筋膜リリースのやりすぎは痛みを悪化させてしまう可能性も! 正しいやり方を理学療法士が解説!
病院や整骨院に行くと、理学療法士や柔道整復師から施術の一環で「筋膜リリース」をしてもらえます。一方で、「筋膜リリースはやりすぎないようにしましょう」と専門家から言われたことがある人もいるでしょう。今回は、筋膜リリースをやりすぎてはいけない理由と正しい方法について、理学療法士の松下さんに解説していただきました。
監修理学療法士:
松下 凌也(理学療法士)
過度な筋膜リリースが痛みの原因となる
編集部
そもそも、筋膜リリースとは何ですか?
松下さん
筋膜リリースとは、筋膜のよじれやこわばりを解消するための手技です。日常的な不良姿勢・動作、長時間の同一姿勢、怪我などが原因で、筋膜の一部に過剰なストレスが加わり、筋膜によじれやこわばりが発生します。このよじれやこわばりが、筋膜の滑走を妨げ、本来の筋活動が出来なくなってしまいます。筋膜のよじれやこわばりを解消するために、徒手もしくは器具を用いて筋膜に直接アプローチする手技を筋膜リリースというのです。
編集部
筋膜リリースをやりすぎると、どうなるのですか?
松下さん
皮膚や筋肉の痛みが悪化したり、むくみ、だるさ、内出血などを引き起こしたりするリスクがあります。筋膜はとても薄い組織なので、筋膜リリースの際には弱い刺激で施術する必要があります。しかし、強い刺激で行うと、筋膜のみならず筋肉や皮膚に過剰なストレスが加わってしまい、筋肉や皮膚に炎症を発生させ、痛みが悪化してしまうのです。
編集部
痛みは治療が効いている証拠ではないのですか?
松下さん
施術中に多少の痛みが生じるのは仕方ありません。しかし、そもそも痛みとは生体の防御反応機構です。筋膜リリースなどの刺激で発生した痛みは、組織が傷つくのに伴って発生しており、「これ以上刺激を加えないでくれ」という体からの合図なのです。なので、痛みが悪化するほどの強い刺激で行うのは、筋膜リリースにおいては間違った方法だと言えます。
編集部
筋膜リリースをしてはいけないケースがあるのですか?
松下さん
始める前から、患部に痛みが発生している人や怪我をしたことのある人は、注意が必要です。怪我をした人やすでに痛みを抱えている人は、筋膜や筋肉が特にこわばっている可能性があります。硬くなった筋膜をリリースするときに多少の痛みは生じますが、一般の人と比べて痛みが増悪・持続しやすい傾向にあります。そのため、闇雲に我流で行わず、きちんと専門家に一度指導してもらうのがおすすめです。
筋膜リリースには最適な強度と頻度がある
編集部
最適な強度はどうすれば分かるのですか?
松下さん
筋膜リリースの刺激強度は被験者が感じる強さに依存しています。多くの場合、刺激が強すぎる傾向にあります。先ほども話しましたが、筋膜は薄い組織なので弱い刺激でもリリースが可能です。はじめは「物足りないなあ」と思うくらいの強度で行うのが良いでしょう。強度が強すぎる場合、防御性筋収縮という筋肉の収縮が出てきます。実施中に筋肉がこわばってきたら、少し弱めると良いでしょう。
編集部
毎日行っても問題ないでしょうか?
松下さん
基本的には問題ありません。こまめな筋膜リリースにより、柔軟性を維持できます。ですが、毎日行う場合には、注意点があります。それは、短時間かつ低強度を意識することです。気になる部位を1分程度で構いません。入浴後の筋膜がほぐれているタイミングに実施するのがおすすめです。慣れてきたら、1日2~3回実施するのも良いでしょう。体調が優れない場合や怪我している人は無理しないようにしましょう。
編集部
正しい方法で実施すれば、どのような効果が期待できますか?
松下さん
筋膜リリースの主な効果としては、身体の柔軟性向上、痛みやむくみの改善、バストアップなどです。筋膜のよじれ・こわばりを解消することで、筋膜だけでなく、全身のバランスが整います。また、日々の継続により身体を常に良いバランスに保つことができ、次第に本来の筋活動や動作を獲得できるのです。
正しい方法さえわかれば、一人でも実施可能
編集部
筋膜リリースは、やはり専門家にしてもらう必要があるのでしょうか?
松下さん
いいえ、正しい方法さえわかれば、一人でもできます。確かに、専門家にしてもらうほうが、より効果的に実施してもらえます。しかし、毎回してもらうために、病院や整骨院に通う手間や費用がかかるのも大変です。そのため、正しい方法を習得し、常日頃から筋膜リリースを継続すると良いでしょう。自分の身体にあった方法を一度きちんと専門家に指導してもらうことをおすすめします。
編集部
一人でできる方法を教えてください。
松下さん
肩甲骨はがしという方法がおすすめですね。手を背中側に回し、反対側の肩甲骨の下に指を入れ込みます。これは肩や首のこりへの効果が期待でき、椅子に座ったまま一人でもできる安全な方法です。また、フォームローラーという器具を使用することで、一人ではしにくい部位も効果的にリリースできます。器具を使用する際は、強い刺激が加わりやすい傾向にあるため、注意しましょう。
編集部
正しい方法で実施するためのポイントはありますか?
松下さん
ポイントは、面でアプローチする意識を持つことです。筋膜はとても薄い組織なので、指圧のように局所を圧迫するような方法では、過剰に強い刺激が加わってしまいます。筋膜や筋肉、皮膚を傷つけないようにする必要があります。施術するときの手や器具の接触面積をなるべく大きくし、面を動かしている意識を持つと、効果的に筋膜を動かせます。
編集部まとめ
筋膜リリースは、正しい方法で実施する必要があることが分かりました。やればやるほど効果が得られるものではなく、各個人に最適な強度と頻度を守ることが重要です。もし自分で筋膜リリースをして悪化した場合は、すぐに専門家に相談しましょう。