眼瞼下垂の再発について医師が解説 眼瞼下垂手術後・2回目の治療はどんな選択肢がある?
まぶたが重く垂れ下がり、目が開きづらくなる「眼瞼下垂」。一度治療をおこなっても、再発してしまう場合もあるそうです。一体、2回目の治療にはどのような選択肢があるのでしょうか。「自由が丘クリニック」の大慈弥(おおじみ)先生に教えていただきました。
監修医師:
大慈弥 裕之(自由が丘クリニック)
目次 -INDEX-
眼瞼下垂は手術後に再発することもある? 再発してしまう原因や後遺症のリスクを医師が解説
編集部
まず、眼瞼下垂について教えてください。
大慈弥先生
簡単に言えば、上まぶたがだんだん下がってきてしまい、視界が狭まる状態のことです。本来、まぶたは筋肉の力によって持ち上げられているのですが、この筋肉の作用が弱まることで眼瞼下垂が生じます。また、まぶたの皮膚がたるむことによっても眼瞼下垂と同じ症状が発症するほか、先天的な眼瞼下垂もあります。
編集部
どのように治療するのですか?
大慈弥先生
基本は手術をおこないます。手術の術式は、上まぶたのたるみの原因が、皮膚にあるのか、あるいは、筋肉に原因があるのかによって異なります。
編集部
具体的な治療法について教えてください。
大慈弥先生
上まぶたを持ち上げる筋肉がゆるんでいる場合は、「挙筋前転術」という治療をおこないます。挙筋前転術は、二重のラインで皮膚を切開し、伸びた筋肉を引っ張り出して瞼板という部位に縫い付けて固定する手術です。
編集部
ほかにも手術の方法はありますか?
大慈弥先生
はい。皮膚のたるみに対しては、「眉毛下皮膚切除」をおこないます。眉毛下皮膚切除は、眉の下の皮膚を切除することで上まぶたのたるみを取り除く方法です。
手術後に眼瞼下垂が再発したときの治療・対策・再手術は1回目とどう違う?
編集部
眼瞼下垂は手術をおこなっても再発しますか?
大慈弥先生
はい。眼瞼下垂の手術後、時間とともに後戻りすることがあります。その場合は再手術をします。
編集部
なぜ、眼瞼下垂が再発してしまうのですか?
大慈弥先生
眼瞼下垂が再発しやすい人には、いくつかの特徴があります。「もともと下垂の程度が強かった人」や「先天的に眼瞼下垂があり、大人になって目立つようになった人」は再発しやすいとされています。逆に「もともと目がパッチリと大きい人」は、手術後にまぶたが上がりすぎて目が閉じにくくなるといったことが起こる場合もあります。
編集部
再手術は一度目の手術とどう違うのですか?
大慈弥先生
基本的には、一度目と同じような手術をおこないます。ただし、難易度は再手術の方が上がります。なぜなら、一度手術をしているので、組織内部が瘢痕(はんこん)と呼ばれる傷跡で覆われていて、本来の正常な組織を見つけるのが難しいからです。また、手術した部分が硬くなったり、出血しやすくなったりしていて、綺麗なまぶたに修正しづらいということも再手術が難しいとされる理由です。
編集部
なるほど、そのような理由で再手術が難しいのですね。
大慈弥先生
はい。瘢痕ができることで、再手術が難しくなります。人によって瘢痕ができやすい人とできにくい人がいますが、一度目の手術のときに出血が多いと瘢痕ができやすくなります。
編集部
再手術の割合は高いのですか?
大慈弥先生
海外の論文では、「眼瞼下垂の手術をした人のうち、約2割の人が予定通りいかなかったと回答している」という報告もあります。日本でも同じような論文が多くあるので、再発や上がりすぎ、見た目の不満足を含めると約1割の患者さんが再手術を受けているのではないかと考えられます。
手術後に眼瞼下垂を再発しないために知っておきたい治療のポイント 修正手術についても教えて
編集部
眼瞼下垂の手術後、再手術をするかどうかはいつ頃見極めればいいのでしょうか?
大慈弥先生
私たちのデータでは、まぶたと眉毛の位置が安定するのは、術後6~9カ月後です。そのため、少なくともその期間はきちんとクリニックに通って経過観察していただきたいです。まぶたが安定した時点で満足のいく結果でなければ、再手術を検討されてもいいのではないでしょうか。
編集部
まぶたのストレッチやトレーニングは効果がありますか?
大慈弥先生
まぶたも骨格筋の1つであり、骨格筋は加齢とともにゆるんだり、衰えてきたりします。そのため、まぶたに限らず、全身の筋肉を健康に保つことが、まぶたの筋肉を鍛えることにつながります。また、上を向く行為は挙筋を鍛えることにつながるので、まぶたの下垂に効果が期待できるのではと思います。それから、ハードコンタクトレンズを使用すると下垂を起こしやすいので、コンタクトレンズを使っている人は気をつけましょう。
編集部
思い通りの仕上がりにならなかったら、修正することもできるのですか?
大慈弥先生
はい。例えば、左右のまぶたの大きさが違ったり、二重の幅が違ったり、まぶたが上がりすぎてしまったりした場合には、修正のための手術をおこなうこともあります。ただし、眼瞼下垂の手術に限りませんが、医療行為には必ずリスクと限界があるので、再手術や修正手術の前には医師としっかり相談してください。「これ以上求めてもリスクが上がるだけなのか」、それとも「手術によって期待している効果が得られそうなのか」など確認することをおすすめします。
編集部
再手術や修正手術にならないように、一度目の手術のときに気をつけるべきことはありますか?
大慈弥先生
担当医から入念にカウンセリングを受けることです。人によって目の形やまぶたの厚みが違いますから、その個人に合わせて術式を決定することが重要です。手術の仕上がりが具体的にイメージできるよう、医師と患者さんで充分に話し合っておきましょう。それから、医師の技術も重要な要素ですから、信頼できる医師を選ぶようにしましょう。
編集部
信頼できる医師を見分けるにはどうしたらいいでしょうか?
大慈弥先生
カウンセリングの際に、できるだけ自分と似たような症例を見せてもらえるところを選ぶといいのではないでしょうか。そのときは症例の年齢にも注意が必要です。20代の眼瞼下垂と60代の眼瞼下垂では、皮膚のたるみや筋肉、脂肪の程度がまったく違います。そのため、豊富な症例を持っていて、リスクや対応についても説明のできる医師を選ぶといいでしょう。その際、できるだけ年齢や症状が自分と似ている症例写真を見せてもらうのがおすすめです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大慈弥先生
まぶたは一人ひとりに適した自然さや美しさがあります。その美しさは、年齢によっても、人種によっても違います。また、治り方もまったく違います。女優さんなどの写真を持参して「この人のようにしてほしい」とリクエストしても、必ずしもそのようになるわけではないことを理解してほしいと思います。また、まぶたは非常に繊細な部位で、1mm~1.5mmのほんのわずかに上がったり下がったりするだけで印象がまったく変わります。そのため、一人ひとりの状態に適した治療をおこなうことが大切です。万が一、術後に問題があった場合は、眼科や形成外科との連携が良好に取れる施設で修復をしてほしいと思います。
編集部まとめ
加齢とともに、多かれ少なかれ誰でもまぶたが下がってくるもの。もし、まぶたが黒目にかかって見にくいといった問題があれば、眼瞼下垂の手術を検討してもいいと思います。結果、視野が改善するだけでなく、見た目が改善することもできます。ただし、そもそも眼瞼下垂の手術には合併症のリスクが多く、1割ほどは再手術になる可能性もあるということを事前に理解しておきましょう。そして、再手術を避けるためには、多くの症例や実績があったり、しっかりカウンセリングをしてくれたりする医療機関選びが重要とのことでした。
医院情報
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診療科目 | 美容外科、美容皮膚科、美容内科 |