【漫画付き】「汗をかけば風邪は治る」はホント? ウソ?
子どものころ、ぐっしょりとぬれた下着を着替えさせられながら、「たっぷり汗をかいたから、もう大丈夫」などと言われた経験はないだろうか。考えてみれば、発汗には何の効果があるのだろう。布団にくるまっている限り、気化熱で体温が下がることも考えられない。そんな風邪と汗の関係を、「厚木胃腸科医院」の寒河江先生に解説いただいた。
監修医師:
寒河江 三太郎(厚木胃腸科医院 院長)
北里大学医学部卒業後、国際親善総合病院での研修を経て慶應義塾大学一般・消化器外科教室に入室。その後、稲城市立病院、平塚市民病院、慶應義塾大学病院で消化器疾患を中心に幅広くキャリアを積み、2015年に父が院長を務める「厚木胃腸科医院」を継承。地域のかかりつけとして一般外来をおこないながら、「厚木から胃や腸のがん患者をゼロにしたい」という思いのもと、専門分野である内視鏡による胃がんや大腸がんの早期発見・早期治療に尽力している。日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本禁煙学会認定指導医。
汗をかけば熱は下がるが、発熱の原因を退治してくれるわけではない
編集部
風邪への対処法として「汗をたっぷりかくといい」と言われていますが?
寒河江先生
ウソです。汗をかけば一時的に熱は下がるので、そう言われることもあるようですが、発汗が発熱の原因そのものを退治してくれるわけではありません。むしろ発汗は体力を消耗しますので、ウイルスと戦えるだけのエネルギーが不足することも考えられます。寒くない程度に暖を取り、汗をかきだしたら調節してください。
編集部
誤った伝承が伝わっているのは、どうしてなのでしょう?
寒河江先生
悪寒がするときに体を暖めるのは有効です。そこから先が、間違って受け取られているのではないでしょうか。発汗によるデトックス効果も、ほとんど望めません。もちろん、汗でウイルスが排出されるようなこともありません。具合が良くなったと感じるのは、おそらく一晩ゆっくり寝たからでしょう。汗とは関係ないと思います。
編集部
汗が温度調節の目安にもなるんですね?
寒河江先生
その通りです。寒いと感じるのは、体の末端にある血管が狭く、熱を十分に運んでくれないからです。暖を取ると、やがて末端の血管が広がり、汗をかくほどに暑くなってきます。このタイミングは個人個人で違いますし、症状のステージによっても異なります。
編集部
発汗の弊害として、どのようなことが考えられますか?
寒河江先生
寝冷えや水分不足などが挙げられるものの、やはり一番の問題は体力の消耗です。眠ることができなくても、布団に入り、ゆったり体を休めてください。
編集部
運動してまで「汗をかいて治す」という人がいるようですが?
寒河江先生
お勧めできない方法です。体力のある人は何をやっても治りますから、我流の入り込む余地があるのでしょう。しかしご高齢者やお子さんの場合、回復するほうにエネルギーが回りません。むしろ栄養補給をして、体力の維持に心がけてください。
ウイルスと発熱の関係について
編集部
ウイルスを体内の熱でやっつけるという発想自体は間違っていないのですよね?
寒河江先生
半分は正解です。ウイルスは40度以上の熱で死滅するからです。その一方、白血球などの免疫機構は、高温で活発になります。体温を上げることで、免疫力を強めるという意味もあるのです。
編集部
逆に熱くて苦しいときは、体を冷やしてもいいのでしょうか?
寒河江先生
もちろんです。過度な発熱も、体力を奪ってしまいます。水枕や氷枕などを利用して、体力が消耗しないように工夫してください。
編集部
医院では、どのようなお薬を処方するのですか?
寒河江先生
風邪の諸症状を沈めるお薬です。原因の9割以上はウイルスによるもので、菌をやっつける抗生剤が効きません。したがって、自然に治っていただくしかないのです。その間、せきや発熱がひどいようなら、それをお薬で抑えていきます。
まだまだあった、誤った認識
編集部
ビタミンCが“いい”と聞いたことがあります。
寒河江先生
予防効果があるとされているものの、風邪を引いてしまったら関係ないでしょう。ビタミンCは体内にためておけないので、いずれ尿から排出されます。本当に効果があるのなら、保険診療として認められているはずです。
編集部
「おかゆ」はどうなのでしょう、もっと栄養のあるものを食べたほうがいいのでは?
寒河江先生
おかゆは「正解」です。体力は、食べ物の消化とも関係しているからです。消化しやすいおかゆは、体力が奪われにくいんですね。逆にトンカツなどを食べたら、かえって体力を消耗します。加えて、血液が腸管に多く回るため、血流不足になりかねません。
編集部
ズバリ、風邪をひいたときの王道とは?
寒河江先生
無理をしないでゆっくり休むことです。風邪を引いたら体力勝負だと考えてください。症状がつらい場合は、病院で楽にしてくれるお薬をもらいましょう。もしかしたら、へんとう炎や肺炎などを併発している可能性もあります。症状が軽ければ、自宅で療養に努めてください。
編集部まとめ
発汗は無関係であるばかりか、かえって悪影響を及ぼしかねないようです。このことを、しっかり覚えておきましょう。風邪をひいたら、一にも二にも体力を温存する。栄養があっても消化の悪い食べ物には手を出さない。そして、とりあえず寝ておく。以上の注意点を守って、できるだけ早く回復しましょう。
医院情報
所在地 | 〒243-0814 神奈川県厚木市妻田南 1-16-36 |
アクセス | 本厚木駅北口1番乗り場から約7分「木売場(きうりば)」下車すぐ |
診療科目 | 内科・消化器科・胃腸科・歯科 |