~実録・闘病体験記~ 定期健診を1年サボったら「大腸がんのステージ3」だった
大腸がんは早期に発見することができれば、治癒する可能性の高いがんとして知られています。闘病者の昇平さんは、定期健診を1年怠ってしまい、発覚したときにはステージ3でした。発覚のきっかけは、軟便と血便が続いたことだったそうです。手術が無事に終わり、現在は元気に職場にも復帰している昇平さんに、発症の経緯やその後の暮らしについて話しを聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年8月取材。
体験者プロフィール:
昇平さん
滋賀県在住、1983年生まれ。結婚し2児の父。診断時の職業は大阪のスポーツクラブ2店舗のマネージャー。鮮血便と1カ月以上の軟便が続き、2021年3月下旬に消化器内科クリニック受診。同年4月初旬に大腸がん(ステージ3c)が判明し、4月下旬にがんセンターに入院し手術を受けた。5月初旬に退院してからは休職し、療養。6月から在宅ワークを始め、リハビリも開始。7月、大阪のフィットネス店舗に週3日勤務、週2日在宅ワークで職場復帰。現在では、週7本のスタジオレッスンをこなしている。
記事監修医師:
梅村 将成
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
大腸がん発覚前は血便と軟便が続いた
編集部
大腸がんが判明した経緯について教えてください。
昇平さん
身体の症状として、血便と1カ月以上の軟便があったのでクリニックを受診しました。最初のクリニックでは大腸カメラの設備がなく、大きな病院へ紹介状を書いてもらい、そこで大腸カメラの検査を受けたんです。検査が終わり、医師より情報提供書を受け取ってクリニックの先生に渡したら、2日後にクリニックにて、診断の結果を医師から聞かされました。
編集部
結果を聞いたのは最初のクリニックということですね。
昇平さん
そうでした。病院で見せられた書類には5枚の写真が写っており、素人が見ても明らかに様子のおかしい大腸内部が映し出されていました。診断は、大腸がんの「ステージ3c」でした。直腸S状部に握り拳程の腫瘍があり、腫瘍は内壁だけでなく、外壁を侵食していました。腫瘍の一部が外壁から飛び出している状態でした。医師からは「大腸がんですね、がんセンターに紹介状を書きますので、すぐに行ってください」と。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
昇平さん
呼吸がしづらくなり、涙をこらえることができず、一気に血の気が引いたのを覚えています。真っ先に「死」が頭をよぎりました。大腸がんの知識はなかったのですが、腫瘍の大きさから、だいぶ進行していることはわかりました。一方で、「会社はどうしよう」「がん保険に加入していただろうか」「私の収入がなくなったら家族は今後どうなるんだろう」と、具体的なことが頭を巡り、意外に冷静になっている自分に驚く部分もありました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
昇平さん
直腸S状部に腫瘍があり、その腫瘍が外壁まで侵食し、飛び出している状態なので手術で切除するが、周辺への転移も考えて、広めに切除を行うと伝えられました。がんになったことよりも、がんの侵食具合で切除部が広範囲になった場合、人工肛門になる可能性もあると伝えられたことが最も私の心に突き刺さりました。
排便障害以外は術前と変わらぬ生活
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
昇平さん
病気が発覚する直前までプール指導、スタジオレッスン、トレーニングをバリバリこなしていました。大腸がんだと診断されてから、数日で単身赴任先の大阪から滋賀へ帰省し、手術に向けての準備に入りました。食生活ではうどんなどの消化にいいものを食べるように切り替えました。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
昇平さん
家族の存在です。滋賀の自宅での療養期間や入院までに過ごした日々は、これまでの人生で味わったことのない充実した日々でした。これまで休みもなく、単身赴任で家族とも会えない時間が多かったため、家族と過ごせる時間は私にとってとても幸せな時間でした。大腸がんであることはどこか他人事のように感じていたように思います。がん患者は常に落ち込んでいるわけではなく、意外と前向きに生きている人もいるんです。
編集部
術後の生活や現在の体調などについて教えてください。
昇平さん
術後の回復はとても早かったと思います。退院の翌日から自宅で腕立て伏せをはじめ、退院後1週間で腕立て伏せ50回はできるようになりました。夜は22時に就寝、朝は6時に起床して家の周りを1時間程散歩しています。食事もお粥やうどんなどをよく噛み、時間をかけて食べるようになりました。術後1か月後にはフィットネスジムで以前と変わらない強度でトレーニングができるまでに回復しました。
編集部
術前と異なっていることは?
昇平さん
排便に関わる直腸を広範囲で切除したため、排便障害には今でも悩まされています。例えば、食事を食べ終わる前に便意を感じ、食後1時間はトイレのそばにいないといけません。また、便意を我慢できる時間がとても短くなったため、トイレが近くにない状況が少し不安に感じていました。しかし、慣れてしまえば工夫して対処できることもわかったので、今では大きなストレスを感じなくなりました。何を食べたらお腹をくだすのか、それさえわかれば全く問題ありません。排便障害以外は術前と全く変わらず、一般の方と同じように生活できています。
がんは定期健診で早めの発見を
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
昇平さん
もっとわがままに、思ったように生きてください。がんになって考えを改めた私はいま幸せです。嫌われる勇気を持って、自分が幸せになることを最優先に生きてください。人生一度きり、家族と過ごす時間があなたにとって一番幸せです。
編集部
大腸がんを意識していない人に一言お願いします。
昇平さん
がんは、調べれば調べるほど難解です。発がん性物質、添加物などを気にし始めると何も食べられなくなります。発がん性のないものだけ食べる生活をしようとすれば、食費が一気に家計を圧迫するでしょう。僕がおすすめの予防法は、「笑う」ことです。笑うことは免疫力の向上に大きくかかわってくるそうです。SNSで知り合ったがん患者の方々は驚くほど元気で、はつらつと笑っておられます。私が学んだ体験談や資料には、笑うことの重要性に触れられているものが多かったです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
昇平さん
入院中、看護師の皆様には大変元気をいただきました。もちろん執刀していただいた医師の方々にも大変感謝しております。日々、不安を感じて過ごしている患者に対して、誠心誠意接していただきました。これ以上望むことはありません。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
昇平さん
会社や地域で行う定期健診などで早期発見できれば、がんが治る可能性は高まります。私は定期健診を1年サボってしまい、ステージ3での発見となりましたが、現在は元気に社会復帰しています。やはりがんは大変な病気です。薬をもらって終わりとはいきません。手術となれば休職を余儀なくされますし、ステージ0であっても転移、再発に数年間怯えて暮らすことになります。後悔のない選択をして、後悔しない生き方をしてほしいです。
編集部まとめ
大腸がんは、初期に気付いて治療をできれば経過の良いがんとして知られています。しかし、大腸がんの初期には症状が出ないことがほとんどなので、定期的な健康診断や人間ドッグを受けることが大切です。昇平さんの談話から、運動を積極的に行い元気にしていてもがんになる可能性があること、運動習慣があったため術後の回復が早かったこと、笑うことの大切さを実感されたことを教えていただきました。