【親必見】身長を伸ばすために必要なこと 子どもの成長を促す3つの鍵とは
多くの方が一度は“もう少し身長を伸ばしたい”と考えたことがあると思います。身長について知りたいことといえば、「自分はあとどれくらい身長が伸びるのか」「運動や食事で身長を伸ばすことができるのか」「成長期が過ぎてから身長を伸ばすことができるのか」が挙げられるのではないでしょうか。身長を少しでも伸ばしたい方のこういった疑問について、小児整形外科医の中川先生に回答してもらいました。
監修医師:
中川 将吾(つくば公園前ファミリークリニック)
身長は生まれる前から決まっている
編集部
身長ってどうやって決まるのですか?
中川先生
最終的な身長がいくつになるかは、実は「遺伝でほぼ決まっている」と言われています。目標となる身長を予測するには簡単な計算式があり、男児では(父の身長+母の身長+13)÷2、女児では(父の身長+母の身長-13)÷2で計算されます※1。ただし、男児で±9cm,女児 で±8㎝と幅があるので、必ずしもその値で止まるとは限りません。そこには生まれてからの生活習慣も大きく関わっており、兄弟や双子であったとしても身長が異なるのはこのためです。
編集部
どうして身長予測に差が生まれるのですか?
中川先生
遺伝のほかには生活習慣も身長を伸ばすことに関係してきます。適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠などが、身長を伸ばすための基本的な方法として考えられています。特に成長期と呼ばれる年間の身長増加が著しい時期(男児:12〜15歳、女児:10〜13歳)の生活習慣が大きく関わっています。適切な生活習慣を送っていたとしても身長の増加が予測と著しく異なる場合は、なんらかの病気を疑うきっかけになります。
編集部
成長期以降は身長が伸びないのですか?
中川先生
成長期以降は基本的に身長が伸びないと言われています。むしろ縮むことの方が多いですね。身長を決めているのはほとんどが「骨の成長」です。成長期を過ぎることで骨の成長がストップしてしまうので、身長も伸びなくなってしまいます。また、姿勢や食事などの生活習慣、または加齢の影響で、背骨を作っている椎体や、その骨の間にある椎間板の高さが小さくなることで身長が縮んでいくこともあります。
成長期に身長を伸ばしたいなら正しい生活習慣を
編集部
成長期には、どのような運動をすれば身長が伸びるのでしょうか?
中川先生
身長を伸ばすには骨に適度な刺激を加え、かつ全身を大きく動かす運動が良いとされています。例えばバスケットボールやバレーボールなどの全身を使ってジャンプを繰り返す競技は、骨に適度な刺激を与えることで骨密度の増加が起こるとされていたり、成長ホルモンの分泌を促したりすると言われています。そのため、身長の伸びにも良い影響を与えるのではないかと考えられます。ただし、特定の種目をおこなうことが必ずしも身長の増加に結びつくのではなく、適度な骨関節への刺激がおこなえる全身運動によって成長ホルモンの増加を促します。
編集部
おすすめの食事についても教えてください。
中川先生
身長に良い影響を与える栄養素としては、タンパク質やカルシウムなどのミネラルが挙げられます。タンパク質に含まれる元素であるN(窒素)やP(リン)の摂取が多い国の方が、身長の平均値が高いことがわかっています※2。日本は戦後から高度経済成長期を経て食生活が豊かになり、現在まで平均身長が増加してきています。ただし、一部の食品だけを摂れば必ずしも高身長になるかというとそうではなく、やはりバランスの良い食生活を心がけましょう。
編集部
なぜ睡眠も身長に影響が出るのでしょうか?
中川先生
骨の成長は成長ホルモンによってコントロールされています。成長ホルモンは夜寝ているときに活発に放出されるため、睡眠時間が短いことで身長があまり伸びなくなってしまう可能性があります※3。成長期のお子さんについては8〜10時間の睡眠が必要です。しかし、最近の研究では睡眠時間の長さと身長の間には関連性がないことも報告されており※4、最低限の活動に支障がない範囲であれば、それほど睡眠時間を気にする必要はないのかもしれません。
成長期が終わっても身長を伸ばすことはできる? ポイントは「姿勢の矯正」
編集部
成長期が過ぎてしまいました。どうしてももう少し身長が欲しいですがどうにかなりませんか?
中川先生
実は成長期を過ぎたと思っていても身長が伸びることもあります。骨の成長は止まっているため、姿勢や骨の並びで変わってくると考えられます。例えば、猫背やO脚などは、本来の骨の並びから考えると身長が低く評価されることになります。従って、それらの修正ができたならば、身長が増加することに繋がります。姿勢の矯正などをおこなうことで身長が1cmほど伸びることもあります。
編集部
身長を伸ばせる手術があるって聞いたのですが本当なのでしょうか?
中川先生
はい、その通りです。脚延長術と言って、下肢の骨を伸ばすことで10cm以上も身長が伸びる手術をおこなっている病院があります。日本国内でもおこなっていますが、高額な費用がかかるため、わざわざ海外で手術を受ける方もいます。また、身長を伸ばすことが目的ではありませんが、側弯症という背骨が曲がって成長する病気の方は、手術による治療を受けることで身長が伸びてしまうといった効果もあります。
編集部
いまの身長をできるだけ縮めたくありません。
中川先生
加齢とともに身長が縮んでいくことがありますが、これは重力の影響によって骨や関節が小さくなったり、狭くなったりするためです。やはり、適度な運動や食事などの生活習慣に気をつけることで予防することが可能です。大人になったとしても、定期的に身長を測ることで早期発見や予防につながります。
編集部まとめ
参考文献
※1 Ogata T, et al. Clinical Pediatric Endocrinology 2007;16.4: 85-87.
※2 Peñuelas J, et al. Scientific Reports 7.1 (2017): 1-10.
※3 Gulliford MC, et al. Archives of Disease in Childhood 1990;65:119-122.
※4 Knutson KL, American Journal of Human Biology: The Official Journal of the Human Biology Association 17.4 (2005): 418-424.
医院情報
所在地 | 〒300-2654 茨城県つくば市水堀485-1 |
アクセス | つくばエクスプレス 「万博記念公園駅」下車 車5分 |
診療科目 | 小児整形外科、リハビリテーション科 |