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「乳がん検診で要精密検査になったら…」がんの確率や対策を医師が解説

 公開日:2023/03/03
「乳がん検診で要精密検査になったら…」がんの確率や対策を医師が解説

乳がん検診で「要精密検査」と結果が出たら、誰でもドキッとするでしょう。その後はどのクリニックでどんな検査をするべきなのか、よくわからないという人も多いと思います。今回は要精密検査が出たとき、いざというときのために知っておきたい対応について、「茗荷谷乳腺クリニック」の氷室先生に教えていただきました。

氷室 貴規

監修医師
氷室 貴規(茗荷谷乳腺クリニック)

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聖マリアンナ医科大学卒業。順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了。順天堂大学医学部附属静岡病院や越谷市立病院で経験を積む。2020年、東京都文京区に「茗荷谷乳腺クリニック」を開院。医学博士。日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会専門医。日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医師、乳がん検診超音波検査実施・判定医。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会責任医師。

乳がん検診で「要精密検査」と言われたら乳がんなの?検査結果に不安な方へ医師が解説

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編集部編集部

乳がん検診で「要精密検査」と言われたら、乳がんということなのでしょうか?

氷室 貴規先生氷室先生

いいえ。検診では5%弱が要精密検査と言われていますが、全ての人が乳がんというわけではありません。ただし、「乳がんの疑いがある」とされるため、さらに詳細な検査が必要となります。

編集部編集部

精密検査では、何をするのでしょうか?

氷室 貴規先生氷室先生

必要に応じてマンモグラフィを追加撮影したり、超音波(エコー)検査をおこなったりするほか、細胞や組織を採取してさらに詳しく調べる方法もあります。

編集部編集部

なぜ、細胞や組織を採取する必要があるのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

細胞や組織を調べることを「生検」と言います。マンモグラフィなどの画像診断でしこりがあることがわかっても、それが良性か悪性かははっきりしづらいことが少なくありません。がんの可能性があるしこりに対して細胞や組織を調べて、良性か悪性か明らかにすることが生検の目的です。

乳がん検診の精密検査・再検査では何をする? 細胞診・針生検など検査内容や流れをご紹介

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編集部編集部

簡単に生検の流れについて教えてください。

氷室 貴規先生氷室先生

まず細胞をとって調べる「細胞診」では、しこりがある位置に細くて長い針を刺して細胞を採取して調べます。これを「穿刺吸引細胞診」と言います。

編集部編集部

ほかには、どのような検査方法があるのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

組織を調べる方法にはいくつかの方法があります。例えば、乳房の病変部分に細胞診よりも太い針を刺して、細胞を採取する方法があります。これを「針生検」と言います。そのほか、吸引しながら組織を採取する「吸引式乳房組織生検」や、病変の一部を切除する「外科的生検」という方法もあります。

編集部編集部

これらの生検をおこなうことで、がんかどうかが確実にわかるのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

はい。細胞診、組織診ともにがんの発見率は非常に高く、がんかそうでないかをほぼ正確に見分けることができます。とくに組織診は偽陰性率が低いだけでなく、悪性だった場合にはどのようなタイプのがんなのかも見分けることができます。

編集部編集部

生検によって正しく診断できるのですね。

氷室 貴規先生氷室先生

そうですね。非常に稀なケースですが、生検でも判断が難しいときには外科的生検をすることがあります。外科的生検は、しこりの一部や全部を摘出して、顕微鏡で組織を病理診断する方法です。手術室でおこなうので、実際には「検査と手術を同時にする」と考えていただければと思います。

編集部編集部

検査にリスクはないのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

細胞診の場合は針を刺すときに痛みを感じるかもしれませんが、一般に患者さんの負担は非常に少ないとされています。一方、組織診は細胞診と比べて太い針を使ったり、切除する部分が大きかったりするので、少量の出血や内出血、痛み、傷跡が残るなどのリスクもあります。

編集部編集部

検査時の痛みが心配です。

氷室 貴規先生氷室先生

組織診では麻酔を使います。痛みの確認をしながらおこなうので、それほど心配しなくても大丈夫です。

乳がん検診の精密検査の費用や保険適用など、知っておきたい基礎知識

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編集部編集部

精密検査を受ける際、保険は適用になるのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

はい、細胞検査や組織検査は保険が適用されます。費用は、マンモグラフィ+エコー+生検で約9000円、マンモグラフィ+エコー+細胞診で約5000円です。(いずれも3割負担の場合)

編集部編集部

乳がんの精密検査はどこで受けられるのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

精密検査を受けるには、乳腺クリニックや地元の総合病院が適しています。または、大学病院やがんセンターなどでも受けることができます。

編集部編集部

要精密検査となった場合、自覚症状がなくても検査を受けた方がいいのですか?

氷室 貴規先生氷室先生

初期の乳がんの場合は自覚症状が乏しく、つい見過ごしがちです。しかし、乳がんは初期に発見して早期に治療をおこなえば、完治の可能性は非常に高いがんです。もし自覚症状がなくても「要精密検査」となった場合には、必ず乳腺クリニックや総合病院などで検査を受けるようにしましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

氷室 貴規先生氷室先生

良性腫瘍でも要精密検査と出ることがあります。もちろん不安はあるでしょうが、しっかりと検査をして異常がないことが確認できれば、それに越したことはないでしょう。実際、検査で腫瘍が良性であることがわかることも多いのですが、良性腫瘍であっても放置すると大きくなったり、痛みが出たりすることもあるので、その場合には手術が必要です。いずれにしても、「要精密検査」という結果が出たら、早めに乳腺クリニックや総合病院などを受診することをおすすめします。

編集部まとめ

健康診断や人間ドックで「要精密検査」という結果が出れば、誰でも不安になるでしょう。しかし、万が一乳がんだった場合には、少しでも早く発見することが大切ですし、初期のうちであれば乳がんは完治する確率が非常に高い病気です。あまり心配しすぎず、早めに乳腺クリニックなどで精密検査を受けるようにしましょう。

医院情報

茗荷谷乳腺クリニック

茗荷谷乳腺クリニック
所在地 〒112-0012 東京都文京区大塚1丁目5-18 大伴ビル4F
アクセス 東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」 徒歩2分
診療科目 婦人科、乳腺外科

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