眼瞼下垂が「頭痛」「肩こり」の原因になるって本当?
まぶたが下がって、徐々に見えにくくなる病気を眼瞼下垂(がんけんかすい)という。最近は、頭痛や肩こりの原因として注目されている。本当に頭痛や肩こりの原因なのか、そもそも眼瞼下垂とはどのような病気なのか、またその治療について東京都葛飾区にある杉田眼科の院長、吉田真人先生に聞いた。
監修医師:
吉田 真人(杉田眼科 院長)
昭和大学医学部卒業後、同大学病院附属東病院眼科での准教授(医局長)を経て杉田眼科院長に就任。現在は、昭和大学病院附属東病院眼科兼任講師(医局長)。医学博士、日本眼科学会、日本白内障屈接学会、等会員。日本眼科学会認定眼科専門医等、専門は白内障、眼形成、涙道、前眼部疾患。
形成外科の医師が突き止めた眼瞼下垂による頭痛や肩こり
編集部
眼瞼下垂とは、そもそもどんな病気ですか?
吉田先生
上まぶたが垂れ下がってきてしまう病気で、まぶたをきちんと上げることが難しくなります。重度になると黒目に上まぶたがかぶさってしまうので、ものが見えにくくなったり、なんとなくまぶたが重い感じがしたりします。
編集部
眼瞼下垂が頭痛や肩こりの原因になるといわれているようです。本当ですか?
吉田先生
眼瞼下垂をネットで調べると、そうした情報がたくさん出てくると思います。2000年代に入ってから、形成外科の医師が、眼瞼下垂が頭痛や肩こりの原因の一つになっていると発表しました。実際に眼瞼下垂を手術することによって頭痛の症状がおさまった人がいるので、これが一種の頭痛の治療法になったのです。
編集部
実際に眼瞼下垂の手術で頭痛が治った例があるのですね?
吉田先生
日本では頭痛や肩こりで悩む人が多いので、マスコミなどがその事実だけ切り取って取り上げ、眼瞼下垂というと頭痛や肩こりの原因であり、逆に頭痛や肩こりがあると眼瞼下垂かもしれないといわれることが多くなりました。
編集部
眼瞼下垂と頭痛や肩こりの関係は、どのように説明されるのでしょうか?
吉田先生
形成外科では、「まぶたが下がるために、目を見開こうと常におでこにある前頭筋を緊張させるために頭痛を引き起こしたり、首や肩の筋肉を無意識に収縮させるので頭痛や肩こりになることがあります」と説明しています。つまり、肩こりは特に肩がこっているというわけではなくて、頭がこっているというわけですね。
ですから、眼瞼下垂を手術で治療すれば、頭へのいわゆる悪い刺激がなくなって肩こりや頭痛が取れるといわれています。
編集部
眼瞼下垂の原因は何でしょう?
吉田先生
原因は先天性と後天性に分けられます。先天性はまさに、生まれた時からの眼瞼下垂です。後天性の場合の原因はさまざまで、神経的な病気や筋肉の病気が原因である場合もありますが、最も多いのは加齢です。特に、頭痛や肩こりの原因と言われているような眼瞼下垂に関しては、加齢にともなうことが多いのでトピックになっているのです。また、40歳前に眼瞼下垂になる人は、長期間にわたるコンタクトレンズの使用が原因になっているケースが多いといえます。
眼瞼下垂の治療を知る
編集部
年齢的なもしくは加齢性の眼瞼下垂になってしまった場合の治療法は手術しかないのでしょうか?
吉田先生
手術だけです。ただし、「眼科」と「美容形成外科」では手術の目的が違います。この点については、理解しておいていただきたいですね。
編集部
どのように違うのでしょうか?
吉田先生
眼科では基本的な治療は変わらず、見えにくくなったものを見えるようにすることが最大の目的です。一般的な症状のものであれば眼科、より重度のものや外傷がある場合は形成外科で行います。
美容形成外科は、まぶたの形を変えて目を大きくさせるような美容が目的です。軽度の症状で視野が狭くなっているわけではないなど、体の働きに問題がなくても行う場合がこちらになります。
編集部
手術にはいろいろな方法があるのでしょうか?
吉田先生
手術は、眼瞼下垂の程度やその人の目の状態などによって、いろいろな手術法が考えられます。5、6種類はありますね。最近は、まぶたを切らない眼瞼下垂の手術も出てきています。ただ、適用を間違うとうまくいかないばかりか合併症が出る場合もあるので、主治医と話し合いをしながら決めるといいでしょう。
編集部
患者側からすると、目の手術というと、何となく恐いような気がします。
吉田先生
目の手術を受けたことがない人はもちろんですが、なかには眼科に初めて来たという患者さんもいらっしゃいます。ですから、目の手術は恐そうだと思うのも無理はありません。けれど、冷静に考えれば外科や産婦人科のように命に関わるようなリスクはほぼありませんから、眼瞼下垂手術のハードルが高いということはありません。
編集部
ちなみに保険は適用されますか?
吉田先生
眼科の場合は目の形をよくすることを目指して手術をするわけではないので、ほぼ保険適用の手術です。目をパッチリ大きく見せようといった美容を目的とする場合は自費になりますので、手術前には確認してください。
突然の眼瞼下垂は注意が必要
編集部
眼瞼下垂によって何か重い病気を併発するようなことはないですか?
吉田先生
眼瞼下垂だけで重篤な病気になるということはないと考えてよいでしょう。まれに、重症筋無力症の徴候のことがあり注意です。
編集部
では、眼瞼下垂は症状が出たらすぐに手術をしなければいけないというものでもないのですね。
吉田先生
はい、誤解されては困るのですが、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)ができた時に動眼神経麻痺によって眼瞼下垂が起こることがあります。このような場合は、動眼神経が障害された途端に眼瞼下垂が表れます。こうした眼瞼下垂は、私がお話してきた眼科や美容形成外科で扱う眼瞼下垂の話とはまったく違います。この点には注意してください。
編集部
それはこわいですね。見分ける方法はあるのでしょうか?
吉田先生
年齢によるものは長い時間の経過のなかで眼瞼下垂を起こしていきますが、急激に起こるものはほかの重篤な病気が隠れている場合があります。急になったのか、それとも徐々になったのかということは、ご自身の身体の状態を把握する上でとても大切です。
編集部まとめ
眼瞼下垂と頭痛や肩こりには関係があり、手術によってこれらの症状が改善しているという事実はあるようです。ただし、吉田先生が「同じ手術であっても形成外科と眼科では目的が違う」というように、
・眼科・・・見えにくくなったものを見えるようにすることが目的
・形成外科・・・手術によって外形、つまりまぶたの形を変えて目を大きくさせることが目的
以上の点は、どの医療機関を選ぶかという基準にもなり得ますので理解しておいてください。
また、眼瞼下垂は手術の種類も多いので、どの方法がよいのかは医師としっかり相談する必要がありそうです。
医院情報
所在地 | 〒125-0041 東京都葛飾区東金町3-19-1 |
アクセス | JR常磐線「金町(かなまち)駅」北口より徒歩約3分 |
診療科目 | 眼科 |