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「椎間板ヘルニア」の原因・症状を医師が解説 自然治癒する? 治療が必要?

 更新日:2023/05/22
「椎間板ヘルニア」の原因・症状を医師が解説 自然治癒で治る? 治療が必要?

現代社会において、「椎間板ヘルニア」の痛みに悩まされている人は非常に多いと言われています。人によっては非常に強い痛みがあるため「自然治癒する」と言われてもピンとこないかもしれませんが、自然に改善するケースもあるそうです。今回は、椎間板ヘルニアが自然治癒するのか、それとも治療が必要なのか、「ILC国際腰痛クリニック東京」の簑輪先生に答えていただきました。

簑輪 忠明

監修医師
簑輪 忠明(ILC国際腰痛クリニック東京)

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日本医科大学医学部卒業。その後、日本医科大学付属病院、博慈会記念総合病院、江東病院などに勤務。2022年、東京都港区に位置する「ILC国際腰痛クリニック東京」の院長に就任。一人ひとりの悩みに寄り添った丁寧な診察と、世界の先進腰痛治療技術を駆使した治療を提供する。日本医師会認定産業医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。日本腰痛学会、日本内視鏡外科学会の各会員。

腰や首の病気 椎間板ヘルニアとは? 原因・症状を医師が解説

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編集部編集部

椎間板ヘルニアとは、どんな疾患ですか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

背骨、つまり「椎骨」同士の間には、クッションの役割をしている「椎間板」という軟部組織があります。その椎間板が何らかの要因で老化・変性したために、破れて中身が飛び出した状態が「椎間板ヘルニア」です。

編集部編集部

「ヘルニア」というと、腰の病気というイメージがありました。

簑輪 忠明先生簑輪先生

たしかにそうかもしれませんね。最も多いのは腰、つまり「腰椎椎間板ヘルニア」です。それ以外の部位だと、頸椎や胸椎などにも起こります。

編集部編集部

どんな症状が出るのですか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

腰椎椎間板ヘルニアの場合、初期症状としては腰痛がほとんどです。椎間板がはみ出した箇所によって症状の出る部位は異なりますが、さらに進行すると主にすねや足などの痛み・しびれ、動かしにくさ、脱力感といった症状が出てきます。

編集部編集部

原因はなんですか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

椎間板の変性は加齢が原因であることが多いですね。その一方、若い人にも多くみられ、前かがみや中腰姿勢を長時間続けていたり、重たいものを持ち上げたりする動作など、腰に負担のかかる生活動作を繰り返すことで発症するとされています。ただし、このような動作を繰り返している人でも発症しやすい人としにくい人がいます。元々その人が持っている体質や骨格などの要素も関係していると言われています。

腰痛を引き起こす椎間板ヘルニアは自然治癒することもある? 手術なしの場合どれくらいの期間で治る?

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編集部編集部

椎間板ヘルニアは自然治癒することがあるのでしょうか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

椎間板ヘルニアには、急激に発症する急性タイプと、少しずつ進行して発症する慢性タイプがあります。「いきなり重いものを持って発症した」などの急性タイプの場合は、安静にしていれば症状は徐々に治ることが多いでしょう。

編集部編集部

放置していても、治る場合があるのですか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

「治る」という表現が適切かどうかわからないのですが、症状が改善するケースはもちろんあります。ただし、椎間板ヘルニアは、症状と画像所見が一致しないケースも多く、症状が治まったからといって、必ずしもはみ出た椎間板が戻っているとは言えないので注意が必要です。また、「放置していても」と言っても、全く何もしないというわけではなく、必要に応じて痛み止めなどの薬物療法やコルセットなどの装具療法、筋トレやストレッチなどの運動療法などが必要な場合もあります。

編集部編集部

筋トレで治る場合もあるのですか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

そうですね。筋肉を鍛えることでコルセットのように腰椎を守ってくれて、症状の改善が期待できます。ただし、筋肉をつけるのはある程度の期間を要するので、適度な負荷でコツコツと継続することが重要です。

編集部編集部

椎間板ヘルニアはどのくらいの期間で治るのでしょうか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

治る期間については様々な報告があります。2~3カ月というものもあれば、半年というものもあり、個人差が大きいと考えられています。さらには、安静にしたり、適切なリハビリテーションなどを長期間おこなったりしても、症状がなくならずに慢性化する人もいます。

椎間板ヘルニアで病院の治療が必要なケースとは? 治療法や再発を防ぐ方法を解説

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編集部編集部

では、手術治療が必要なのはどんなケースでしょうか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

数カ月経っても症状が改善しない場合や、逆に症状が悪化していく場合は、治療が必要です。また、何カ月も経過観察できないほど、すでに日常生活に制限が出てしまった場合なども手術治療の対象となります。

編集部編集部

どのような手術をおこなうのでしょうか?

簑輪 忠明先生簑輪先生

飛び出した椎間板を取り除く手術が一般的です。最近は、内視鏡や顕微鏡を用いることで、傷を最小限に抑えて手術ができるようになってきています。また、日本ではまだ保険適用外ですが、老化した椎間板を修復させる「セルゲル法」という、老化・損傷した椎間板に特殊なジェルを注入する治療法もあります。このジェルは、椎間板の損傷した部分に入り込み一生残ります。飛び出した椎間板を取り除く治療は、残った椎間板の変性を治療するわけではないので再発する場合も多いのですが、セルゲル法は椎間板自体を修復するので、基本的に再発することはありません。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

簑輪 忠明先生簑輪先生

腰痛やそれに伴う様々な症状は、生活の質(QOL)を大きく下げます。自然治癒や手術治療で改善すればそれに越したことはないですが、根本治療には至っていない可能性もあります。そして、何かの拍子にまた痛み出すなど、慢性化している人も多くいらっしゃいます。「なんとなく、症状が我慢できるくらいにはなったけれど、まだスッキリはしていない」と思ったら、腰痛を専門としている医療機関で一度相談してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

椎間板ヘルニアの自然治癒や治療法について、整形外科医にお話を伺いました。「症状は自然治癒することもあるけれど、画像で診断してみると根本的には治っていない」というケースも多いそうです。慢性化すると生活の質を下げてしまいますので、医療機関を頼って根本的な解決を図りましょう。

医院情報

ILC国際腰痛クリニック東京

ILC国際腰痛クリニック東京
所在地 〒108-0075 東京都港区港南1丁目8−15 Wビル1F
アクセス JR「品川駅」 徒歩7分
診療科目 整形外科

この記事の監修医師