「食事介助の正しい手順」とは なぜ食事介助が必要なのか介護福祉士が解説
「食事介助」は「排泄介助」「入浴介助」と並んで3大介護ケアの1つです。最近は、一般の方も耳にしたことがあると思いますが「窒息」「誤嚥性肺炎」という単語が先行してしまい、食事介助が難しいもの・危険なものといった印象が残っている方も多いのではないでしょうか。もちろん、間違った方法での食事介助は危険ですが、正しい手順を身に付けることで、予防できることもあります。注意点を踏まえながら、介護福祉士の若井さんに解説していただきました。
監修介護福祉士:
若井 由加(介護福祉士)
目次 -INDEX-
なぜ食事介助が必要なのか どのような危険がある?
編集部
食事介助は、介護の中でも重要なケアの一つのように言われていますが、それはなぜでしょうか?
若井さん
衣食住という言葉があるように食べることは生活の基本です。人として生きていくために食べることに何らかの問題が生まれたとき、真っ先に解決しないと命にかかわるので、重要なケアの一つとして数えられているのです。
編集部
言い方は適切でないかもしれませんが、食べさせればよいだけではないのですか?
若井さん
そうですね。簡単に言えばそうなのですが、ほかにも問題があります。栄養失調など栄養バランスが崩れることで病気になってしまうことですね。高齢とともに食欲がなくなっていくことを考えて、高齢者が食べたい栄養価の高い食べ物を準備したり、飲み込めなくなってくる体のことを考えて飲み込みやすく作ったりすることも食事介助と言えます。
編集部
ほかにも、食事介助ではどのようなことをおこなうのですか?
若井さん
あまり知られていませんが、食事の仕方を忘れてしまった認知症の高齢者と一緒に食事をすることも食事介助の一つです。食事をすることを忘れても、目の前で食べる人のマネをしながら食事ができる人もいます。一緒に食べながらおしゃべりをすることで、食べることが楽しいと感じる効果もあります。
編集部
一緒に食事を楽しむのが介護ケアになるなんて、素敵ですね!
若井さん
そうですね。介護ケアの楽しみの一つであるかもしれません。ですが良いことばかりでもありません。食べることで起こる事故があるからです。食事介助のときに起こる事故は、誤嚥性肺炎と窒息が考えられます。命にかかわるため、介護士は食事介助中、しっかり注意して様子を見ています。
正しい食事介助の方法を介護福祉士が解説 安全な姿勢・手順とは
食事介助は何に注意しておこなえばいいのか 食事前後の注意点も併せて解説
編集部
注意が多いと難しくなりそうな気持ちになりますが、大丈夫でしょうか?
若井さん
初めは忙しく感じますが、とても凄いことをやっているわけではありません。毎日の実践で自然と身についてきます。
編集部
食事介助の注意点を、もう一度わかりやすくお願いできますか?
若井さん
ポイントは2つあると思います。1つ目は、「食事前の準備にやるべきことが多いということ」です。食事前の準備をしっかり整えておくと、あとは高齢者の食事ペースに合わせて見守りができます。ですので、食事介助のポイントは、食事前の準備をしっかりやることです。2つ目は、食前も食事中も「姿勢に注意する必要」があります。常に姿勢を気にかけていることを意味します。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
若井さん
食事介助については、様々なサイトや介護士が「こうすると良い」と思うことがたくさんあります。「バランス良く食べさせた方が良い」「食前も食後も口腔ケアも重要」「食事中はおしゃべりで楽しくした方が良い」「ベッド上で背を上げることが困難なら30度」と本当にいろいろな「やった方がいい」で溢れています。すべて集めると矛盾と注意で首が回らなくなるほどです。そういう時は、高齢者本人に聞いてください。「もう少し体を倒して食べたい」「噛んで食べたい」「1日中歯磨きは嫌……」高齢者に聞きながら、やりたくないこともやりたいこともわかってくるでしょう。そこに答えがあると思います。
編集部まとめ
多くの方が、美味しく好きなものをたくさん食べたいし、食べさせてあげたいと思っていると思います。想いはあるけれど、高齢者も介護者も平穏に過ごしていきたいですし、命にかかわるような事態は起こって欲しくないのではないでしょうか。少しずつできなくなっていっても、日々の食事風景が介護者の正しい食事介助で守られるのであればやってみて欲しいと思いました。