マンモグラフィと乳房超音波検査のそれぞれの長所・短所を知りたい!
乳がん検診には、「マンモグラフィ」と「乳房超音波検査」の2種類があります。どちらも乳がんを発見するための検査ですが、それぞれ長所と短所が異なります。それぞれの検査の特徴を知ることが、乳がんの早期発見にもつながります。どんな違いがあるのか、セルフチェックの仕方とあわせて、元看護師で、現在は医療ライターとして活躍されている広田さんに解説いただきました。
監修看護師・医療ライター:
広田 沙織(看護師・医療ライター)
大阪府立看護大学医療技術短期大学部卒業。卒業後、国立系総合病院の産婦人科病棟にて勤務。婦人科クリニック、派遣看護師などを経て、医療ライターに。2020年に医療ライターズ事務所medipen(メディペン)を立ち上げ。正しい医療情報を発信することを理念として活動中。
マンモグラフィの長所と短所
編集部
乳がん検診には、いくつか検査方法がありますよね?
広田さん
はい。医師からの問診や視診、触診のほか、マンモグラフィと乳房超音波検査という2つの画像検査があります。
編集部
それぞれ、どのような特徴があるのでしょうか? まず、マンモグラフィについて教えてください。
広田さん
マンモグラフィは、乳房専用のレントゲン検査のことを指します。乳房を透明な圧迫板で挟んで、薄く伸ばして撮影します。市町村や職場で受けられる主な乳がん検診の検査方法は、マンモグラフィです。
編集部
なるほど。マンモグラフィの長所を教えてください。
広田さん
乳がんの目印の1つが「石灰化」と呼ばれる状態です。カルシウムの沈着を石灰化と呼び、微細な石灰化がたくさん集まっていると、乳がんが疑われます。マンモグラフィはこの石灰化が確認しやすいため、しこりを作らない早期の乳がんの発見に有用です。また、マンモグラフィでは乳腺が白く、脂肪は黒く写ります。乳腺腫瘤は白く写るため、乳腺の働きが落ち着いて白く写る部分が少なくなる、40代以上の人の乳がんが発見しやすくなります。
編集部
マンモグラフィに短所はありますか?
広田さん
撮影の際、専用の板で乳房をギュッと挟むため、痛みを感じる人もいらっしゃいます。特に、月経前は乳房が張るため、痛みを感じやすいでしょう。また、乳腺が多く脂肪が少ない「高濃度乳房」の人や乳腺が発達している30代以下の人は、白く映る部分が多くなるため、乳がんの判別が難しくなります。
編集部
マンモグラフィは、何歳から受けた方がいいでしょうか?
広田さん
乳がんの好発年齢は、40~50代です。市町村の乳がん検診(マンモグラフィ)は40歳以上が対象となっているので、40歳になったら一度マンモグラフィを受けることをおすすめします。
乳房超音波検査の長所と短所
編集部
もう一方の乳房超音波検査とは、どんな検査か教えてください。
広田さん
乳房超音波検査は、高周波の音波を使って乳房の内部を調べる検査です。乳腺の状態やしこりの有無、しこりの内部を確認することができます。
編集部
乳房超音波検査の長所を教えてください。
広田さん
マンモグラフィでは判別の難しい、高濃度乳房や30代以下の乳がん検診に有用です。また、超音波検査は、超音波の発信機(プローブ)を乳房に軽く押し当てて検査するだけなので、特に痛みはなく、横になった状態で検査を受けられます。レントゲン検査ではないため、被爆することはなく、妊娠中でも検査が必要な場合に使えるのも長所と言えるでしょう。
編集部
乳房超音波検査の短所を教えてください。
広田さん
マンモグラフィと違って微細な石灰化は見つけにくいため、しこりを作らない早期の乳がんには不向きです。また、検査する技師さんの技術によって、検査精度が変わってしまうことも短所と言えます。
編集部
マンモグラフィだけでなく、乳房超音波検査も受けた方がいいのでしょうか?
広田さん
市町村や職場で受けられる乳がん検診の画像検査は、基本的にマンモグラフィのみになります。しかし、高濃度乳房の場合、乳房超音波検査を併用することで乳がんの発見率が高くなるため、医療機関に相談することをおすすめします。なお、千葉市や大阪市などでは、30代(もしくは満30歳)を対象に乳房超音波検査を乳がん検診(費用は一部自己負担)として受けられるようになっているので、ぜひ利用しましょう。
40歳以上なら2年に1回、乳がん検診を
編集部
乳がん検診はどれぐらいの頻度で受けた方がいいのでしょうか?
広田さん
40歳を過ぎたら、2年に1回の頻度で乳がん検診を受けましょう。健康増進法の健康増進事業として、市町村が乳がん検診(問診、視診、触診、マンモグラフィ)を実施しています。ほとんどの市町村では、検診費用の多くが公費でまかなわれていますので、一部の自己負担で検診を受けることができます。
編集部
40歳未満は、乳がん検診を受けるべきでしょうか?
広田さん
乳がんのリスクが高い人は、40歳未満でも検診を受けた方がいいでしょう。肥満の人や初経が早い人、初産が30代以上、出産・授乳経験がない、または少ない、家族に乳がん患者がいる人などは、乳がんのリスクが高いと言えます。一度、乳がん検診を受け、検診頻度を医師に確認することをおすすめします。また、早ければ20代でも乳がんになる可能性があるため、日ごろのセルフチェックが大切になります。
編集部
セルフチェックとは、どんな方法でしょうか?
広田さん
月に1回、乳房のチェックを自分でおこないます。まず、上半身裸の状態で自分を鏡に写します。両手を頭の後ろで組み、乳房の状態を観察しましょう。くぼみや部分的なふくらみ、ただれや変色、ひきつれなどがないかチェックしてください。次に片腕を上げ、上げた方の乳房を反対の手の指4本で「の」の字を書くように指先でなぞって、しこりがないかチェックします。最後に乳頭のチェックをおこないます。指で軽く乳頭をつまみ、分泌物が出ないかチェックしましょう。もし、異常を発見したら、乳腺外科を受診しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
広田さん
2015年のデータですが、乳がんの罹患者数は30代で約4%、40代になると約20%と急増します。また、60代が25%と最も多くなりますので、40歳以降は乳がん検診を2年に1回は必ず受け続けることが大切です。そして、月1回のセルフチェックも忘れずにおこないましょう。
編集部まとめ
乳がん検診の画像検査には、マンモグラフィと乳房超音波検査の2つがあり、マンモグラフィはしこりを作らない早期の乳がんの発見に、乳房超音波検査は高濃度乳房や30代以下の乳がんの発見に有用だということがわかりました。特に40代以降は乳がんの罹患率が高くなるので、定期的に乳がん検診を受けることが大切です。
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