どんな症状なら「前立腺がん」が疑われる? 早期発見のために重要なポイントを医師が解説!
男性ならではの「前立腺がん」は、初期での自覚症状が乏しいとされています。前立腺がんの5年生存率は99%以上と“おとなしいがん”のように思えますが、その中身はどうなのでしょうか。今回は、Medical DOC編集部が泌尿器科医の高田先生(たかだウロクリニック)を取材しました。
監修医師:
高田 将吾(たかだウロクリニック)
前立腺がんとは?
編集部
前立腺は、男性の尿道のまわりにある組織と聞いたことがあります。
高田先生
はい、尿道を取り囲むように位置しているのが前立腺です。なお、自覚症状に関して言うと「前立腺肥大症」なら尿道を圧迫するように“内側に”進行してきますので、残尿感などが出やすいです。ところが、前立腺がんの場合は主に“外側に”がんができやすく、一般的に大きくなるスピードは早くありません。ですから、前立腺がんでは、かなり進行してから痛みや血尿などを自覚するようになります。
編集部
前立腺がんの初期の自覚は、ほとんどないということですか?
高田先生
そうなりますね。にもかかわらず、前立腺がんの罹患(りかん)率は男性のがんの中で第一位です。つまり、「50歳を過ぎたら、自覚の有無に関わらず疑ってみるべき」ということになるのでしょう。また、前立腺肥大症を併発することも少なくないので、残尿感が出たら念のため調べてみてください。実際に、私もこのパターンで前立腺がんを発見しています。
編集部
前立腺がんが男性のがんの中で第一位とは驚きです。
高田先生
第一位になったのは近年の出来事です。じつは、大豆に含まれるイソフラボンに、前立腺がんの予防効果があるとされています。かつての日本食には大豆が多く含まれていましたので、日本人の前立腺がんの罹患者数をある程度、抑え込めていました。しかし、食事内容の欧米化により、罹患者数が押しあげられたのだと思います。
編集部
前立腺がんの原因はなんでしょうか?
高田先生
遺伝、上記のような食生活、加齢などが考えられるものの、前立腺がんの大きな特徴は「男性ホルモンとの関係」ですね。これは、ほかのがんには見られない傾向です。また、統計から「親が前立腺がんだと子どもの前立腺がんリスクを“3~5倍”に引き上げる」ことがわかっています。
前立腺がんの治療の流れ
編集部
前立腺がんの自覚症状が乏しいとすると発見困難なのでは?
高田先生
血液検査でPSA(前立腺腫瘍マーカー)の値を調べれば、精度の高い診断を付けられます。しかし、PSA検査は、一般の健康診断の項目に含まれていません。そのため、50歳を過ぎたら、前立腺がん検診などのオプションを積極的に受けましょう。
編集部
前立腺がんの生存率は良好だと聞いたことがあります。
高田先生
たしかに、国立がん研究センターが出している「5年生存率」は99%以上となっています。ただし、「PSA検査で拾いやすく、早期治療に結び付けられているので99%」というのが実情でしょう。「何もしなくても生存率が良好である」というわけではありません。一定数の死亡例もありますし、前立腺がんがほかの臓器に転移したら、全く別の話になります。
編集部
PSA検査で確定診断が付けられるのでしょうか?
高田先生
いいえ。まずエコー検査やMRI検査を先にやって、最終的には前立腺の組織を取って生体検査に回します。そこで陽性なら確定診断となります。いずれにしても、疑わしければ生体検査で確認する流れです。前立腺がんの進行は遅いので、早期発見できれば根治も容易です。
編集部
治療が必要とされた場合、どのような方法で進めるのでしょうか?
高田先生
主に手術、放射線治療、ホルモン療法のいずれか、もしくは組み合わせて進めます。前立腺がんの悪性度や大きさ、周りの臓器への浸潤や転移の有無などによって、個人ごとに治療計画を立てていきます。先ほど申し上げたように、前立腺がんには男性ホルモンが関わっているため、ホルモン療法という「がんの中では安全でユニークな治療方法」が確立しています。加えて、ロボットを用いた腹腔鏡の手術も進歩しています。早期なら治しやすいがんということもあって、5年生存率が99%以上なのでしょう。
前立腺がんにならないためには
編集部
自覚が乏しいと、セルフチェックのしようがないように思うのですが?
高田先生
そうですね。前立腺がんは、ご自身の自覚や触診などで気づけるがんではありません。やはり、自主的なPSA検査の受診にかかってくるでしょう。あるいは尿の悩みを、前立腺肥大症や合併としての前立腺がんに結び付けて考えられるかどうかです。
編集部
喫煙との関係はどうでしょうか? よくタバコは「万病の元」とされていますが?
高田先生
喫煙や肥満も、前立腺がんのファクターです。また、禁煙はもちろんのこと、運動や栄養バランスのとれた食事も予防につながります。ただ、これらは万病の予防法でもありますよね。前立腺がんに固有の予防法となると、前述したように「大豆食品の積極的な摂取」でしょうか。ただし、偏食はしないでください。あくまで、栄養バランスを補う形での「大豆食品の積極的な摂取」です。
編集部
がん全体を考えたとき、ほかのがんの早期発見も気にかかります。
高田先生
胃がんや大腸がんなども心配ですよね。ただし、PSA検査は採血だけでできる“簡便な”方法です。採血検査自体は一般の健康診断でもおこなうので、実質的な手間となると「申込用紙の前立腺がんの項目にチェックを入れるだけ」だと思います。前立腺がんの早期発見を優先したがために、ほかのがんの発見が遅れるということにはなりません。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
高田先生
前立腺がんは、胃がんや大腸がんと比較すると「話題になりにくいがん」という印象です。しかし、男性の罹患率は第一位です。ステージが進むと、転移も起こるでしょうし、薬も効きにくくなります。一方、ロボットを用いた腹腔鏡手術なら短時間で安全ですし、治療痕が目立ちにくく、入院期間も短く済むはずです。「比較的容易に取り除けるリスク」ですので、ぜひ早期発見に努めてください。
編集部まとめ
前立腺がんを症状から疑う段階では、すでに相当な進行を許しているということでした。よって、早期発見は、無自覚なうちからのPSA検査にかかっています。50歳を過ぎたら、前立腺がん検診のオプションを、有効活用しましょう。ほかにも、健康管理と体重管理が予防を兼ねるので意識してみてはいかがでしょうか。
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