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母乳を絞り切らないと乳がんになるってウソ? 本当? 「卒乳・断乳ケア」について詳しく教えて!

 更新日:2023/09/29

母乳を絞り切らないと乳がんになると聞いたことはありませんか? 今回はそれが事実なのか、また母乳が溜まらないようするための卒乳・断乳ケアはどのように行えばよいのかを、「看護師・助産師」の古市さんに話を伺いました。

古市 菜緒さん

監修
古市 菜緒(看護師・助産師・保健師)

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助産師として1万件以上の出産に携わり、5000人以上の方を対象に産前・産後セミナー等の講師を務める。現在バースコンサルタントを起ち上げ、高齢出産の対象とされる35歳以上の女性の「妊娠・出産・育児」をサポートする活動や、関連記事の執筆・監修・商品監修等に携わる。

授乳は乳がんのリスクを下げてくれる

授乳は乳がんのリスクを下げてくれる

編集部編集部

まず、母乳について教えてください。

古市 菜緒さん古市さん

母乳は母親の血液を材料としており、乳房にある乳腺で生成されたあと、乳管を通って分泌されます。母乳はヒト由来の栄養であることから、赤ちゃんにとって最適な栄養であり、赤ちゃんを守ってくれる免疫物質が豊富に含まれています。

編集部編集部

乳がんのことについても教えてください。

古市 菜緒さん古市さん

乳がんは乳腺の組織にできるがんで、主に乳管から発生しますが、一部は乳腺小葉からも発生します。乳がんの主な症状は、乳房のしこりがあげられますが、ほかにも、乳房にえくぼやただれができたり、左右の乳房の形が非対照になったり、授乳中ではないのに乳頭から分泌物が出たりといった症状があげられます。

編集部編集部

母乳と乳がんは関係があるのでしょうか?

古市 菜緒さん古市さん

授乳をしている人、また授乳を経験された人は、していない人に比べて乳がんのリスクが下がるという研究報告があります。そのため母乳が出て、授乳をされている人は乳がん発生予防につながるといえます。

「母乳を絞りきらないと乳がんになる」は事実ではない

「母乳を絞りきらないと乳がんになる」は事実ではない

編集部編集部

母乳を絞りきらないと乳がんになると聞いたことがあります。

古市 菜緒さん古市さん

母乳を絞り切らないからといって、乳がんになるということはありません。母乳が溜まり「乳腺炎」になることはありますが、母乳が溜まることで乳がんを発生させることはありません。

編集部編集部

乳腺炎とは具体的にどのような症状ですか?

古市 菜緒さん古市さん

授乳時の乳腺炎には、乳汁がうまく出ずに乳腺内に溜まってしまうことによる「うっ滞性乳腺炎」と、乳腺に細菌が侵入して感染を引き起こす「化膿性乳腺炎」があります。乳腺炎の症状としては、乳房にしこりができたり、腫れ・熱感・発赤も伴うことも多く、高熱がでたりもします。しこりなどがあっても、痛みを伴わない段階でマッサージや圧迫搾乳などの適切な処置をすれば、速やかに改善しますが、対処が遅れて悪化すると、乳房の痛みだけではなく悪寒や関節痛などの全身症状が出現します。

編集部編集部

乳腺炎になりやすいのはどういう場合ですか?

古市 菜緒さん古市さん

「うっ滞性乳腺炎」は、急な断乳のときなど、母乳の生成と需要のバランスが崩れた時に起こりやすくなります。また「化膿性乳腺炎」は、授乳時に乳頭が傷つくなどして、その傷からの感染で起こりやすいようです。そのため、卒乳や断乳をする場合は、その後の乳腺炎を予防するためにも、乳房ケアを行うことが大切です。

効果的な卒乳・断乳ケアとは

効果的な卒乳・断乳ケアとは

編集部編集部

卒乳と断乳について教えてください。

古市 菜緒さん古市さん

卒乳」とは今まで母乳を飲んでいたお子さんが、自然に母乳を飲まなくなることをいいます。それとは逆に、母親の意思で授乳をやめることを「断乳」といいます。どちらも、その後、乳腺炎になる可能性があるため、乳房ケアが必要になります。

編集部編集部

卒乳と断乳の方法について教えてください。

古市 菜緒さん古市さん

卒乳も断乳も徐々に授乳の回数や授乳量を減らすことで、母乳の生成量を減少させていくことが理想です。卒乳のタイミングはお子さんによってそれぞれですが、卒乳前には自然と授乳の回数と量が減っていきます。しかし、断乳は母親が授乳をやめるという強い意思と、計画性をもって進めていかないとなかなか上手くいきません。また、急な断乳は母乳が過剰に乳房に貯留してしまうため、その状態が続くと乳腺炎を引き起こす原因となります。

編集部編集部

卒乳や断乳ケアのコツはありますか?

古市 菜緒さん古市さん

基本は徐々に授乳回数を減らし、母乳の生成量を減らすことです。しかし、授乳後は反射的に次の母乳も作られてしまいます。そのため、授乳後に胸の張りを感じる場合は、その部分をクーリングし、母乳の生成を抑えることが必要です。クーリングをすることで、母乳の成分である血液の循環を穏やかにすることができます。しかし、体を冷やすことにもなるため、クーリングは気持ちいいと思うぐらいに留めておく必要があります。また、母乳が残っているからといって、むやみに搾乳をしてしまうとそれが刺激になり、さらに母乳が生成され、ひどい場合は張り返しがみられます。マッサージが必要なぐらいの胸の張りや痛みを感じるようであれば、助産院や近くの産婦人科の母乳外来に相談し、ケアを受けることをおすすめします。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージがあればお願いします。

古市 菜緒さん古市さん

母乳が溜まりすぎることで乳がんになることはありません。しかし、卒乳・断乳のタイミングはひとそれぞれで、ケアの方法も違うため、場合によっては乳腺炎になる可能性があります。一度、乳腺炎になったことがある方は、再発しやすいため、断乳の際は、しっかり計画を立てて、母乳量を減らせるようにしましょう。

編集部まとめ

母乳を絞り切らないことで、乳がんになるわけではないことが分かりました。しかし、卒乳や断乳ケアをしっかり行わないと乳腺炎になる可能性はあるとのことです。乳腺炎にならないためにも、ケアに不安があるようなら専門家に相談をしましょう。

この記事の監修看護師