「肌や唇の乾燥は食事で改善できる」これって本当なの?
肌や唇が乾燥するとメイクのノリが悪くなったり、カサカサしたり、裂けて血が出たりする事もあると思います。ひどくなると赤み、湿疹、かゆみが現れることもあるでしょう。乾燥対策と言えば多くの人は外側からの保湿を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、管理栄養士の梶谷さんによると、食生活で乾燥しにくい体質に改善していく事ができるとのこと。今回は肌や唇の乾燥について、解説していただきました。
監修:
梶谷 彩香(管理栄養士)
神戸女子短期大学食物栄養学科卒業。全国展開する給食委託会社で3年間栄養士として働き、在職中に管理栄養士の資格を取得。その後、急性期・回復期病院で管理栄養士として現在まで勤務。栄養・食事・病気・健康等のわかりにくい内容を、わかりやすく解説し情報発信している。
肌や唇が乾燥する原因は?
編集部
そもそも肌や唇はなぜ乾燥するのですか?
梶谷さん
肌や唇の乾燥に関係するのは皮膚の一番外側にある角質層という部分です。角質層には中と外に対するバリア機能があり、外に対してはアレルゲンや異物などの侵入を防ぎ、中に対しては水分を内部に留める働きをします。しかし、このバリア機能は生活習慣の乱れや紫外線、加齢、冷暖房による空気の乾燥等によって低下してしまいます。
編集部
保湿クリームなどでは防げないのですか?
梶谷さん
皮膚から水分が逃げるのを防ぎ、皮膚を保護するには保湿クリームは重要です。しかし、肌や唇の乾燥は食生活も大きく関わっています。いくつかの栄養素が不足するとターンオーバーが活発に行われません。ターンオーバーとは皮膚の古い細胞が新しい細胞に入れ替わる一連のサイクルのことで、皮膚の細胞は約4〜6週間で完全に新しいものと入れ替わると言われていますが、食生活や体調が悪いと新陳代謝の低下や、細胞に栄養が行き渡らないことが原因で新しい皮膚作りが行われず、乾燥した古い皮膚が残ってしまうと考えられています。
編集部
どのような栄養素が乾燥対策に重要なのでしょうか?
梶谷さん
基本的にはバランスの良い食生活が重要ですが、その中でも特に気にして摂っていただきたい栄養素は、たんぱく質とビタミンB群、ビタミンAの3つです。
肌や唇が乾燥する人が積極的に摂りたい栄養素って?
編集部
上述している栄養素について教えてください。まずはたんぱく質からお願いします。
梶谷さん
たんぱく質は簡単に言うと筋肉や肌を構成する栄養素です。肌や唇、髪の毛などそのものと言える栄養素ですので、不足すればハリ・ツヤが無くなり、体調も悪くなって代謝も低下するため、見た目もカサカサで、すぐにあかぎれが起こる様な不健康な状態になってしまいます。多く含まれているのは肉や魚、卵、乳製品などの動物性食品で、植物性食品では納豆、豆腐にも含まれています。植物性食品は動物性食品に比べて脂質が少なく良質なたんぱく質です。
編集部
ビタミンが2種類ありますね。まずビタミンB群から説明をお願いします。
梶谷さん
ビタミンB群の働きはターンオーバーを促進して、肌にハリと弾力を与えてくれます。ビタミンB群は単一の栄養素ではなく8種のビタミンの総称です。その中でもB2とB6が乾燥対策に良いとされていますが、細かくなりすぎるためB群と覚えてもらえれば大丈夫です。レバーや青魚に多く含まれていますが、普通の食事を摂っていれば不足することはないと言われています。つまりジャンクフードや脂っこい料理など偏ったものを多く食べていると不足する可能性があります。
編集部
ビタミンAはB群とどう違うのですか?
梶谷さん
ビタミンAが不足すると皮脂腺や汗腺の働きが低下するため、肌の潤いが低下します。また、バリア機能も低下するため、炎症が起きやすくなるなど健康を保つためには重要な栄養素です。ビタミンAはレバーやうなぎ、緑黄色野菜に多く含まれています。しかし、摂りすぎると体内に蓄積するため適量の摂取を心がけて下さい。
編集部
ほかに肌や唇の乾燥に良い栄養素はありますか?
梶谷さん
ビタミンCはコラーゲンの生成を助けて、肌をみずみずしく保ってくれます。柿、キウイ、フルーツなどに多く含まれていますね。ビタミンEは血行をよくし、新陳代謝を促進します。アーモンドやかぼちゃ、キングサーモンなどに多く含まれています。
肌と唇に潤いを取り戻す食生活
編集部
教えて頂いた栄養素はサプリメントなどで補ってはいけないのでしょうか?
梶谷さん
サプリメントはあくまでも、普段の食生活で不足しやすい栄養素を補うものですので食事の代わりにはなりません。また、特定の栄養素を過剰摂取することによって体調不良を引き起こすこともあります。例えばビタミンAは妊娠初期に過剰摂取すると胎児の奇形リスクが高まります。また、嘔吐や頭痛などの症状も報告されています。さらに、サプリメントは特定の栄養素しか補えないため、食事全体での栄養素は不足気味になります。したがって、サプリメント摂取を前提に考えずに、サラダを一品追加するなど食事バランス改善に務めることが健康への近道です。
編集部
朝食を抜いてしまうことが多いのですが、どうしたら良いでしょうか?
梶谷さん
朝食も含めて食事を1食でも抜くと1日に必要な栄養が不足します。また、3食バランス良く食べることで、体温や肌の代謝を高めます。特に朝食を抜くと基礎代謝が低下する原因になるので、しっかりとした朝食が取れない場合でも野菜ジュースやスムージーなどから始めてみましょう。
編集部
外食や中食が多いと肌や唇は乾燥しやすいのでしょうか?
梶谷さん
外食や中食で肌や唇が乾燥しやすいというわけではありません。しかし、外食や中食ではファーストフードや丼もの、麺類、揚げ物などの脂質や炭水化物の摂取量が多くなってしまいます。その様な食事では乾燥予防に必要な栄養素が不足するため、出来れば利用頻度を少なくして下さい。どうしても外食や中食の機会が多い人は、ゆで卵、サラダチキン、豆腐、野菜のスープ、サラダなどを一品加えてバランスの良い食事になるように意識して下さい。
編集部まとめ
肌や唇の乾燥は、必要な栄養素を意識したバランスの良い食事で改善できることがわかりました。外側からの保湿だけでは限界があるため、内側からの体質改善が重要です。肌や唇の乾燥対策に良い栄養素を意識するだけでなく、日々の食生活を見直してみましょう。