卵子の数を調べる「AMH検査」を婦人科医が解説 AMH値の見方や費用、検査の方法も知りたい
女性の卵子の数は生まれた時点で決まっており、年齢とともにどんどん減っていくそうです。40代女性の活躍も目立つ昨今ですが、どんなに活発で若々しい方でも卵子は確実に歳を取り、数も質も落ちていくというのが現実のようです。今回は、自分の体内にある卵子の数を調べる「AMH検査」について、産婦人科医の岡田有香先生(グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
岡田 有香(グレイス杉山クリニックSHIBUYA)
目次 -INDEX-
卵子の数は生涯で決まっている? 卵子の数を増やす方法の有無や排卵は何歳までなのかを婦人科医に直撃
編集部
卵子の数が生涯で決まっているというのは本当ですか?
岡田先生
本当です。「排卵」という言葉から、卵子が毎月作られるというイメージを持つ方も多いようですが、実のところ卵子の「数」は生まれたときから決まっていて、年齢と共に減り続けています。
編集部
卵子が増えることはないのですか?
岡田先生
加齢や病気などの理由により減ってしまうことはあっても、残念ながら増えることはありません。ただし、卵子の数と妊娠する確率は、あまり関係がないと言われています。妊娠する際に重要なのは、卵子の「質」です。年齢があがると妊娠確率が低くなるのは、加齢とともに卵子の「質」が低下してしまうからです。
編集部
では、質を上げることはできるのですか?
岡田先生
残念ながら難しいと思います。基本的に、卵子の「質」も年齢とともに下がっていきます。卵巣の中にある卵子は、女性本人の年齢と同じように歳を重ねるためです。
編集部
すると不妊治療は、何歳くらいから始めたら良いのですか?
岡田先生
卵子の数も質も加齢とともに低下していきますが、特に卵子の「数」は個人差がとても大きく、20代でも卵子の数が少ない方もいらっしゃいます。そういう場合も考えられますので、20代のうちから婦人科に相談することをお勧めしています。不妊治療をすればすぐに赤ちゃんを授かるというわけではないので、自分の体を知るためにも検査だけでも早いうちに受けておくのが良いと思います。
卵子の数を調べるAMH検査(アンチミューラリアンホルモン検査)とは? 検査方法・費用・保険適用などについても知りたい
編集部
「卵子の数」を調べる検査があると聞きました。
岡田先生
はい。正確には「卵子の数」そのものを調べる訳ではなく、卵胞から分泌されるホルモンである「アンチミューラリアンホルモン(AMH)」の値を調べる検査です。
編集部
もう少し詳しく教えていただけますか?
岡田先生
「AMH」とは発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、血中のAMH値は卵巣内にどれぐらい卵子の数が残っているかを反映すると考えられているのです。血液中のAMH値が高ければ、それだけ卵胞数が多いということになります。AMHの平均値は年齢に応じて下がっていきますが、個人差はかなり大きく20代でもAMH値が低い人、逆に40代でも高い人がいるので、実際に検査をしてご自身の卵子の数の目安を知っておくことは非常に大事です。
編集部
AMHを調べるにはどういう検査をするのですか?
岡田先生
特別な検査ではなく、採血をすればAMH値が測定できます。もちろん、AMH検査を実施している医療機関でなければいけませんが、事前に予約をしておけば問診から採血まで全て含めても所要時間は約30分です。検査結果はそれぞれの医療機関にもよりますが、採血をした当日~1週間程度で分かります。AMH検査は、最寄りの婦人科で必ずしも行っているとは限らないので、事前に調べてから受診しましょう。
編集部
費用・保険適用についても教えてください。
岡田先生
基本的には保険適用はされず、自費となります。料金は、当院の場合は7000~1万円程度です。ただし「結婚していてこれから不妊治療をはじめる」など、一定の条件を満たせば保険適用となる場合もあります。こちらも医療機関に確認してみてください。
卵子の数を検査するとAMH値で不妊治療の方針がわかる? AMH検査は何歳まで受けられる? ピルを服用している人は検査前に注意が必要って本当?
編集部
AMH検査の結果はどのように捉えれば良いのでしょうか?
岡田先生
先述の通り卵子は年齢とともに数が減っていきますが、卵子の数は個人差が大きいため、人によっていざ子供が欲しいと思った時に卵子がないということも起こりえます。実際、卵子が非常に早く減ってしまい、20代や30代で閉経する女性もいらっしゃいます。割合としては、20代での閉経は約1000人に1人、30代での閉経は西洋や中国で調べたデータでは2.8〜3.7%の女性にみられるそうです。また、反対に年齢の割にAMH値が高い場合は、「排卵しにくくなっている」ということも考えられます。ですから、AMH検査をして卵子の数の目安を把握し、エコー検査の結果や女性ホルモンの値と合わせてご自身の状態を知ることで今後のライフプランを検討する材料にするというのがお勧めです。
編集部
AMH検査は誰でも、いつでも受けられるのですか?
岡田先生
AMH値はほかのホルモン検査と違って月経周期のいつ測ってもよく、少量の採血のみの手軽な検査なので、基本的に20代後半〜閉経前くらいの女性でしたら特に大きな条件や制限もなく受けられます。
編集部
ピルを服用していても良いのですか?
岡田先生
ピルを服用中の方は、AMHの値が20~40%程度下がるという報告があります。こういった影響を踏まえたうえであれば、ピルを服用している方でもAMH検査を受けられます。ピルを服用している方は、より正確な状態を知るためにAMH検査と合わせてエコー検査も受けていただいています。また、検査のために休薬する方は、1か月ほど間隔をあける必要があります。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
岡田先生
自分の体といえども、ご自身ではわからないこともたくさんあります。女性であれば、将来の妊娠のためにも「自分の体を知っておく」ことはとても大事です。病気や不調になってからではなく、普段から婦人科の「かかりつけ医」を持ち、AMH検査などをすることで、自分の体の妊孕生(にんようせい/妊娠する能力)がどのくらいなのかを知っておきましょう。自分には不妊治療が必要なのか、必要なのだとしたら、どのステップから始めるのか、どのくらいのペースでステップアップしていったら良いのかなど、客観的に考えられるきっかけになります。
編集部まとめ
「AMH検査」について、話を聞きました。岡田先生によると、妊活は遅くとも閉経の約10年前には開始した方が良いのですが、実際にはこれより遅い方がとても多いそうです。個人差も大きいとされる閉経の時期でですが、ご自身の閉経が早い方でないかどうかを含めて、AMH検査を通してご自身のライフプランを考えていくのも良いかと思います。
医院情報
所在地 | 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti SHIBUYA 5F |
アクセス | 東京メトロ「渋谷駅」B1番出口正面 JR・東急各線・京王線「渋谷駅」より明治通りを原宿方面に徒歩4分 |
診療科目 | 婦人科・生殖医療 |