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「がん予防に運動・スポーツは効果的」これって実際どうなの? 医師が運動とがんの関係を解説

 更新日:2023/03/27
「がん予防に運動・スポーツは効果的」これって実際どうなの? 医師が運動とがんの関係を解説

「がん予防に運動やスポーツが効果的」という話を聞いたことがある人もいるかと思います。本当に運動習慣ががんの予防につながるのでしょうか。今回は、がんの発症リスクを下げる運動習慣、およびそのほかの生活習慣とがんとの関係について、エビデンスに基づいた情報を石黒先生に教えていただきました。

石黒 剛

監修医師
石黒 剛(医療法人白青会 いしぐろ在宅診療所岡崎)

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名古屋大学卒業。初期研修修了後、救急医療・緩和ケア・在宅医療等の経験を重ね、2019年5月に兄とともに「いしぐろ在宅診療所」を愛知県豊田市にて開院、同年10月より副院長を務める。2021年8月には2院目となる「いしぐろ在宅診療所 岡崎」を同県岡崎市にて開院し、患者を中心に家族全員の健康を支える医療を院長として提供している。また、誰でも手の届く場所に医療がある環境を創出するべく開院した「クリニックTEN渋谷」では、医療統括責任者として外来診療のみならず広報活動にも積極的に取り組んでいる。

がん予防に運動は効果的? 「運動不足とがん発症の関係性」を医師が解説

がん予防に運動は効果的? 「運動不足とがん発症の関係性」を医師が解説

編集部編集部

がん予防に運動やスポーツが効果的というのは本当ですか。

石黒 剛先生石黒先生

はい、本当です。実際に、世界がん研究基金の研究では「身体活動量が多い人ほどがんにかかるリスクが低くなる」ことが示されています。男女や年齢に限らずこの傾向は当てはまりますが、とくに女性や高齢者、休日の運動頻度が多い人にはよりはっきりとした低下がみられます。また、日本人のがん発症のうち、身体活動量が原因であるものは男性で1.0%、女性で1.6%あるとされています。

編集部編集部

なぜ、運動やスポーツががんの発症リスクを下げることにつながるのでしょうか?

石黒 剛先生石黒先生

運動のがん予防効果のメカニズムは、まだ完全には解明されていません。ただ、「がんのリスクとなる肥満が改善されること」「マクロファージやナチュラルキラー細胞などの免疫細胞の働きが良くなること」「運動によってインスリンの感受性が高まり、発がんを促進する物質であるIGF-1が減少すること」などが要因なのではないかと考えられています。

がん予防には、どんな運動が効果的? 医師が薦める運動習慣

がん予防には、どんな運動が効果的? 医師が薦める運動習慣

編集部編集部

どれくらいの運動をすれば、がん予防の効果があるのでしょうか?

石黒 剛先生石黒先生

厚生労働省によると、64歳以下の人は「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分おこなうこと」「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分程度おこなうこと」を基準としているので、これらを目安とするのがいいでしょう。なお、65歳以上の人は「強度を問わず身体活動を毎日40分以上おこなうこと」が基準となります。総じて、「運動を毎日の習慣にする」ことが大事です。

編集部編集部

とくに効果のある運動やスポーツなどはありますか?

石黒 剛先生石黒先生

そもそも、「身体活動」はスポーツやトレーニングに限らず、仕事や家事をする中で身体を動かすことも含まれています。そのため、日常生活の中でできるだけ活動量が多くなるように心がければ、目標を達成することは難しくはありません。「息がはずみ、汗をかく程度の運動」は、筋トレなどの強度が高い種目が効果的であると考えられています。こうした運動の強度を比較する際には、「METs(メッツ)」という単位がよく用いられます。毎日おこなうべき「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動」とは、3METs以上の運動を指しています。

編集部編集部

METsについて、もう少し詳しく教えてください。

石黒 剛先生石黒先生

METsは、運動の強度の指標です。座ってじっとしているときの消費カロリーを1METsとして、運動や生活動作をしているときの負担がその何倍にあたるかを表しています。例えば、洗濯は2METs、軽いウォーキングは3.8METs、キックボクシングは10METs、というように動作や種目ごとに基準が定められています。ちなみに、ラジオ体操は意外と運動の強度が高く、とくに「ラジオ体操第二」はテニスのダブルスの試合と同程度の強度であるとされています。METsはかなり細かく基準が分かれているので、気になる人はぜひ調べてみてください。

運動以外でがんを予防する方法はある?

運動以外でがんを予防する方法はある?

編集部編集部

運動以外に、日常生活でがんを予防する方法は何がありますか?

石黒 剛先生石黒先生

国立がん研究センターをはじめとする研究グループが、科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法(※)」というガイドラインを出しています。ガイドラインでは、「禁煙」「飲酒」「食生活」「運動」「適正体重の維持」「感染」の6つが、がん予防に関連する要素として挙げられています。「感染」以外の5つは生活習慣に関係していますが、「これら5つを全て実践している人は、このうち1つだけ実践している、または全くしていない人と比較して、がん発症リスクが約4割も低くなる」ということが示されています。

※日本人のためのがん予防法
https://epi.ncc.go.jp/files/11_publications/Can_prev_A2poster.pdf

編集部編集部

お酒やタバコはがんのリスクだというイメージがありましたが、食生活なども関係しているのですね。

石黒 剛先生石黒先生

はい。食事については「塩分の摂りすぎ」「野菜や果物を食べない」といったことが、がんのリスクを高めることがわかっています。それに加えて、「熱い飲み物や食べ物を冷まさずに食べる」ことが食道がんのリスクになるという報告も多くあります。これらの悪習慣はがん以外の病気の発症にも影響しますので、改善するメリットは非常に大きいと思います。

編集部編集部

「適正体重の維持」とは、太りすぎの体型がよくないということでしょうか?

石黒 剛先生石黒先生

体重については、太りすぎだけでなく、痩せすぎでもがんのリスクが高まることがわかっています。例えば、男性のがん死亡リスクについては痩せすぎの人の方が高いことが示されています。国立がん研究センターの調査では、「中高年の日本人にとって死亡リスクが最も低くなるBMIは21~27の範囲である」とされています。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

石黒 剛先生石黒先生

運動をはじめとする生活習慣の改善は、がんの予防、そして心疾患などほかの病気の予防にもなります。「毎日運動をする」と聞くと、一見ハードルが高いようにも思えますが、日々の生活や仕事をする中での活動量に着目すると、きちんと意識をすればそこまで難しい目標ではないのです。生活習慣の見直しは今日この瞬間から始めることができますので、ぜひ取り組んでみてほしいと思います。

編集部まとめ

今回はがん予防に効果的な運動習慣について、石黒先生にお話を伺いました。毎日の生活の中で体を動かすことを心がけることに加えて、週に1回は強度の高い運動をおこなう習慣づくりが重要とのことでした。健康長寿を実現するためにも、身近な習慣から少しずつ見直していけるといいですね。

医院情報

いしぐろ在宅診療所

いしぐろ在宅診療所
所在地 〒444-0932 愛知県岡崎市筒針町字池田103-3
アクセス 名鉄名古屋本線「矢作橋駅」 車で4分
診療科目 内科

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