目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 「いびき」の原因と、知られざる健康リスク

「いびき」の原因と、知られざる健康リスク

 更新日:2023/10/04

男女問わず、いびきに悩む人は少なくありません。いびきの原因は、コンディションによる一時的なものもありますが、そうではない習慣的ないびきは病気であり、健康上のリスクが潜んでいるそうです。一体、いびきの原因はなんなのでしょうか? どうしたら改善されるのでしょうか? コレージュクリニック ザ・ペニンシュラ東京の都筑俊寛院長に、話を聞きました。

都筑 俊寛

監修医師
都筑 俊寛(コレージュクリニック ザ・ペニンシュラ東京)

プロフィールをもっと見る
1984年浜松医科大学医学部医学科卒業。帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科入局。埼玉県立小児医療センター耳鼻咽喉科、帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科准教授を経て、2009年銀座コレージュ耳鼻咽喉科を開院。2023年、クリニックの移転に伴い「コレージュクリニック ザ・ペニンシュラ東京」と名称を変更。疾患に関連するいびき、睡眠時無呼吸症候群、花粉症、アレルギー性鼻炎のレーザー治療に特化した医療を提供している。特にいびき治療については症例数が多く、レーザー治療症例件数は年間1500件以上。「いびきや睡眠時無呼吸症候群に悩む人が多い中、正しい知識や治療法を伝えていきたい」と、レーザー治療を啓発するセミナーにも注力している。

習慣的ないびきには健康上のリスクあり

習慣的ないびきには健康上のリスクあり

編集部編集部

なぜ、いびきが起こるのですか?

都筑 俊寛都筑先生

いびきとは、睡眠中にのど(上気道)を空気が通るとき、のどが狭くなっているために発生する振動音のことです。通常の呼吸では、空気は鼻から上気道を通過して気管へ流れていきますが、さまざまな要因によって上気道が狭められた状態で空気が入っていくと、そこで空気の乱れが生じます。その結果として、軟口蓋(なんこうがい/口腔の上側の奥にある柔らかい部分)や口蓋垂(こうがいすい/のどちんこ)、咽頭が振動して音が出てしまいます。これがいびきとなって周囲にも聞こえているのです。

編集部編集部

いびきをかくことが、健康上の問題になるのですか?

都筑 俊寛都筑先生

習慣的にいびきをかくことは病気であり、健康上のリスクになります。たとえば、いびきに伴う異常呼吸が原因で酸素不足となり、その結果、自律神経のバランスが崩れて高血圧の発症につながることもあります。同様に、糖尿病肥満心不全の原因になることもあります。

編集部編集部

いびきにも、いろいろな種類があると聞きました。すべてに注意が必要なのでしょうか?

都筑 俊寛都筑先生

ひと口に「いびき」と言っても、実は3種類あります。1つが「単純性いびき」。これは鼻づまりや疲労、飲酒、風邪などが原因の一時的ないびきです。2つ目が「上気道抵抗症候群」。「習慣性いびき」とも呼ばれます。これは、睡眠中、上気道が狭くなり、強い力で呼吸をする必要があるため、睡眠が妨げられます。無呼吸や低呼吸はありませんが、習慣的ないびきがみられます。3つ目が「睡眠時無呼吸を伴ういびき」。常時、他人から指摘されるくらいのいびきをかいている状態です。

編集部編集部

いびきには3種類あるとのことですが、それぞれ原因が違うのですか?

都筑 俊寛都筑先生

いびきの種類によって、原因は異なります。まず、単純性いびきでは、睡眠時、呼吸に合わせて大きな音がする程度で、呼吸のリズムが大きく崩れたり、無呼吸状態が見られたりすることは、ほぼありません。一般に鼻づまりや疲労、飲酒が原因で、それらの影響がなくなれば、自然といびきも解消されるので、それほど心配はいらないでしょう。注意した方が良いのは、残り2つの「上気道抵抗症候群」と「睡眠時無呼吸を伴ういびき」。これについては医療機関による診断と治療が必要です。

運転をする人が注意すべき「いびき」とは?

運転をする人が注意すべき「いびき」とは?

編集部編集部

2つ目の「上気道抵抗症候群」について、もう少し詳しく教えてください。

都筑 俊寛都筑先生

これは、この後にご説明する、「睡眠時無呼吸症候群」の前兆で、習慣的にいびきをしてしまう症状です。低呼吸や無呼吸の症状は見られないのですが、睡眠中に上気道が狭くなって強い力で呼吸することにより、睡眠が妨げられるなどの症状が見られます。しっかりと眠ることが難しくなるため、起きてもすっきりしません。日中に眠気を感じることが多いので、職場や車の運転、家事の最中などにも悪い影響を及ぼす可能性があります。早めに医療機関で相談しておいた方が良いでしょう。

編集部編集部

続いて3つ目の「睡眠時無呼吸を伴ういびき」とはどのようなものですか?

都筑 俊寛都筑先生

周期的にかいていたいびきが、息が詰まった様になり呼吸が止まった後、「ゴゴッ」という音と共に再び始まってしまう感じのいびきです。寝ている最中に、10秒以上を越える無呼吸といびきを何度も繰り返していたら要注意ですね。

編集部編集部

睡眠時無呼吸症候群では、どのような症状が見られるのですか?

都筑 俊寛都筑先生

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に低呼吸または無呼吸が生じ、体が低酸素状態になる症状のことです。Sleep Apnea Syndrome(SAS)とも呼ばれます。呼吸が一時的に停止しているということは、血中に酸素が不足しています。その結果、睡眠時に繰り返し目が覚めたり、朝に疲労感が残っていたり、十分な休息を身体に与えられなくなってしまいます。自分ではなかなか気づきにくいので、当院へ相談にいらっしゃる人も、家族やパートナーに指摘されて知った、というケースが多いです。

編集部編集部

一時期、ニュースなどでも取り上げられていましたね。

都筑 俊寛都筑先生

この症状を患った運転手が交通事故を起こし、ニュースになったこともありますから、耳にしたことのある方も多いでしょう。病気の知名度も上がったため、最近では当院でも、睡眠時無呼吸症候群の相談を受けるケースが一段と多くなりました。バス会社にお勤めの運転手の方が、会社からの要請で検査を受けた結果、異常が見られたといって、治療のために当院を訪れるケースも増えています。

睡眠時無呼吸症候群の原因と治療法

睡眠時無呼吸症候群の原因と治療法

編集部編集部

睡眠時無呼吸症候群の原因はなんですか?

都筑 俊寛都筑先生

最も多いのは、「閉塞型」です。のどが一時的に潰れてしまうことで起きている無呼吸状態です。たとえば、太っている人が仰向けの姿勢で寝ると、のどが狭くなって呼吸がしづらくなることがあります。このときに一時的に塞がってしまえば、無呼吸を引き起こします。

編集部編集部

睡眠時無呼吸症候群を放置すると、どうなるのでしょうか?

都筑 俊寛都筑先生

日中の強い眠気が、居眠り運転や労働災害につながる可能性があります。さらに最近では、睡眠時無呼吸症候群は命のリスクになることもわかっていて、たとえば睡眠中に呼吸が止まると、血液中の酸素が不足し、動脈硬化不整脈の原因になりかねません。また、肥満や高血圧、糖尿病など生活習慣病のリスクが高まります。そのほか、朝、目覚めてもスッキリしないので、不安を感じて落ち込みやすく、うつ症状に至る、ということもあります。

編集部編集部

睡眠時無呼吸症候群は、どのように治療するのですか?

都筑 俊寛都筑先生

肥満の人が睡眠時無呼吸症候群を患っている場合は、まず、生活習慣の改善を行います。特に、のどのまわりに脂肪が堆積している場合、呼吸がしづらくなるため、減量することを勧めます。そのほか、医療機関で行う治療の第一選択肢は、「CPAP療法」です。これは鼻マスクを装着し、マスクにつながった機械から空気を送り込むことで呼吸を改善させるものです。

編集部編集部

CPAP療法で症状が改善されるのですか?

都筑 俊寛都筑先生

空気を送り込むので、症状は改善します。ただし、装着感が煩わしい、モーター音がうるさい、出張に持参できないなどの理由で、CPAP療法を行えない人もいます。その場合は、顎位置を専用マウスピースで整えることによって呼吸の改善を図る「マウスピース治療」や、レーザーで口蓋垂(こうがいすい/のどちんこ)を除去する外科手術をお勧めします。

編集部編集部

CPAP療法やマウスピースは、機器を装着している間だけ改善されるということですね。結局、根治ではないのですか?

都筑 俊寛都筑先生

睡眠時無呼吸症候群の根治治療は、外科手術のみです。しかしながら、治療の第一選択はCPAP療法となっている事も事実です。口蓋垂の除去手術を行うと、個人差はありますが多くの方で症状の改善がみられます。ただ、外科手術をしたくないという方もいらっしゃるので、その方の状況やライフスタイルに合わせ、治療方法をご提案しています。

編集部編集部

CPAP療法の金額はどれくらいですか。

都筑 俊寛都筑先生

当院の場合、問診のあとに検査を行います。検査には、自宅でできる簡易検査と入院していただく入院検査があります。また当院では、呼吸、気道音、血中酸素濃度測定などを自宅で行うことのできる簡易検査を実施しております。必要に応じて、睡眠中の脳波や酸素飽和度、心電図など、総合的に調べられる入院検査をおすすめする場合があります。入院検査の場合、検査費用は2〜3万円です。検査結果によりCPAPを希望される場合は、それに月額5000円程度の継続費用がかかります。これは、CPAPの機材のレンタル費になります。それと併せて月に一度の受診が必要となります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

都筑 俊寛都筑先生

冒頭に申し上げました通り、多くの場合、いびきは治療が必要な病気です。ひとりで悩まず、気軽に医療機関へ相談してください。最近では、さまざまな機関が「いびきが治る」とうたっていますが、治療後にトラブルが発生するケースも目立っています。のどを専門とするのは、耳鼻咽喉科だけです。医療保険も使用できるので、信頼できる耳鼻咽喉科を受診しましょう。

編集部まとめ

男性だけでなく、いびきに悩む女性も増えています。「熟睡できない」「日中眠くなる」だけでなく、全身の健康のリスクになりかねません。病気が潜んでいる可能性もあるため、いびきに気づいたら、早めに耳鼻咽喉科に相談しましょう。

医院情報

コレージュクリニック ザ・ペニンシュラ東京

コレージュクリニック ザ・ペニンシュラ東京
所在地 〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-8-1ザ・ペニンシュラ東京B1
アクセス JR「有楽町駅」 日比谷口より徒歩2分
千代田線「日比谷駅」 A10出口より徒歩3分
有楽町線「有楽町駅」 B2出口より徒歩4分
銀座線「銀座駅」 C4出口より徒歩5分
三田線「日比谷駅」 B1出口より徒歩3分
診療科目 耳鼻咽喉科

この記事の監修医師