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腰痛の発生メカニズムと予防法を教えて!

 更新日:2023/03/27
腰痛の発生メカニズムと予防法を教えて!

厚生労働省が示す「国民生活基礎調査」によると、日本人が抱える自覚症状で最も多いのは「腰痛」で、日本人の約8割が生涯のうちに一度は腰痛を経験するとも言われています。腰痛と言っても、何となく腰が重く違和感があるレベルの人から、歩行どころか寝返りさえ困難になってしまう人まで様々な症状があります。今回は、「作業療法士」の金城さんに腰痛の発生メカニズムや予防法について詳しく伺いました。

金城亜矢

監修作業療法士
金城 亜矢(作業療法士)

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岡山県立大学大学院修士課程卒業。倉敷市の一般病院で15年間、作業療法士として勤務。うち5年間はリハビリテーション部の課長を務める。精神医学の非常勤講師として、未来のセラピスト教育に携わっている。沖縄へ移住後、作業療法士の経験を生かし、正確な情報をわかりやすく伝えるため、医療系Webライターとして活動中。

腰痛の発生メカニズム

腰痛の発生メカニズム

編集部編集部

なぜ腰痛はおきるのでしょうか?

金城亜矢金城さん

腰痛の原因は「脊椎、神経、内臓、血管、心因性」の5つに大別されます。脊椎が原因の腰痛は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、椎間関節やその周囲の軟部組織が刺激を受けて痛みが生じ、神経が原因の腰痛は脊髄から分岐する神経根と呼ばれる部分がなんらかの刺激を受け、腰痛や下肢痛が生じます。内臓が原因の腰痛は腰や背中付近にある内臓の病気により痛みが生じます。血管が原因の腰痛は動脈瘤や閉塞性動脈硬化症など、血液循環が障害される病気により生じます。また、心因性の腰痛は脊椎、神経、内臓、血管に異常がなく、不安や精神的なストレスによって痛みが引き起こされます。

編集部編集部

原因不明の腰痛って多いのでしょうか?

金城亜矢金城さん

原因が明らかでない腰痛は「非特異的腰痛」と呼ばれ、腰痛全体の70~80%を占めます。つまり、ほとんどの腰痛は原因不明で生じていると言えます。ぎっくり腰などの非特異的急性腰痛は急激に発症し、比較的短期間で痛みが治り、予後が良好であるのが特徴です。

編集部編集部

腰痛になりやすい人にはどんな特徴がありますか?

金城亜矢金城さん

姿勢が「猫背」「反り腰」の人は、腰痛になりやすい傾向にあります。正常な姿勢は、背骨が首から腰にかけてゆるやかにS字カーブを描いています。猫背は頭が前に出て首から肩にかけて丸くカーブした状態、反り腰は体を横から見た時に腰椎がお臍の方へC型にカーブした状態のことを言います。このカーブが強すぎると腰部の筋肉、椎間板に負荷がかかり、腰痛の原因になります。

腰痛のセルフチェックと対処法

腰痛セルフチェックと対処法

編集部編集部

腰痛をセルフチェックする方法はありますか?

金城亜矢金城さん

簡単な腰痛セルフチェック「10秒足踏みテスト」をご紹介します。10秒足踏みテストは、太ももが床と並行になるような足踏みを10秒間行い、その足踏み回数を数えます。平均回数は、20歳代と30歳代では21回、40歳代では20回、50歳代では19回、60歳代では18回、70歳代では17回です。この回数よりも明らかに少ない場合、腰痛発症のリスクがあるといえます。

編集部編集部

腰痛になったら病院に行くべきですか?

金城亜矢金城さん

「腰が痛いくらいで病院に行くべきなのか?」と躊躇する方も多いと思います。基本的には、しびれや麻痺などの神経症状がある、排泄障害がある、腰以外のお尻や脚の痛みがある、安静時痛みがあるの中から、どれか1つでも当てはまる場合は治療が必要であり、病院へ行くことをおすすめします。

編集部編集部

腰痛が治らないことはありますか?

金城亜矢金城さん

腰痛の発症様式は、急性と慢性に分類されます。痛みが3ヶ月以上も続く場合は「慢性腰痛」の可能性があります。急性の場合、90%は6週間以内に回復して自然治癒しますが、2~7%は慢性になると言われています。慢性腰痛は、心理・社会的ストレスの影響が少なくないと言われており、いわゆる心因性の腰痛を示します。痛みがあることが、必ずしも重い障害というわけではありませんが、「痛み」と「ストレス」の悪循環から抜け出せずにいると、慢性腰痛が長引くこととなります。痛みがあっても適度に活動し、それなりに生活を充実させ、ストレスをこまめに解消していくことが、長い目で見ると痛みの軽減につながります。

腰痛にならないための予防法

腰痛にならないための予防法

編集部編集部

腰痛にならないための予防法を教えて下さい。

金城亜矢金城さん

予防法として2つのトレーニング方法をご紹介します。1つ目は腹筋体操です。仰向けになり、顎を引いたまま上半身をゆっくり起こし、45度の位置で5秒間静止し、その後リラックスします。10回を1セットとして1日に2セット行います。2つ目は腰、背中、腹部のストレッチです。仰向けで片ひざを両手で抱え、ゆっくりと深呼吸しながら胸の方へ引き寄せます。10秒間静止し、その後リラックスします。これを左右両ひざ行います。腰痛が強い場合は無理をせず、できる範囲で構いません。

編集部編集部

腰痛ベルトにはどんな効果があるのでしょうか?

金城亜矢金城さん

痛みが強く日常生活に支障がある場合は、腰痛ベルトをつけることで痛みの発生を防いだり、軽減したりすることができます。しかし、腰痛ベルトは体幹筋力を補う役割があるため、装着し続けることで体幹筋の働きが弱くなり、筋力が低下してしまうというデメリットがあります。そのため、腰痛ベルトに依存し過ぎるのではなく、普段から体幹筋力を鍛えることが重要です。

編集部編集部

日常生活で注意すべきことはありますか?

金城亜矢金城さん

日常生活では、日頃の早歩きと活動量の増加、朝食をバランス良く摂る、快適な睡眠の確保という3つが効果的であると言われています。また、柔らかすぎる寝具によって腰痛の痛みが増す例も多いため、ある程度弾力のあるマットレスを使用することをおすすめします。さらに、重いものを運ぶ時は身体の近くで抱えるように持つといった工夫も必要です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

金城亜矢金城さん

腰痛の発生にはさまざまな要因がありますが、意識的に予防することは可能です。まずは、自分の生活習慣や姿勢の見直し、そして体幹と下肢の柔軟性と筋力の向上を意識して腰痛を防ぎましょう。

編集部まとめ

腰痛の発生メカニズムは5つの要因によって異なることがわかりました。腰痛の予防には適度な運動や規則正しい生活を送ること、日ごろからストレスを溜め込まないことなどが大切です。自分の身体の特徴を知り、腰痛予防のために今すぐできることから実践していきましょう。

この記事の監修作業療法士