薬の効果は服用後どのくらいで現れる? 薬の持続時間を併せて薬剤師が解説
薬の効き目は一体いつごろ出てくるのでしょうか? 熱が出た時、辛い頭痛などがあるとき薬を飲んで早く効果を実感したいと思いたい人も多いかと思います。実際薬を服用してからどのように効果が現れるのか、上尾中央総合病院で薬剤師をしている糸井さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
糸井 陽介(薬剤師)
目次 -INDEX-
薬の効果が現れるメカニズムを解説 患部に届くまではどのような流れなのか
編集部
薬を服用してから効果が現れるのにはどのような過程が存在するのでしょうか?
糸井さん
一般的に、経口投与された薬剤は胃酸や腸液などで溶解し、小腸で吸収されます。その後、初回通過効果といって、全身に薬剤がめぐる前に肝臓で代謝を受け、全身に薬剤がめぐり患部へ到達して効果を発揮します。初回通過効果は薬剤によってどの程度代謝されるのかは変わるため一概にどのくらい代謝とは言えませんが、それを考慮し薬の用法用量が決定されています。
編集部
効果のメカニズムは何となくわかりましたが、実際効果が出るのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
糸井さん
これも薬によって異なるのですが、基本的にはTmaxやT1/2が関係しています。Tmaxは薬の血中濃度が一番高くなるまでにかかる時間、T1/2は半減期を表わします。半減期は薬がどの程度まで持続するかの指標になります。具体的な例を紹介すると、解熱鎮痛剤として使用されるロキソプロフェン(ロキソニン®)はTmaxが0.45h(±0.03)、T1/2が1.22h(±0.07)となっています。そのため服用してから約30分程度で効果が一番強く現れ、1時間15分くらいには効果が薄れてきます。約6時間経つと体内のロキソプロフェンはほぼ体外に排泄されるような形になっています。
編集部
薬は食後に服用することが多いと思うのですが、食事を食べていない時に薬を飲んではいけないのでしょうか?
糸井さん
薬を処方された際、ほとんどの人が食後で処方されていますよね。ほとんどの薬剤は食後で臨床試験がされており、きちんと効果を発揮するのであれば用法通り食後で服用することが望ましいことに違いはありません。有効性や安全性が分からないからですね。
編集部
食事がとれないほど体調が悪い場合などはどうでしょうか?
糸井さん
これは薬剤師の裁量にはなってしまいますが、ほとんどの薬剤師であれば、ゼリー状の飲料などを少しとってもらう、多めの水で服用してもらうと言う方が多いと思います。特に解熱剤や鎮痛薬については食事に関係なく服用したいケースがあるからです。毎回空腹時に、というのはもちろん止めた方がいいですが、緊急性を感じる場合にはデメリットよりもメリットの方が大きいと判断しています。しかし、中には食後でないと治療効果が得られない場合や逆に吸収率が変化し副作用のリスクを増加する薬も存在するので、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
薬を効果的に服用する方法を薬剤師に聞く ポイントは「服用するタイミング」
編集部
出来るだけ薬の効果を出していくにはどういう事を気にした方がいいのでしょうか?
糸井さん
基本的には、一番大切なのは指定された服用タイミングを守ることです。これは患者さん側の協力も必要で、生活の中に薬を服用するという行為を入れる必要があります。毎日服用しなければいけない薬剤、例えば降圧薬や脂質異常症薬、糖尿病薬などにおいて薬を服用するのを忘れてしまう、値が良いから服用しないなどの考え方を持っていると非常に危険です。冗談ではなく今後の生活に大きな影響を及ぼします。「薬を服用しているから正常な値になっている」ことを忘れないようにすることも大切です。
編集部
頓服の薬剤の場合ではどうですか?
糸井さん
頓服薬をより効果的にする方法はあります。ここでも鎮痛薬のロキソプロフェン(ロキソニン®)で例えていこうと思います。先ほども伝えた通り、Tmax、つまり効果が一番強く出るのは服用してから約30分後になります。そのため痛みが出てから服用すると効き目が出るまでに時間がかかり、我慢しなければいけません。しかし、もともと予定があって外出しなければいけない場合には、前もって服用することで、いざ行動するという時に痛みがある程度緩和された状態で活動することが出来ます。頓服薬を効果的に服用するのであれば、その時間を考慮すると薬がとても心強い味方となるでしょう。
編集部
忙しくて薬が飲めない場合などはどうしたらいいのでしょうか?
糸井さん
基本的には先ほどと同様、薬の効果を十分に発揮するには決められたタイミングで服用することが大切になります。服用の回数が多いようであれば薬剤によっては1日1回で良い薬もあるので医師や薬剤師に相談することをお勧めします。また、朝服用が出来ないのであれば夕方に変えてもらうことも一つの手でしょうし、夕方に服用するのが好ましくない薬剤、病態であれば朝服用できる工夫をしていくことが大切です。具体的にはお薬カレンダーで服用する分をあらかじめ用意しておくなどが挙げられるでしょうか。そのほか、患者さん毎にいい方法は異なるので相談してみましょう。
薬を服用する際の注意点は? 飲み忘れた時の対処法を併せて紹介
編集部
薬を服用するにあたって注意しなければいけないことはありますか?
糸井さん
「用法用量を守ること」と「飲み忘れなく服用すること」が大切です。これは有効性、安全性どちらの面からも言える事です。安全面の話をするのであれば、一部の医薬品を除いて、一般に医薬品を服用したことで、入院治療が必要な程度の副作用が生じた時には「医薬品副作用被害救済制度」というものの適応になります。医療費や障害年金などの救済給付を受け取ることが出来る制度ですね。しかし、用法用量を守らないなどの適正な服用と判断されない場合についてはこの制度の対象外となります。また、薬の効き方や副作用の出方には服用する側の状態も左右されます。高齢者や透析を受けている方などは腎臓の薬物排泄能が低下しており、副作用の発現リスクが増加する可能性があります。そのため、個々に合った服用方法があることも念頭に入れておく必要があります。
編集部
そのほかにも、注意するべきことはありますか?
糸井さん
薬の製剤的特徴によっては割ってはいけないもの、溶かしてはいけないものがあります。そのような薬剤を割ったり、溶かしたりして服用してしまうと、薬の吸収量が著しく上昇して副作用リスクを高めてしまったり、あるいは胃酸などによる影響で薬剤の効力が損なわれ服用しているのに薬の効果が得られないという事態にもなりかねません。服用方法を変えたいという場合には必ず薬剤師に相談するようにしましょう。
編集部
もし薬を飲み忘れた場合にはどうしたらよいでしょうか?
糸井さん
基本的には飲み忘れに気づいた時点で服用していただく方が良いでしょう。しかし、2回分を一度に服用するといった服用の仕方はNGです。また、糖尿病薬や抗がん剤など、服用する時間あるいはタイミングにより注意が必要な薬剤については勝手な判断はせず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
編集部
最後に読者へメッセージをお願いします。
糸井さん
根本的な話として薬の飲み忘れが多ければ多いほど薬による治療効果は著しく低下してしまいます。ご自身の身体を思うのであれば、服用を忘れない方法を模索することもとても大切です。今はお薬カレンダーというものや薬局で一包化といって、1回分をすべて一つの包装に薬剤を入れて管理できるようにしています。ご自身の状況に合わせて活用すると飲み忘れ自体を減らすこともできるでしょう。
編集部まとめ
薬ごとに薬効の持続時間が異なるため、気になる場合には薬剤師に相談するようにしましょう。また、薬の効果が出る時期に副作用が起こる可能性も高くなります。体調の変化やいつもと異なる症状が出た際には注意しましょう。最後に薬効の持続時間や副作用以外にも服用の方法で効果に影響がでるものもありますので、今まで通りの服用方法が出来ない際にも必ず医師や薬剤師に相談しましょう。