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【闘病】怒りっぽい・忘れやすい原因は16年前の出来事に! 「高次脳機能障害」

 更新日:2023/03/27
【闘病】怒りっぽい・忘れやすい原因は16年前の出来事に! 「高次脳機能障害」

16年前にバイクの事故を起こしたときから、記憶面に違和感があったという岡﨑憲司さん。若年性認知症を疑い病院に行き、検査を受けたところ「高次脳機能障害」の診断を受けたそうです。そして現在は、奥様やケースワーカーのサポートを受けながら、高次脳機能障害の周知活動や地域貢献活動をされています。そんな岡﨑さんに、これまでの苦悩や葛藤があったのか、話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年2月取材。

岡﨑さん

体験者プロフィール
岡﨑 憲司

プロフィールをもっと見る

大阪府在住。1980年生まれ。1997年にバイクで事故を起こす。事故の16年後、トラックドライバーをしていた際、高次脳機能障害の診断を受ける。現在、妻と子ども5人の7人で生活。高次脳機能障害の認知を広めるためにYouTubeで当事者の語り場を作る。
YouTubeチャンネル【風神雷神】https://www.youtube.com/channel/UCgE-sRl95qmaLdwnLbSIeFg

村上 友太

記事監修医師
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

16年前に起きた事故が原因

16年前に起きた事故が原因

編集部編集部

高次脳機能障害とはどのような障害ですか?

岡﨑さん岡﨑さん

目には見えないですが、脳が損傷している状態です。それまで当たり前にできていたことが難しくなったり、円滑に業務を進めることが苦手となってしまったりする障害です。手のない人に物を持て、足のない人に走れ、高次脳機能障害の人に怒るな、忘れるなと言うのは、同じように難しいことだと思っています。

編集部編集部

高次脳機能障害が判明した経緯を教えてください。

岡﨑さん岡﨑さん

長年抱えていた記憶面の違和感から若年性認知症を疑い、病院に駆け込みました。その際に16年前の事故の話をし、検査を受けたところ、その事故による高次脳機能障害と告げられました。

編集部編集部

大きな事故だったのでしょうか?

岡﨑さん岡﨑さん

脳挫傷で、生きるか死ぬかという状況でした。

編集部編集部

高次脳機能障害は、どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

岡﨑さん岡﨑さん

受傷後、治療をせずに長い時間が経過していることから、いまから治療するよりも、リハビリや社会での見守りが必要だと判断されました。ケースワーカーに担当についてもらってサポートを受けています。

編集部編集部

判明したときの心境を教えてください。

岡﨑さん岡﨑さん

とにかく辛くて、悲しかったです。受け入れられないという気持ちでした。母に申し訳ない気持ちもあって号泣しました。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

岡﨑さん岡﨑さん

たとえば「記憶が消える」「すぐ怒る」「人の話が理解できない」「時間を守れない」「子どもっぽい」「感情のコントロールができない」「人間関係がうまくいかない」「仕事が続かない」「地図が読めない」「頭ではダメだとわかっていてもやってしまう」「言ってしまう」など、行動や理性にコントロールが効かない場面があります。それにより、家庭や職場など社会生活において少しずつズレが生じてしまいます。

現在はパワハラを受け精神科でメンタルケアを受けている

現在はパワハラを受け精神科でメンタルケアを受けている

編集部編集部

治療や入院の内容を教えてください。

岡﨑さん岡﨑さん

事故後の入院中の記憶はありません。高次脳機能障害と診断がついた後の治療(診察時の問診)に関して、医師からの説明も実感が沸くまでは悪口を言われているように感じていました。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

岡﨑さん岡﨑さん

「バイクは安全運転してください」と伝えたいです。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

岡﨑さん岡﨑さん

診断漏れのないようにしてほしいですね。高次脳機能障害を知らない医師が多いと感じます。もっと高次脳機能障害について知ってほしいです。医療が進み、昔は助からなかった命が助かるようになりましたが、脳障害が残った人は社会から放置されている現状があります。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子を教えてください。

岡﨑さん岡﨑さん

左半身が自分の身体という感覚がありません。痛い、熱い、冷たい、痒いというのはわかりますが、どれだけ筋トレをしても、左半身に筋肉がつきません。おそらく脳からの指令がうまく身体に伝わっていないのだと個人的には思っています。生活は妻の理解のもと成り立っていますが、最近会社からパワハラを受け、精神科でメンタルケアとしてカウンセリングを定期的に受けています。

高次脳機能障害の認知を広めたい

●画像

編集部編集部

周囲に気を付けてもらいたいことはありますか?

岡﨑さん岡﨑さん

自分で行動をコントロールできない部分があるので、軌道修正してもらえると生きやすくなります。すべてに困難なわけでもなく、すべてを介護してほしいわけでもありません。少しの気遣いと小さな配慮で、困っていることが楽になります。事実を述べても「言い訳、甘え、逃げている」と返されてしまう辛さをわかってほしいです。何一つ嘘なんかついていません。

編集部編集部

あなたの障害を意識していない人に一言お願いします。

岡﨑さん岡﨑さん

脳に障害ができるとどれだけ生きにくいか考えてみてほしいです。「明日は我が身」ということもあるかもしれません。私の場合は「命が助かってよかったね」「障害は個性」と安易に言われたくないと思っています。

編集部編集部

現在、取り組まれていることはありますか?

岡﨑さん岡﨑さん

NPO法人を運営して、社会貢献活動をしています。児童養護施設で生活する子どもたちに笑顔を届ける活動や、ひきこもりを社会に出そうプロジェクトとして、子育てに悩む親御さんのメンタルケアや高次脳機能障害の啓発活動をしています。

編集部編集部

最期に、読者へのメッセージはありますか?

岡﨑さん岡﨑さん

見た目が普通でも、特性が十人十色あり、まわりの理解を得ることは難しい障害です。高次脳機能障害について知ってもらえると、当事者に対しての対応が変わり、過ごしやすくなる当事者は増えると思います。1人でも多くの方に高次脳機能障害を知ってもらいたいと思い、YouTube上で当事者の語り場を作りました。もしよければチャンネル登録(プロフィール参照)をお願いします。

編集部まとめ

身体の異変を感じて受診したところ、16年前の事故が原因で高次脳機能障害と診断を受けられました。様々な葛藤があったと思われますが、奥様のサポートのもと、現在では高次脳機能障害の認知を広める活動をされています。「大変な当事者は多いが、当事者以上に大変なのは周りの家族だと思う。当事者には寄り添う家族や支援者が必要」と岡﨑憲司さんはおっしゃっています。また、「障害を持つ人の困難を理解し、寄り添い気遣いのある社会づくりを目指します」と今後も認知拡大や社会貢献活動を継続される予定です。今後の活動に期待が高まりますね。

この記事の監修医師