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母乳バンク 都内に新規開設へ

 更新日:2023/03/27

低体重で生まれた赤ちゃんのために、ドナーから集めた母乳を提供する母乳バンクの新たな施設が、日本財団の助成で都内に開設されることになりました。このニュースについて前田医師に伺いました。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

母乳バンクとは?

今回ニュースになった、母乳バンクについて教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

母乳バンクとは、ドナーから提供された母乳を低温殺菌処理して冷凍保管したものを、医療機関が必要だと判断した際に提供することを目的にした施設です。低体重で生まれる超早産児は、壊死性腸炎や未熟児網膜症などの様々な合併症を引き起こすリスクが高くなっています。壊死性腸炎は人工乳を与えると引き起こされやすくなるため、超早産児にはできるだけ腸の粘膜を成熟させる物質が含まれ免疫力を高める母乳を与えることが予防につながるとされています。そして今回、新たに日本財団の助成で都内に母乳バンクが開設されることになりました。現在、世界には50カ国600カ所以上の母乳バンクがあり、保健システムとして制度化されている国もあります。

ドナー登録の方法は?

母乳バンクにドナー登録して、実際に母乳を送るためにはどうしたらいいのでしょうか?

前田 裕斗 医師前田先生

一般社団法人日本母乳バンク協会の説明では、「ご自身のお子さんが必要とする以上に母乳が出ること」、「これまでに輸血や臓器移植を受けていないこと」、「血液検査の結果に異常がないこと」、「過去3年間に、白血病やリンパ腫など悪性腫瘍の治療歴がないこと」、「少なくとも3回以上(目安として計2リットル以上)母乳を提供できること」などが条件として挙げられています。同協会のHPにて申し込みをした上で、ドナー登録が可能か病院で受診して問題なければドナー登録されます。その後、説明に従って搾乳してクール便で母乳バンクに送付することで作業は完了となります。

新たな母乳バンクが開設される受け止めは?

新たな母乳バンクが開設される受け止めを教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

大変素晴らしいことだと思います。低体重で生まれるお子さんたち、とくに極、超低出生体重児と呼ばれる1000~1500g未満のお子さん達にとって母乳が届くかどうかは文字通り生きるか死ぬかの問題です。母乳栄養が早期に開始されるかどうかで、腸に穴が開く率や死亡率が変わってきます。もちろん、産んだお母さんからの母乳が届くのがベストですが、低体重のお子さんは早産のことが多く、早産では母乳が特に出にくいことが知られています。

しばらく母乳が届かない可能性がある場合、次善の策となるのがドナーミルクです。日本では、2014年に昭和大学豊洲病院内に初の母乳バンクが開設されていましたが、新型コロナウイルスの影響により2021年3月に閉鎖してしまいました。現在は民間企業の助力を受け、日本橋に開設された日本唯一の母乳バンクへ業務が移管されています。1つの母乳バンクだけではとてもドナーミルクを必要とするお子さんをカバーすることができません。今後もさらに母乳バンクが開設されることが期待されます。

まとめ

ドナーから集めた母乳を提供する母乳バンクの新たな施設が、日本財団の助成で都内に開設されることが今回のニュースで明らかになりました。一般財団法人日本財団母乳バンクによると年間5000人分のドナーミルクの提供体制を整える必要があるということです。

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