美肌目的の垢すり、かえって肌を傷つける原因にも。「おこなう際は頻度に注意」
「スーパー銭湯やエステなどで、垢すりをしてもらうのが好き」という人は、意外と多いのではないでしょうか。中には、垢すりタオルを購入して、自宅のお風呂で垢すりをしている人もいるでしょう。しかし、「垢すりは百害あって一理なし」という意見も散見されます。はたして、垢すりは体にいいのか悪いのか。この疑問を「自由が丘ファミリー皮膚科」の玉城先生にぶつけてみました。
監修医師:
玉城 有紀(自由が丘ファミリー皮膚科 総院長)
帝京大学医学部卒業。その後、日本医科大学武蔵小杉病院、東京女子医科大学皮膚科、町田市民病院皮膚科などに勤務。2019年、東京都世田谷区に「自由が丘ファミリー皮膚科」を開院。ほか、「溝の口駅前皮膚科」院長、「二子玉川ファミリー皮ふ科」総院長を兼任。「クリニックだからこそできる丁寧な診療」をコンセプトに掲げ、一人ひとりの患者さんと向き合うことを大事にする。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会、日本アレルギー学会、日本感染症学会の各会員。
垢が作られる仕組みとは?
編集部
スーパー銭湯やエステなどで、垢すりのメニューがありますよね?
玉城先生
そうですね。一般的には、皮膚に付着した垢をこすって落とす行為のことを垢すりと呼んでいます。ボディソープや石鹸などでは落とすことができない垢をしっかり落とすことができるため、女性を中心に人気を集めています。
編集部
そもそも、「垢」って何ですか?
玉城先生
簡単にいえば、「皮膚の表面にある古い角質」です。皮膚には、いくつかの層があり、外からの刺激や乾燥から体を守ったり、細菌やウイルスなどの侵入を防いだりする役割があります。角質はとても薄く、ラップ1枚くらいの厚みとも例えられています。
編集部
それが何層にも重なっているということですね。
玉城先生
そうです。人間の皮膚は大きく分けて3層構造になっており、一番上の層を「表皮」、その下を「真皮」、最下層を「皮下組織」といいます。さらに「表皮」は、上から角層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分かれています。
編集部
いずれ、それらが垢になるのですか?
玉城先生
皮膚は体を守るために、常に新しい細胞を作り続けています。表皮の基底層から細胞が作られ、古い細胞は新しい細胞によって角層へ押し上げられ、角質になります。これが、垢のもとというわけです。古くなった角質に、分泌物や皮脂、空気中のほこりなどが混ざり合って垢となり、やがて剥がれ落ちていきます。
垢すりはしない方がいい!?
編集部
自然に剥がれ落ちていくのですか?
玉城先生
はい。新しい細胞が生まれ、角層から垢としてはがれるまでの過程を「ターンオーバー」といいます。通常、ターンオーバーは約28〜45日の周期で繰り返されます。
編集部
ターンオーバーで勝手に剥がれていくなら、わざわざ垢すりをする必要はないのでは?
玉城先生
たしかに、健康な皮膚であればターンオーバーが正常な周期で繰り返されます。そのため、常に新しい皮膚細胞が上へ上へと押し上げられ、やがて剥がれ落ちていきます。しかし、何らかの原因でターンオーバーのサイクルが乱れると、垢がいつまでも剥がれずに、表面に残ってしまうのです。
編集部
悪影響はあるのでしょうか?
玉城先生
肌のハリや弾力が低下したり、肌がくすんで見えたり、ザラついたりする可能性があります。ターンオーバーが乱れると、未熟な角層がどんどん積み重なっていきます。未熟な角層には、肌の潤いを保つ「保湿因子」が少ないため、肌の弾力が落ちてしまうのです。また、色素沈着が起こったり、シミやニキビ跡の原因になったりすることも考えられますね。
編集部
ターンオーバーが乱れる原因は何ですか?
玉城先生
主に、生活習慣の乱れや不適切なスキンケアなどが原因として挙げられます。また、強い紫外線にさらされたり、ひどく乾燥させたりすることも、ターンオーバーの乱れを生じさせます。
編集部
ターンオーバーが乱れたら垢が体の表面にたまるので、垢すりが有効なのではないでしょうか?
玉城先生
いいえ、必ずしもそうとは言えません。多くの場合、垢すりをすると垢を落とすだけでなく、角質まで壊されてしまいます。角質は、いわば「皮膚のバリア」です。必要以上に角質を壊してしまうと、紫外線やほこりなどの有害な成分が、皮膚の中に浸透しやすくなってしまいます。さらに、水分が蒸発して潤いが失われてしまいかねません。
「垢すり」をするときは頻度に注意
編集部
でも、垢すりをすると肌がツルツルになって、綺麗になるような感じがします。
玉城先生
たしかに、垢すりをすれば、肌がスベスベになって美肌効果を実感する人もいるでしょう。しかし、ゴシゴシと強い力でこすると、皮膚が摩擦で傷ついたり、必要な皮脂が失われたりして、肌がますます痛んでしまうのです。
編集部
結局のところ、垢すりはやらない方がいいのですか?
玉城先生
もし、垢すりをしたい場合は、肘や膝、かかとなどの角質がたまって固くなりやすい部位だけ、タオルなどでこするといいでしょう。実際のところ、体の垢は石鹸の泡を立てて、手でなでるだけでも落とすことができます。本来、垢を落としたい場合はそれくらいで十分なのです。
編集部
垢すりをするうえで、気を付けることはありますか?
玉城先生
あまり頻繁におこなわないことでしょうか。自分の肌の状態を見ながら、頻度を調整するようにしましょう。また、湯船に浸かった後にするといった、体を温めてからおこなうといった工夫も大切です。加えて、垢すり後は保湿をすることも忘れないようにお願いします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
玉城先生
垢すりは、どちらかというと「やらない方がいい」印象です。もしやるとしたら、頻度には注意しましょう。また、人間の皮膚はとてもデリケートです。とくに、顔を洗う際は「赤ちゃんの肌を洗っている」くらいの意識をもっておくことがスキンケアの秘訣です。タオルで水気を拭き取るときも、柔らかく押さえる程度にとどめておきましょう。
編集部まとめ
実は、美容のための垢すりが、肌を傷つける原因になっていたことが明らかになりました。たしかに、垢すりをした後は、スッキリして気持ちがいいものですがやりすぎは厳禁です。もし、垢すりをするときは、こする場所や力加減、頻度を考えて、ダメージを抑える工夫が必要です。
医院情報
所在地 | 〒158-0083 東京都世田谷区奥沢5丁目23−18メディス自由が丘 4階 |
アクセス | 東急東横線「自由が丘駅」徒歩2分 |
診療科目 | 皮膚科、小児皮膚科 |