「紫外線が皮膚に悪い」のはどうして?
紫外線と皮膚がんの関係は、誰もが耳にしたことのある話題でしょう。「医療法人浜悠会KO CLINIC」の黄先生によると、オゾンホールの拡大に伴い、オーストラリアにおける皮膚がんの発症数が増加しているそうです。そこで、気になるシミの仕組みも含め、紫外線が皮膚に与える影響について総括していただきました。
監修医師:
黄 聖琥(医療法人浜悠会KO CLINIC 院長)
横浜市立大学医学部卒業。同大形成外科入局、同大学附属市民総合医療センター形成外科助教を経た2014年、神奈川県横浜市に「医療法人浜悠会KO CLINIC」開院。スキンケアのなかでも肝斑の治療・対処法に注力している。日本形成外科学会専門医。日本レーザー医学会、日本美容外科学会、日本美容皮膚科学会、日本抗加齢医学会の各会員。横浜市立大学附属病院形成外科客員研究員。
肌まで到達する紫外線は2種類考えられる
編集部
まず、紫外線について、簡単に説明してください。
黄先生
人間には見えない波長の短い光のことで、UVA、UVB、UVCの3帯域にわかれています。この中ではUVAがもっとも物質を透過しやすく、大量に地表へ到達します。一方のUVBはオゾン層で吸収されるほか、雲などで反射され、一部しか届かず、最後のUVCは、そのほとんどがオゾン層で吸収されます。
編集部
肌に悪さをする紫外線はどれでしょう?
黄先生
UVAとUVBの双方です。UVAは物質を透過しやすいため、肌の奥まで届きます。一方のUVBは、肌の浅い部分で反射されます。つまり、それぞれ悪さをする「到達点」が異なるということです。そのうえで、量的に少ないUVBのほうが、「肌への損傷度合いは強い」とされています。
編集部
波長の短い紫外線のほうが、パワフルなんですね?
黄先生
パワフルというより、遠くに到達するほど分散されていくイメージでしょうか。例えばAMラジオとFMラジオでは、FMラジオのほうが短波長です。音質を比べるとFMラジオのほうがクリアですから、受診可能地域ではパワフル。そのかわり、離れた地域のFM番組は、電波が分散するので聴きづらくなるようなイメージです。
到達深度によって異なる紫外線の被害
編集部
紫外線のイメージはできました。続いて、肌への悪影響について教えてください。
黄先生
第一に考えられる病変としては、やはり皮膚がんでしょう。UVBによる遺伝子の変容作用、つまり“がん化リスク”は、相当に大きいですね。シミの元となるメラニンは、もともと紫外線による遺伝子変容を防ぐ“帽子”のような役割を果たしています。「メラニンキャップ」という言い方があるくらいです。
編集部
なるほど。シミはヒトによって有用なんですね?
黄先生
医学的な観点に限れば一部有用といえます。ただし、日常生活や審美整容的な面では悪影響なのでしょう。そのシミに深く関わっているのがUVBです。シミの元となるメラニンは「メラノサイト」という組織でつくられるのですが、UVBの到達点が、ちょうど「メラノサイト」を刺激する位置にあります。皮膚がんとの関係から、病変を予防する仕組みが自然にできあがってきたのでしょう。
編集部
もう一方のUVAは?
黄先生
「メラノサイト」を通過し、さらに深い真皮の位置でエネルギーとして収束します。ここには「維芽細胞(せんがさいぼう)」という組織があり、おなじみの「コラーゲン」や「エラスチン」などを生成しています。
編集部
UVAでも、やっかいなことになりそうな予感がしてきました。
黄先生
維芽細胞がダメージを受けると、肌にシワやたるみを生じやすくさせます。「コラーゲン」や「エラスチン」の不足により、肌密度が落ちてくるからです。肌の浅い部分では皮膚がんやシミ、肌の奥ではシワやたるみ。これらが紫外線によって生じかねないということです。
対策は不可欠だが、シャットアウトするものでもない
編集部
やはり、紫外線ケア・UVケアは必要ですよね?
黄先生
至らない程度に、バランスを重視して実践してみてください。
季節によっては必要です。市販の「日焼け止め」を使われる方が多いと思いますが、その表記ルールを覚えておいてください。UVAの防御能は「+」の数で表示され、「+」が低いほう、「++++」が高いほうです。また、UVBの防御機能は「数値」で表示され、数値が高いほど防御効果も高くなっています。
編集部
そうしたなか、「日焼けサロン」って、なにをしているんですか?
黄先生
紫外線を浴びせ続けています。日本皮膚科学会の報告によると、日焼けサロンによる健康障害は150例を超すそうです。その中には、肌の炎症に限らず目の疾患も含まれます。
編集部
とにかく、紫外線は浴びなければ浴びないほどいいのですか?
黄先生
ところが紫外線は、ビタミンDの合成に深く関わっています。そして、ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収・再吸収を促すことで知られています。育ち盛りのお子さんや骨粗しょう症が心配される高齢者の場合、むやみに忌避するのも考えものでしょう。紫外線を適度に浴びることも必要ですし、日傘などの対策を取ることも必要。つまり、大切なのはバランスですね。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
黄先生
紫外線の皮膚への悪影響をまとめると、「UVBによる皮膚がんとシミ、UVAによる皮膚の老化」の2点に収束されます。ぜひ、日焼け止めを有効活用ください。女性に限らず、男性の方もお願いします。
編集部まとめ
肌のシミは、皮膚がんに対する防御機能の一種だったのですね。人種による肌の色も同様と考えていいでしょう。ただし、現代においては、日焼け止めという有用な塗布薬があります。皮膚がんとシミ、加えて肌老化を防げるのであれば、使わない手はないでしょう。ビタモンDの生成は必要不可欠ですから、美白信仰へ至らない程度に、バランスを重視して実践してみてください。
シミに関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
- 鷲見玲奈アナと学ぶ紫外線対策 美肌を作り出すスキンケア方法とは
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