帝王切開の判断基準やリスクを医師に聞く 双子や逆子だと帝王切開だと聞くけど本当? 自然分娩との違いは?
「妊娠・出産は何があるかわからない」とよく言われます。読者の中に、なんらかの理由で「帝王切開になる可能性もある」と言われて不安になっている妊婦さんもいらっしゃるかもしれません。そこで「帝王切開の判断基準やリスク」について、Medical DOC編集部が産婦人科医の金子英介先生( 金子レディースクリニック院長)に話を聞きました。
監修医師:
金子 英介(金子レディースクリニック)
目次 -INDEX-
帝王切開とはどんな手術? 予定帝王切開と緊急帝王切開の違いとは?
編集部
帝王切開とは、どんな手術なのでしょうか?
金子先生
妊婦さんが、何らかの理由でいわゆる普通分娩(経膣分娩)が難しいと判断されたときに、腹部、そして子宮を切開して赤ちゃんを取り出す方法です。
編集部
「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」があると聞きました。
金子先生
そうですね。文字通り、帝王切開の日をあらかじめ予定して手術を行うのが予定帝王切開(計画帝王切開)、予期せぬ事態が起こり、急いで赤ちゃんを取り出さなければならなくなった場合に緊急で行われるのが緊急帝王切開です。
編集部
帝王切開になるのは稀なケースなのですか?
金子先生
いいえ。最近はお産の20%以上が帝王切開というデータもあります。妊婦さんの4〜5人に1人は、帝王切開で出産しているという計算ですね。決してレアケースではありませんよ。
帝王切開になるのはどういう場合? 逆子や双子、2人目以降などどんなとき?
編集部
予定帝王切開となるのはどんなケースですか?
金子先生
要因として最も多いのは、帝王切開の既往、つまり以前に帝王切開をしたことのある妊婦さんが出産するケースです。ほかには逆子や、双子などの多胎の場合にも行われます。これらのケースが必ずしも帝王切開と決まっているわけではありませんが、リスクを考えると帝王切開が推奨されます。
編集部
1人目が帝王切開だと、2人目以降も帝王切開となるのですか?
金子先生
帝王切開の既往がある方が、その後に妊娠した場合、次も帝王切開による出産が推奨されます。これは、帝王切開の際に子宮を一度切開しているので、分娩中などにその傷が開いてしまい、子宮破裂となるリスクがあるためです。
編集部
では、緊急帝王切開はどのような場合に行われますか?
金子先生
赤ちゃんに、突如として何か心配な状態がみつかり、このままだと何か問題が生じると判断された場合(胎児機能不全)や、まだ妊娠中であるにもかかわらず胎盤が剥離してしまった場合(常位胎盤早期剥離)などには緊急帝王切開となります。母体側の要因として最も多いのは妊娠高血圧症候群です。目安として、血圧が160/110mmHgを超えた場合は緊急帝王切開の適応となります。 また、普通分娩でも、お産が長引いてしまい、これ以上は危険だと医師が判断した場合は、緊急帝王切開に切り替えます。
帝王切開で考えられるリスクとは 本当に怖くない? 母子が死亡してしまうことは?
編集部
赤ちゃんがいるのに麻酔をしたり、お腹を切ったりするのは少し怖いです。
金子先生
皮膚と子宮を切開しますので、普通分娩と比べるとやや母体に負担はかかるかもしれません。しかし、医師が、きちんとした理由のもとで帝王切開を選択したのであれば、赤ちゃんにとってはそれが最も安全な方法であるといえます。また、麻酔なども妊婦に使用しても問題ない、と定められたものを使用しますので心配はいりません。
編集部
手術時間はどのくらいですか?
金子先生
麻酔をしてから縫合が終わるまで、だいたい30〜60分です。実際に執刀してから赤ちゃんが誕生するまでは5〜10分くらいですね。
編集部
手術の傷跡は目立ちますか?
金子先生
切開方法は、縦切開と横切開があるのですが、傷の長さとしては、縦切開の場合は約10cm、横切開だと約15cmです。それぞれの特徴としては、縦切開は手術操作がシンプルで、迅速に赤ちゃんを取り出すことができるため、緊急性の高い場合は縦切開が選択されます。先ほど「実際に執刀してから赤ちゃんが誕生するまでは5〜10分くらい」と申し上げましたが、縦切開を選択し、急いで進めた場合は1〜2分くらいで赤ちゃんが取り出せます。横切開はやや時間がかかりますが、傷跡が目立ちにくいというメリットがあります。
編集部
費用はどのようになるのですか?
金子先生
普通分娩と異なり、帝王切開の場合は保険が適用されます。もちろん、ほかにも入院費や個室代などは、病院や産院、入院の日数などによって異なりますので、トータルの入院費用は人によって差があります。また、帝王切開になると保険適用となるため、独自に民間の医療保険などに加入している場合は保険金が入る場合があります。ご自身の補償内容を確認し、該当するようであれば手続きをしましょう。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
金子先生
緊急で帝王切開になる場合は処置を急ぐケースが多く、事前に医師からの説明を受けられない可能性もあります。そのような場合に備え、出産する病院や産院が決めたら、入院する前・してからも、なるべく多く産科施設のスタッフとコミュニケーションをとっておくと良いでしょう。そうすれば、何かあった際、説明を詳しく聞いたり、それを判断する時間がなかったりする場合でも、安心して処置を受けられると思います。
編集部まとめ
最近は「妊婦さんの4~5人に1人は帝王切開」というデータからもわかる通り、稀なケースではないようです。麻酔薬なども、妊婦さんに使っても問題ないものとのことで安心しました。そして何より、「医師が、きちんとした理由のもとで帝王切開を選択したのであれば、赤ちゃんにとってはそれが最も安全な方法」ということなので、過度に不安にならずにその時を迎えてもらいたいものです。そのためにも、普段からなるべく病院・産院スタッフとコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておくようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒182-0021 東京都調布市調布ケ丘3丁目19-13 |
アクセス | 京王電鉄京王線 布田駅 車で3分 京王電鉄京王線・京王電鉄相模原線 調布駅 車で4分 |
診療科目 | 産科・婦人科 |