「いびきは病気のサイン?」医師が解説 睡眠時無呼吸症候群(SAS)やほかの疾患の可能性
いびきはなかなか自分では気づきにくいもの。家族に指摘され、初めていびきをかいていることに気づく人も多いのでは? たまに起きるいびきは心配いりませんが、中には命に関わる重要な疾患が隠れている場合もあります。そのあたりの詳しいところを深谷耳鼻咽喉科クリニックの深谷先生に教えてもらいました。
監修医師:
深谷 和正(深谷耳鼻咽喉科クリニック)
目次 -INDEX-
いびきがうるさいのは病気? のどから大きい雑音が鳴る仕組みや危険ないびきの種類を教えて
編集部
そもそもなぜ、いびきをかくのですか?
深谷先生
鼻からのどまでを上気道といい、通常は鼻から吸った空気がこの上気道を通ってスムーズに肺へ流れていきます。しかし寝ているときは全身の筋肉が緩み、のどを支えている筋肉も緩んでのどが細くなります。また、舌も下に落ち込んでしまうため気道がさらに狭くなります。このとき鼻呼吸ではなく口呼吸をすると、空気が通るときにのどが振動していびきが生じるのです。
編集部
いびきをかく人とかかない人がいます。何が違うのですか?
深谷先生
顎が小さい人や扁桃腺が大きい人はのどが狭いことが多いので、いびきをかきやすくなります。また、飲酒の習慣がある人、肥満の人、睡眠薬を使用している人もいびきをかくことが多いですね。
編集部
いびきをかくのは正常なのですか? 病気ではないのでしょうか?
深谷先生
風邪をひいたときやお酒を飲んだあとなどに、ときどきいびきをかく程度ならそれほど心配はいりません。しかし、場合によっては病気が原因となって、いびきをかいていることもあります。その場合には注意が必要です。
編集部
どんないびきに注意したら良いのでしょうか?
深谷先生
一番危険なのは、大きないびきをかくとともに、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまうことです。ゴゴゴという大きないびきをかいたと思ったら、突然、呼吸が止まって静かになり、再びゴゴゴといういびきをかきはじめます。このような場合には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われます。
毎晩大きないびきも!? 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは? いびき以外にどんな症状がある?
編集部
睡眠時無呼吸症候群とは、どのような病気ですか?
深谷先生
文字通り、睡眠中に無呼吸を繰り返す病気です。これが引き金となり、さまざまな合併症を起こすことがあります。
編集部
いびき以外にも、睡眠時無呼吸症候群と診断するのに必要な要素はなんですか?
深谷先生
医学的には、「10秒以上呼吸が止まる無呼吸や、呼吸が弱くなる低呼吸が1時間あたり5回以上繰り返される状態」と定義されます。
編集部
なぜ、睡眠時無呼吸症候群は危険なのですか?
深谷先生
睡眠時無呼吸症候群が命を奪うことはありません。しかし、重篤な合併症を引き起こすこともあり、その結果、命を失うこともあります。たとえば睡眠時無呼吸症候群は高血圧や糖尿病、不整脈などの心疾患、脳卒中と深い関わりがあることがわかっていて、研究によると、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群を8年間放置した場合、死亡率が約37%になるとされています。
編集部
どのような症状に気をつけたら良いでしょうか?
深谷先生
・息苦しくなって目覚めることがある
・睡眠時間は足りているのに、日中の眠気がある
・朝起きた時に体が重い
・起きた時に頭痛がする
・倦怠感がよく起こる
・熟睡感がなく、何時間寝ても疲れが取れない
・ED(勃起不全)になった
・夜中に何回も目が覚めてトイレに行く
・集中力や記憶力が低下してきたように感じる
など
睡眠時無呼吸症候群になると日中に眠くなり、活動性が低下して生活の質を落とすことがあります。そのため日中の症状にも注意してください。
気になるいびきには睡眠時無呼吸症候群以外の病気もある? 病院を受診する目安は? 放置すると危険なことも
編集部
睡眠時無呼吸症候群以外にも、いびきが症状となる疾患はありますか?
深谷先生
睡眠時無呼吸症候群以外にも、いびきを引き起こすものには以下のようなものがあります。
・扁桃(アデノイドや口蓋扁桃)が腫れている
・口蓋垂(のどちんこ)が大きい
・かぜや鼻炎で鼻が詰まっている
・蓄膿症である
・鼻中隔弯曲(鼻の骨が曲がっている)
・極端な肥満
など
編集部
これらの場合には受診した方が良いのでしょうか?
深谷先生
いびきをかくことが習慣になると眠りが浅くなり、生活の質が著しく低下してしまいます。できるだけ受診をして、原因に応じた治療を受けることをお勧めします。扁桃組織が腫れていたり、蓄膿症を発症していたり、鼻中隔弯曲を起こしていたりする場合には、手術が有効です。
編集部
何科を受診したら良いのでしょうか?
深谷先生
一般的には呼吸器内科や耳鼻咽喉科を受診すると良いでしょう。近年では睡眠外来やいびき外来などを設けている総合病院もあり、睡眠時の悩みを相談できるところもあります。そうした科目を利用しても良いでしょう。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
深谷先生
当院を受診する患者さんの場合、「同居している家族にいびきを指摘された」「会社で居眠りをしていると同僚から言われた」など、第三者の指摘がきっかけとなって、睡眠時無呼吸症候群を疑う人が大半です。自分ではなかなか気づきにくいかもしれませんが、睡眠時無呼吸症候群を放置すると重篤な合併症を引き起こすこともありますし、また、QOLを著しく低下させる原因にもなります。「日中の眠気がひどい」「なかなか疲れが取れない」など、小さなことでも構わないので、気になることがあれば専門医にご相談ください。当院では、外来で行える簡易的な検査や、入院して行う検査などを用意しています。そのような検査を受け、睡眠時無呼吸症候群とわかった場合には適切な治療を行うことが大切です。
編集部まとめ
かつて、睡眠時無呼吸症候群が原因となった事故が起きたあとには、多くの人が耳鼻科などで検査を受けました。最近ではあまりメディアに取り上げられなくなったこともあり、注目度が下がっているようですが、睡眠時無呼吸症候群はときに命を奪うこともあります。もし気になる場合には、早めに専門医を受診しましょう。
医院情報
所在地 | 〒355-0072 埼玉県東松山市石橋1816-9 |
アクセス | 東武鉄道東上本線「森林公園駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 耳鼻咽喉科 |