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「加齢黄斑変性」は放置すると失明も!? 要注意の見え方を眼科医が解説

公開日:2022/10/23  更新日:2022/10/19
「加齢黄斑変性」は放置すると失明も!? 要注意の見え方を眼科医が解説

「ピントが合わない」「輪郭がぼやける」「視界がゆがむ」など、見えにくさの中身にも色々とありそうです。はたして、加齢黄斑変性での見えにくさはどうなっているのでしょうか。今回は、この疑問をMedical DOC編集部が眼科医の三枝先生(三枝眼科医院)に投げかけてみました。

三枝 佳五

監修医師
三枝 佳五(三枝眼科医院)

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獨協医科大学卒業。獨協医科大学大学院修了。東京慈恵会医科大学医局入局。2009年、東京都葛飾区に位置する「医療法人社団慈成会三枝眼科医院」の理事長・院長職を継承。幅広い年代に対応した地域診療を提供している。医学博士。難病指定医、身体障害者福祉法(第15条)指定医。近隣の校医も努める。

加齢黄斑変性とはどんな目の病気?

加齢黄斑変性とはどんな目の病気?

編集部編集部

今回は、加齢黄斑変性について伺わせてください。まず、どんな目の病気なのでしょう?

三枝 佳五先生三枝先生

簡単に説明すると、まっすぐのものが“ゆがんで”見えたり、視界の中心に黒い膜のようなものが出たりする病気です。網膜の中心には「黄斑」という部分があり、ヒトは多くの情報を黄斑で見ています。加齢黄斑変性は、この黄斑が弱くなる病気ですね。なお、片目で発症しても、逆の目で視野を補うので、気づきにくいです。

編集部編集部

老眼と違って、ピントの問題ではないわけですか?

三枝 佳五先生三枝先生

違います。あくまで視界のゆがみや黒い膜が主な症状です。しかし、「加齢」という字がつくだけあって、老眼を併発しているケースも多々あります。このあたりの見分けは難しいので、あまり症状にこだわらず、片目ずつセルフチェックして「見えの異常」が感じられたら眼科を受診してください。

編集部編集部

そもそもの変性は、どうして起きるのでしょうか?

三枝 佳五先生三枝先生

「加齢・喫煙・遺伝」が三大要因とされています。とくに喫煙者は「なりやすい人」と言えるでしょう。これらのファクターによって黄斑がダメージを受けると、大きく2つの変化が生じます。1つは、黄斑の老廃物を吸収しようとして「新しい血管が生えてくるケース」です。この新生血管からにじみ出た水分によって黄斑が盛り上がると、視界をゆがめます。このタイプを「滲出型」と呼びます。

編集部編集部

続けて、もう1つのタイプについてもお願いします。

三枝 佳五先生三枝先生

黄斑がダメージを受けるところまでは一緒ですが、新生血管は生えず、栄養不足で萎縮する場合もあります。こちらは「萎縮型」と呼んでいて、視神経が麻痺しているような状態ですね。割合としては「滲出型」がほとんどで、急速に進行していきます。他方、少数派の「萎縮型」の進行は緩やかなのですが、治す有効な手だてがありません。

加齢黄斑変性による失明の危険性・発症から失明までの期間

加齢黄斑変性による失明の危険性・発症から失明までの期間

編集部編集部

加齢黄斑変性を治療しないとどうなるのでしょうか? 失明の可能性はありますか?

三枝 佳五先生三枝先生

網膜の中の「黄斑」という部分に限定した症状ですので、進行したとしても網膜全体の視力を奪う病気ではありません。そのため「社会的失明」と言われることもあります。例えば、「誰かいるのはわかるけれど顔がわからない」とか、「目の隅に映った塩を取ろうとしてそっちに向いたら塩が消えた」とか、そういう事態になり得るということです。こうした社会的失明は、滲出型の場合、比較的急速に進んでいきます。一方の萎縮型の場合、進行は緩やかですが、止めることができません。

編集部編集部

急な滲出型の場合、失明までどれくらいの猶予があるのですか?

三枝 佳五先生三枝先生

猶予を考えていると手遅れになります。とにかく、早期発見・早期治療開始が欠かせません。ちなみに一般の運転免許の要件は「両眼で0.7以上、片眼でそれぞれ0.3以上」です。タクシーに必要な普通二種免許なら「両眼で0.8以上、片眼でそれぞれ0.5以上」になります。視力低下によって現在の職を失いかねないという意味でも、社会的失明と言えるでしょう。

編集部編集部

やはり、早期発見が問われそうですね。

三枝 佳五先生三枝先生

ぜひ、そうしてください。インターネット上には、加齢黄斑変性専用の「碁盤の目」のようなチェックシートがあります。使用する場合は、視点を中央の黒い点に固定して、片目ずつチェックしてください。見えづらい部分があると、視点をその方向へそらしがちなのですが、これでは意味がありません。見えの違和感があったとしたら「よく見えるように工夫する」のではなく、そのことをもって眼科へご相談ください。

編集部編集部

加齢黄斑変性が片目だけに起こるということは考えられますか?

三枝 佳五先生三枝先生

起こり得ますし、進行度合いが左右で異なることもあります。新生血管の状態や萎縮度によるからです。こうした場合、逆の目でモノが正常に見えていると自覚は難しいでしょう。セルフチェックする際には「片目ずつ」が原則です。

視力低下・失明の不安に備える 加齢黄斑変性の治療法や予防法

視力低下・失明の不安に備える 加齢黄斑変性の治療法や予防法

編集部編集部

最後は治療方法です。どのように新生血管に対応していくのでしょうか?

三枝 佳五先生三枝先生

現在の治療の中心は「薬の注射」です。新生血管は、特殊なタンパク質によって“生えよう”とします。このタンパク質の働きを抑える薬があるので、黄斑に注射します。注意すべきは、「あくまでも進行抑制が目的であって、治す治療ではない点」ですね。なお、注射は複数回おこなうのが一般的で、経過観察を挟みつつ、一生続けていくケースもあります。

編集部編集部

レーザーなどで新生血管を焼くことはできないのでしょうか?

三枝 佳五先生三枝先生

かつての主流は、光やレーザーを用いた手術でした。しかし、新生血管は網膜の裏側に生えてきますので、どうしてもレーザーで患部を傷めてしまいます。結果として進行は抑えられるものの、レーザーが当たった部分の黄斑では見えなくなってしまうのです。

編集部編集部

次に予防方法ですが、病気問わず「禁煙」が叫ばれていますよね。

三枝 佳五先生三枝先生

とくに喫煙と黄斑変性症の関係は、医学論文で示されています。そのため、禁煙外来を利用してみてください。他方、加齢要因の対策として有用なのは「サングラス」です。ただし、これらは予防の域を出ませんので、本当に黄斑変性症が心配なら眼科検診で調べましょう。最後の遺伝要因についてですが、家族歴のある人は積極的に検査していただきたいです。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

三枝 佳五先生三枝先生

自分が病気であることを認めるのは、誰でも嫌ですよね。しかし、ヒトの寿命は年々、延びています。だとしたら、「目の寿命も延ばすべき」ですし、それが眼科の仕事だと考えています。ぜひ、身体の病気と同様に、目の病気にも注意を払ってみませんか。目が見えにくいのに体は元気という状態を、なるべくなくしていきましょう。

編集部まとめ

加齢黄斑変性になると、視界のゆがみや黒い膜といった症状が出ます。この黒い膜は「取れません」。黄斑という網膜の一部が変性してしまった結果として現れているからです。また、重要と感じたのは、セルフチェック時に「視点を動かさないこと」でした。「見えにくい→よく見よう」ではなく、「見えにくい→眼科直行」でいいのだと思います。

医院情報

三枝眼科医院

三枝眼科医院
所在地 〒125-0062 東京都葛飾区青戸5-8-10
アクセス 京成線「青砥駅」 徒歩8分
診療科目 眼科