早産はどの時期を指すの? 早産で生まれるとどんなリスクがある?
早産といっても、妊娠何周目で生まれたかによって色々なタイプがあります。一体、どんなときにどんなリスクがあるのでしょうか。今回は、早産についての疑問を「ローズマタニティクリニック」の前先生にぶつけてみました。
監修医師:
前 和幸(ローズマタニティクリニック 院長)
東京大学医学部医学科卒業。その後、各地の病院で産婦人科部長などを歴任。2021年、埼玉県さいたま市に「ローズマタニティクリニック」を開院。「かけがえのない命の誕生を、できる限り自然な状態で迎えて頂きたい」という思いを大切に、医師や看護師が一丸となって母子の健康を温かく見守っている。日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本医師会認定産業医。
早産の定義とは?
編集部
そもそも早産とは、どのような状態のことを指すのですか?
前先生
日本産科婦人科学会によると、「妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産」を早産と定義しています。なお、順調なお産のことを「正期産」と呼び、妊娠37週0日~41週6日までの出産が該当します。
編集部
「切迫早産」という言葉も聞きますが、どういう意味ですか?
前先生
簡単に言えば、早産になりかけている状態のことです。お腹が張ったり痛んだり、破水していたりすることがあって、早産が避けられない場合があります。
編集部
早産になるケースは多いのでしょうか?
前先生
現在、日本の早産率は世界的に見ても非常に少ないのですが、それでも早産児は約20人に1人の割合で誕生しています。早産は、何らかの理由で通常よりも早く出産する「自然早産」と、人為的に早産を起こす「人工早産」に分けられます。なお、早産のうちのほとんどが「自然早産」です。
編集部
世界的に見て日本の早産率は低いとはいえ、早産となるのは約5%と意外と多いのですね。
前先生
たしかに、日本は周産期医療が大変進んでいるので、世界的に見て早産の率は低いのですが、それでも一定数は存在します。一般に、早産で産まれた子は「早産児」や「未熟児」と呼び、体重によっては「低出生体重児」と「超低出生体重児」に分けられます。
早産によるリスクとは?
編集部
早産になると、どんなリスクがあるのですか?
前先生
通常、胎児はお腹の中でゆっくり時間をかけて成長します。しかし早産の場合、発育が不十分な状態で生まれてくることになるので、病気や障害をもつリスクが高くなるのです。
編集部
具体的には、どのような問題が起きるのですか?
前先生
まず、生存率の問題です。一般に、お腹の中にいる期間が短ければ短いほど、生存率が低くなるとされています。妊娠28週以降で生まれた赤ちゃんは生存率が95%であるのに対して、妊娠22~23週で生まれた赤ちゃんの生存率は50%というデータもあります。
編集部
なぜ、早産が生存率に影響するのですか?
前先生
出生直後に合併症を起こしたり、感染症にかかったりするリスクが高くなるからです。妊娠34週未満で生まれた場合は、新生児集中治療室(NICU)に入ることが多く、特別な医療措置をおこなうことが多くなります。幸い命に別状がなかったとしても、その後に後遺症が残ることもあるため、生存率が下がると考えられています。
編集部
早産で生まれることは、出生直後だけでなく成長過程においても影響がありますか?
前先生
はい。とくに重要なのは出生児の体重です。一般に早産で生まれると低体重になりがちですが、生まれた時の体重が少なければ少ないほど、脳性麻痺や精神発達遅滞、てんかんなどの後遺症を発症しやすいとされています。
早産になりやすいタイプとは?
編集部
どのような人が早産になりやすいのでしょうか?
前先生
早産を招くものとして、様々なリスク要因があります。例えば、「これまでの出産で早産の経験がある」、「喫煙の習慣がある」、「痩せ体型(BMIが18.5未満)である」、「長時間労働や重労働に従事している」、「前回の出産から半年以内の妊娠である」などの場合は早産を招きやすくなります。
編集部
様々なことが早産につながるのですね。
前先生
そうですね。ほかにも多胎妊娠の場合、子宮が狭くなったりお腹がはったりする関係で、早産になりやすいとされています。また、子宮頸がんの治療で「円錐切除術」という、頸部を切除する手術を受けたことがある場合、子宮頸管が短くなっています。そうなると、細菌が子宮に侵入しやすくなっており、早産のリスクが高くなります。
編集部
では、早産にならないようにするには、どうしたらいいのでしょうか? 予防することはできるのですか?
前先生
まずは、切迫早産の状態にいちはやく気付くことです。切迫早産の代表的な症状に「下腹部の張り」や「下腹部痛」があります。このような症状を感じたら、まずは安静にすることが重要です。しかし、それでも痛みや張りが消えない場合や少量の出血がある場合などは、すぐに受診するようにしましょう。
編集部
切迫早産の治療は、どのようにおこなうのですか?
前先生
通常は子宮収縮抑制剤を使用して、子宮が収縮するのを抑えます。外来で診察し、内服治療をおこなう場合と、入院して点滴治療をおこなう場合があります。
編集部
日常生活では早産にならないよう、どのようなことに気をつけたらいいでしょうか?
前先生
体を冷やさない、ストレスや疲れをためないなど、健康的な妊娠生活を意識しましょう。また、過度に動いてお腹に負担をかけるのも禁物です。ただし、あまり神経質になってもストレスがたまってしまうので、適度に続けることが大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
前先生
早産は決して少なくありません。しかし、早産になると母子ともに負担がかかり、大変な状況になることもあります。そうならないように、我々医療スタッフは細心の注意を払いながら対応しています。先ほど、早産になりやすい人のタイプを挙げましたが、そのほかにも、高齢になればなるほど早産のリスクが高まります。とくに、35歳以上は注意が必要です。かかりつけ医の指示を聞いて、何かあったらすぐに相談しましょう。
編集部まとめ
日本では、新生児に対する医療が非常に進化していますが、赤ちゃんの健康を考えれば、できるだけ早産は避けたいものです。そのためには、いち早く体調の変化などに気づくことが大切となります。何か不安なことがあれば、すぐかかりつけの医師に相談し、指示を仰ぐようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒336-0026 埼玉県さいたま市南区辻7丁目8-17 |
アクセス | JR埼京線「北戸田駅」 徒歩14分 |
診療科目 | 産科、婦人科 |