加齢黄斑変性を予防するために覚えておきたい3つのコト
加齢黄斑変性は、視界の中心部がよく見えなくなってくる病気です。文字どおり、加齢の要因が強く、誰でも発症し得る病気でもあります。しかし、老化現象の一種だとしたら、予防はできるのでしょうか。今回は「シオノアイクリニック」の塩野先生に、この疑問を投げかけてみました。
監修医師:
塩野 陽(シオノアイクリニック 院長)
聖マリアンナ医科大学卒業。その後、聖マリアンナ医科大学病院眼科入局、東京大学先端科学技術研究センター国内留学、聖マリアンナ医科大学眼科助教を経験する。2019年、東京都足立区に「シオノアイクリニック」を開院。大学病院で積んだ専門性の高い臨床を地域医療にいかしている。医学博士。日本眼科学会専門医。日本糖尿病眼学会、日本眼科手術学会、日本網膜硝子体学会の各会員。
最近の研究でわかった新たな発症機序
編集部
目の怖い病気として「加齢黄斑変性」という病名を聞いたことがあります。
塩野先生
はい。加齢黄斑変性の罹患数は、視覚障害の原因となる目の病気の第4位を占めています。ヒトは、意識して視界から得ている情報のほとんどを、網膜の一部である「黄斑」で見ています。
編集部
その黄斑が、加齢によって変性するということですか?
塩野先生
そういうことです。一昔前までは、目の組織の老廃物が関係していると考えられていました。老廃物がたまると黄斑に炎症が起きて、新しい血管ができます。新しくできた血管は非常に脆いため、すぐに出血します。出血によって黄斑がダメージを受けるという仕組みです。しかし、ここ数年の研究で、老廃物と関係なくできる新生血管が発見されてきました。
編集部
血管がつくられるとどうなるのでしょうか?
塩野先生
新生血管によって網膜が壊れてしまい、正常に機能しにくくなってしまいます。そして、この新しい血管は一定の確率で突然、できてしまうのです。老廃物に関しては、無関係というより「たまっていると、より加齢黄斑変性になりやすい」程度の位置づけに変わりました。
加齢黄斑変性を予防するには
編集部
加齢黄斑変性を予防することはできないのですか?
塩野先生
日本眼科医会は、加齢黄斑変性の予防の“最も大切な項目”として「禁煙」を掲げています。(※)タバコに含まれる成分や喫煙による血管収縮が関係していると考えられているのでしょう。
※日本眼科医会「知っておきたい加齢黄斑変性―治療と予防―」
https://www.gankaikai.or.jp/health/51/
編集部
市販されているサプリメントは効果がありますか?
塩野先生
加齢黄斑変性の予防効果が確認されている特定のサプリメントはあります。片目がすでに加齢黄斑変性だったり、老廃物がたまったりしているような人は、医師と相談のうえ、サプリメントを飲んでおくといいでしょう。また、紫外線も加齢黄斑変性の原因の1つと考えられています。したがって、加齢黄斑変性に対しての予防方法は、「禁煙」と「一部のサプリメント」「紫外線予防」の3点です。
編集部
特定のサプリメント以外の、いわゆる「目にいいサプリメント」では意味がないということですか?
塩野先生
飲んで悪いことはないものの、「ハイリスクではない人に対して、どれだけ予防効果があるのか」が示されていません。また、「目にいいとされる食材」も同様で、食事指導が万人の加齢黄斑変性予防に効果的かと聞かれると微妙ですね。
初期なら治る見込みのある加齢黄斑変性
編集部
加齢黄斑変性はセルフチェックできるのでしょうか?
塩野先生
加齢黄斑変性用のチェックに多用されているのは、将棋盤のような「マス目状のシート」です。なぜなら、加齢黄斑変性の症状として多いのが、視野のゆがみだからです。直線のはずのマス目がゆがんだり曲がっていたりしたら、加齢黄斑変性かもしれません。
編集部
「視野の欠け」ではなく、見えている「視界のゆがみ」なんですね。
塩野先生
基本的にはそうです。ところが、視野中心部が黒ずんで見えにくくなることもあります。チェック自体はしていただきたいところですが、おかしな見え方がしたら迷わず眼科医に診てもらいましょう。
編集部
もし治療が必要だとしたら、どんな方法になるのでしょうか?
塩野先生
加齢黄斑変性に対する治療方法は、患部への注射がメインです。薬の成分によって「新生血管をつくる因子の命令」を抑えこみます。なお、ジェネリック薬の登場により、注射の薬価が半額程度に抑えられてきました。インターネットで散見される「3割負担で5万円前後」という薬価は、かつての新薬の費用です。ただし、ジェネリック薬に対する医師の考え方もあるでしょうから、受診する医院の薬価を事前に確認しておきましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
塩野先生
「マス目状のシート」でゆがみを覚えたら、加齢黄斑変性かどうかに関わらず、早急に受診してください。加齢黄斑変性は、早めに治療を開始すれば、回復が見込める病気です。他方で、黄斑へのダメージが進行してしまうと、失明に至ってしまう可能性もあります。そうならないためにも、早めの対策を講じていきましょう。
編集部まとめ
本来あってはいけないところにできた血管が加齢黄斑変性の原因とのことでした。科学的根拠が示されている予防法は「禁煙」「加齢黄斑変性予防のサプリメント」「紫外線予防」の3つです。また、視野の歪みをはじめとする異常があれば、放置せずに眼科を受診するようにしてください。早期発見・早期治療ができれば、深刻な事態に陥らずに済むかもしれません。
医院情報
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診療科目 | 眼科 |