので、「これから患者さんの容態はこう変わっていきますよ」「こういう点をケアしてあげてください」などのアドバイスが可能です。

編集部編集部

死に近づいていく様子を間近で見るのは確かに不安も大きいと思います。

山中 光茂先生山中先生

最近では高齢化の影響から、自宅での看取りを希望する人が増えました。その一方、ご家族を看取ることに対して不安を感じる人も少なくありません。病状や家庭環境などにより対処法が異なるため一概には言えませんが、まずは自分ひとりで抱え込まず、医療職や介護職の人たちに相談しながら、どう対処すべきか講じることが大切です。「ヘルパーさんに来てもらう回数を増やす」「往診の回数を増やす」など、臨機応変に対応していくことが、不安の解消に役立つと思います。

「在宅で看取る」家族にとって必要な心構えとは?

「在宅で看取る」家族にとって必要な心構えとは?

編集部編集部

在宅で看取ると決めたとき、家族はどんな心構えをしておけば良いでしょうか?

山中 光茂先生山中先生

私が普段ご家族にお話ししているのは、「ご家族は愛情をしっかり注ぐだけで、何もやらなくていい」ということ。「何かをしてあげなくてはならない」と考える必要はありませんし、ご家族のなかで介護に関わらない人を責める必要もありません。ご家族は介護に対して負担を感じることなく、介護や医療は専門職に任せ、ただ愛情を注ぐことを意識するだけで十分です。

編集部編集部

家族は介護や医療に関わらなくてもいい、ということでしょうか?

山中 光茂先生山中先生

専門的なことは、専門職に任せておくことでご家族の身体的・心理的な負担は軽減できます。ただし、なにかあったときに情報の窓口となるようなキーパーソンを決めておくことは大切です。

編集部編集部

在宅での看取りにあたり、心がけることはありますか?

山中 光茂先生山中先生

患者さんの状態が変化する中で、患者さんやご家族の思いも変わっていきます。「やはり病院へ戻りたい」「施設に入所したい」「一時的に入院して治療を受けてほしい」など、気持ちは刻々と変わるものです。そうした要望は率直に主治医や介護職の人たちに伝え、柔軟な意思形成を心がけましょう。患者さんの思いを聞きつつ、ご家族の気持ちも大事にしながら、医療関係者や介護関係者と相談して意思決定をしてほしいと思います。

編集部編集部

後悔のない看取りをするため、家族がすべきことはありますか?

山中 光茂先生山中先生

入院や通院をしていた医療機関の医師から話を聞いておきましょう。正しく病状を把握し、残された時間を確認しておかないと、「抗がん剤を使う必要がないのに使ってしまい、患者さんに余計な負担を与えてしまった」「あと数日の命なのに救急搬送して最後の時間を一緒に過ごせなくなってしまった」など、不必要な医療を行ってしまうこともあります。信頼できる介護職や医療職と協力し合い、家族と共に自宅で最後の時間を過ごすことを第一に考えて、後悔のない看取りを叶えてほしいと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

山中 光茂先生山中先生

私は病院での看取りや在宅診療での看取りを多く経験するなかで、慣れ親しんだ自宅で最後の時間を過ごせる在宅での看取りは、患者さんにもご家族にも笑顔があふれることが多いと言うことを実感しています。亡くなったあと、その場でご家族による写真撮影が行われたり、「よかったね」と笑顔でご家族が声をかけあったり……。それが病院での看取りと大きく違う点だと思います。たとえ一人暮らしの方でも、関係職種と共に、自宅で最後の時間を過ごすことができます。ご自宅で自分らしく最後まで過ごせたという幸せは、何事にも代え難いもの。ぜひ在宅での看取りを選択する場合には、信頼できる在宅医や介護職と連携しながら、人生の最期の瞬間まで、笑顔があふれる幸せな時間を過ごしてほしいと思います。

編集部まとめ

在宅で看取る場合、「家族には愛情しかいらない、あとは専門職に任せておけばいい」という考えを持つことは、介護や看護の疲れから家族を解放する大きなヒントになりそうです。ぜひそうした心持ちで、患者も家族も笑顔になる在宅での看取りを実現したいですね。

医院情報

しろひげ在宅診療所

しろひげ在宅診療所
所在地 〒132-0014 東京都江⼾川区東瑞江3-55-11
アクセス 都営新宿線「瑞江駅」 徒歩5分
診療科目 在宅医療

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