健康診断のC判定はチャンスとして活用すべし! 再受診するべき理由とは
病気とも言えず、かといって健康とも言いきれない健康診断の「C判定」。このモヤモヤ感が、ひょっとしたら再受診を遠ざけているのかもしれません。今回は、あらためてC判定の意味するところや健診後にすべきことを、「福本医院」の福本先生に伺いました。
監修医師:
福本 淳(福本医院 院長)
神戸大学医学部医学科卒業。大学病院や民間医療機関で主に循環器外科の診療を積んだ後の2020年、大阪府大阪市に「福本医院」を開院。満足を重視した「質の高い医療サービス」の提供に務めている。医学博士。心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科修練指導者、日本外科学会外科専門医、日本循環器学会専門医。
C判定だと保険を使った検査や治療が認められる
編集部
健康診断の結果は、アルファベットで表記されますよね?
福本先生
はい。判定区分については日本人間ドック学会が次のように定めています。「A:異常なし」「B:軽度異常」「C:要経過観察(生活改善・再検査)」「D:要医療(D1:要治療/D2:要精密検査)」「E:治療中」です。
編集部
「D」の後に数字が付いていることもあるのですか?
福本先生
ありますが、付いている数字の意味を個々に覚える必要はありません。それよりも、その後の文面に書かれている内容を守るようにしましょう。例えば「3カ月後に医療機関を受診して再検査」とあったら、実際に再検査をお願いします。
編集部
そこで本題です、C判定の「生活改善・再検査」を無視しているとどうなりますか?
福本先生
「何かしらの疾患リスクを抱えたままで過ごす」ということですので、病気になるとも健康でいられるとも限りません。ただし、健康でいられるとしたら「A」判定になるはずなので、問題があるかもしれないことは自覚いただきたいですね。また、考え方によっては、「病気に対する早期発見のチャンスをもらった」とも言えるわけですから、このチャンスを活かしましょう。
編集部
あまり嬉しくない「チャンス」です……。
福本先生
C判定後の再検査や治療には保険が認められます。つまり、費用補助を受けながら病気を治せるチャンスでもあるのです。逆にA判定であるにもかかわらず、心掛かりなことを検査しようとすると、自費扱いになってしまいます。その意味で、C判定はチャンスなのではないでしょうか。
編集部
「3カ月後に再検査」とあると、「まだ病気ではないの」と捉えてしまいます。
福本先生
半分は正解で、半分は間違った捉え方ですね。病気を“ある特定の期間だけ”で評価することは危険です。進行しているかもしれないし、快方に向かっているかもしれませんからね。つまり、「今は病気といえないけど、いずれそうなるかもしれない」の「C」と、「今は病気といえそうだけど、いずれ治るかもしれない」の「C」があるということです。
検査結果がどちらに転んでも、検査の意義はある
編集部
要するに、下り坂にいるのか上り坂にいるのか、時を置いて診ないとわからないということですか?
福本先生
そういうことです。そして、「上方向が病気」だとして、どのくらいの標高にいるのかで「○カ月」の数値が変わってきます。当然、頂上に近ければ近いほど、あまり間を置かずに確認しておきたいですよね。あるいは、中性脂肪の異常値のように「命にあまり直結していない項目」なら緊急性が乏しいので、「より長期の推移を見てみましょう」ということになります。
編集部
例えば「6カ月」と書いてあったとして、3カ月で診てもらうことに意味はありますか?
福本先生
3カ月だと変化の乏しい可能性が高い場合に「6カ月」と書かれているのですが、ご心配なら、医師にご相談されてもいいでしょう。3カ月と6カ月の差は“医師のさじ加減”によっても生じますので、流動的な症例もあります。ただし、実際に医師が迷うような場面では、厳しめに「3カ月」で診ようとすると思います。
編集部
もし、怖いがんとかだった場合、この「数カ月の違い」が予後をわけることってあるのでしょうか?
福本先生
一般的にはありません。怖いがんが疑われる場合は「D判定」になります。なお、健康診断での病気の発見には限界がありますので、ご心配でしたら「人間ドック」をおすすめします。プランについては種類が多く、高価であればあるほど発見率が上がると考えていいと思います。
編集部
一方で、下り坂判定が出ることもあるわけですよね?
福本先生
はい。ぜひ、その結果を「健康であることの自信」としてもち帰っていただきたいですね。「悪い結果」に限らず「良い結果」を知ることも、再受診や再検査の大きな目的です。自分が、今どんな状態にあるのかわからないのは怖いですよね。結果の善し悪しに限らず、結果を確認しておいて損はありません。
C判定は、かかりつけ医をもつチャンスでもある
編集部
C判定が出たとき、再受診先が同じ医療機関とは限らないですよね?
福本先生
はい。初回検査時の医療機関に相談して教えてもらってもいいですし、ご自身で探して再受診してもいいと思います。その場合の標榜科は、どの検査項目に引っかかったのかで変わってきます。分からなかったら、初回検査時の医療機関に聞いてみましょう。
編集部
医療機関によって「C」の意味や評価が異なっていることはないのですか?
福本先生
判定には判定した医師の主観や判断がどうしても入りますので、多少のばらつきはあっても仕方がないかと思います。もっとも、大きな振れ幅はないので安心してください。
編集部
年を置いて健康診断の受診先が変わると、何もしていないのに「C」が「A」になることも考えられますか?
福本先生
あり得ますね。肝臓など再生能力の高い臓器では、自然にデータが回復することがあります。また、検査機器の問題もあるでしょう。とくに心電図検査では、最近の機器のAI診断で判定が変わることがよくあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
福本先生
C判定は放置しない方がいいに決まっています。本来なら、自分のことをよく知っているかかりつけ医と相談しながら進めていきたいものです。しかし、健康診断を受けているということは、「今まで健康で、かかりつけ医が不要」だったのでしょう。C判定も1つのチャンスと捉えて、この機会に何でも相談できるかかりつけ医をもってみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
モヤモヤ感があったとしても、C判定は放置しないに限ります。そして、C判定は「早期発見で病気が解決できる」、「国がその後の処置に対して保険適用を認めてくれる」、「かかりつけ医をもつことにより、正確な情報のやりとりができる」チャンスとなり得ます。総じて、悪いことばかりではない印象です。いずれにしても、自分の体の状態を明らかにしておきましょう。
医院情報
所在地 | 〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場3-6-19 心斎橋ワダビル2F |
アクセス | 大阪メトロ「心斎橋駅」 徒歩2分 |
診療科目 | 内科、循環器内科、心臓血管外科 |