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眼瞼下垂が軽度な場合の治し方は?治療方法をわかりやすく解説!

 更新日:2024/01/12
眼瞼下垂が軽度な場合の治し方は?治療方法をわかりやすく解説!

「目が開きにくくなった」「まぶたが重たい気がする」などの悩みを抱えていませんか? まぶたが下がり視野が狭くなる症状の代表例に「眼瞼下垂」があります。これは加齢などによって引き起こされる症状で、誰でもなる可能性があるものです。

眼瞼下垂は症状の進行度に応じて軽度から重度まで分類されます。症状が比較的軽い場合は、治療方法やセルフケアなど、選択肢が多くあります。「眼瞼下垂かも?」と気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。

柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

プロフィールをもっと見る
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

眼瞼下垂とは

眼瞼下垂とは

眼瞼下垂とは、まぶたを開く筋肉が弱まることにより目の開きが不十分となる状態を指します。視力の低下や頭痛、肩こりなどを引き起こし、見た目にも影響を与えることがあります。

眼科下垂の症状

眼瞼下垂は、まぶたを上げる筋肉である挙筋腱膜やミュラー筋が弱くなり、まぶたが下がる状態です。この状態ではまぶたが瞳を覆うため、視野が狭まり、視力低下や頭痛、肩こりといった症状が表れます。

また、物を見る際に無意識に眉を上げる癖がつくので、額にシワが増えます。この他にも、常に眠たそうな表情に見えるなど、見た目の面でもさまざまな弊害が生まれます。

眼瞼下垂の原因

眼瞼下垂はさまざまな要因で引き起こされます。例えば加齢やコンタクトレンズの装用、先天的な要因や他の疾患が関連していることもあります。

・加齢による影響
加齢は眼瞼下垂の主要な原因とされています。年を重ねるごとにまぶたを上げる筋肉の働きが弱くなり、症状が表れやすくなります。

ある研究によれば、 眼瞼下垂は40歳以上の方の13.5%にみられ、70歳以上では3分の1に達するとされています。1歳年を重ねるごとに眼瞼下垂になる確率が5%ずつ上昇するとも言われています。

・コンタクトレンズの装用
コンタクトレンズを使用する人はまぶたに触れる機会が多く、それが眼瞼下垂の原因となり得ます。特にハードコンタクトレンズは、ソフトタイプよりも摩擦が大きいため、眼瞼下垂になりやすいとされています。

とある研究によると、コンタクトレンズを装用していない方に比べてソフトコンタクトレンズでは8.12倍、ハードコンタクトレンズでは、17.38倍も眼瞼下垂になる確率が高くなると言うデータが出ています。

・先天的要因
生まれつき筋肉が弱くまぶたが下がっているような症状を「先天性眼瞼下垂」といいます。全体の約8%の子どもが、何らかの先天性眼瞼下垂を持っているとも報告されています。

・その他の疾患による影響
他にも、眼瞼下垂を引き起こすとされる原因は多岐にわたります。緑内障の治療薬や生活習慣病も眼瞼下垂の原因となりうる要因です。

緑内障の治療薬である「プロスタグランジン」によって発症したり、高血圧や糖尿病など、動脈硬化を引き起こす生活習慣病によって眼瞼下垂になる確率が高くなるというデータもあります。

眼瞼下垂の種類

眼瞼下垂にはいくつかの種類があります。ここでは、それらの種類とそれぞれの特徴について詳しく解説します。

・先天性眼瞼下垂(せんてんせいがんけんかすい)
先天性眼瞼下垂は、生まれつきまぶたを上げる筋肉が弱い状態で、特に筋肉が非常に薄いことが特徴です。

・後天性眼瞼下垂(こうてんせいがんけんかすい)
後天性眼瞼下垂は、環境や病気などの影響を受けて発症するもので、いくつかの種類に分けられます。以下で具体的な種類を説明します。

・腱膜性眼瞼下垂
このタイプの眼瞼下垂は、「挙筋腱膜」と「ミュラー筋」と呼ばれる、まぶたを上げるための2つの筋肉がうまく機能しなくなることにより起こります。これらの筋肉がうまく働かなくなるため、まぶたが下がる眼瞼下垂を引き起こします。

・皮膚弛緩性眼瞼下垂(=眼瞼皮膚弛緩症)
「挙筋腱膜」と「ミュラー筋」は正常であるものの、皮膚がたるんで視界が制限される状態を指します。正確には「眼瞼皮膚弛緩症」と呼ばれ、眼瞼下垂とは異なります。しかし「腱膜性眼瞼下垂」と「眼瞼皮膚弛緩症」が混在しているケースが多く見られます。

眼瞼下垂が軽度な場合とは?治し方などを見る前に確認

眼瞼下垂が軽度な場合とは?治し方などを見る前に確認

眼瞼下垂の症状には、軽度から重度までの幅があります。自分のまぶたが気になった際、どこをチェックしたら良いかなどを解説します。

眼瞼下垂が軽度な場合とは

軽度の眼瞼下垂の初期段階では、まぶたがわずかに下がり、二重幅が広がります。この段階では、黒目の中心から上まぶたの距離が2ミリメートルから4ミリメートルの間であり、黒目が覆われることはありません。

しかし中期に入ると、この距離は2ミリメートル以下に縮まり、まぶたが黒目を覆い始めます。加齢による影響で徐々に進行するため、自覚症状が出にくいことが特徴です。

自分が眼瞼下垂か確認する方法

一般的にはまぶたが瞳に被さっている状態のことを眼瞼下垂といいますが、実は眼科医の間でも、明確な基準は決まっていません。

ここでは、セルフチェックに役立つ項目を紹介します。

  • ・まぶたが重くて目を開けづらい
  • 視野が狭くなった
  • ・目を開ける際に眉を上げるためおでこにシワが寄る
  • ・眠そうな目だと言われる・思う
  • 普段の生活の中で、上記の症状にあてはまる場合は眼瞼下垂の可能性があります。また直接まぶたに関わりがないように思える項目でも、実は眼瞼下垂につながっている可能性があります。

  • ・60歳以上である
  • コンタクトレンズを長期間使っている・使っていた
  • ・ドライアイや眼精疲労に悩んでいる
  • ・頭痛や肩こりがある
  • このような場合も、眼瞼下垂のリスクが高まります。

    眼瞼下垂になりやすい人とは

    ここでは、眼瞼下垂になりやすい人の特徴を紹介します。

    ・目をこすったり触ったりする癖がある
    目元の皮膚は薄いため、目をこする・触ることで皮膚がダメージを受け、たるみが発生しやすくなります。花粉症やアレルギーの症状があり、目をこすることが多い人は注意が必要です。

    アイメイクのクレンジング時にも摩擦を避けるよう心掛けることが重要です。コットンやシートでゴシゴシこするのではなく、オイルで優しく溶かすなど工夫しましょう。

    ・コンタクトレンズを長期間装用している
    コンタクトレンズの着脱時にまぶたを引っ張ることで負担がかかり、たるみが生じやすくなります。普段コンタクトレンズをつけている人は、着脱時になるべくまぶたを引っ張らないように注意しましょう。

    またコンタクトレンズはまぶたの裏側から眼瞼挙筋腱膜に負担をかけることから、コンタクトレンズを装用しない人に比べて眼瞼下垂になりやすいとも言われています。そのため眼瞼下垂を予防するには、なるべくコンタクトレンズを長い時間装用せず、可能な範囲でメガネを使用することが推奨されます。

    ・ハードコンタクトレンズの使用
    コンタクトレンズがまぶたに負担をかけることは上述した通りですが、ハードコンタクトレンズはソフトコンタクトレンズよりもさらに大きな負荷をかけると言われています。これは、ハードコンタクトレンズをつけることでまばたきの回数が増え、挙筋に負担がかかるためです。

    ・スマホ・パソコンの長時間使用
    スマホやパソコンの使用による眼精疲労も、眼瞼下垂の一因となり得ます。長時間の使用を避け、定期的に休憩を取るよう心掛けることが重要です。

    眼瞼下垂は高齢の方に起こりやすい症状ですが、近年では若い世代にも増えています。これは、スマホやパソコンを長時間使用する人が増えたからとも考えられています。

    眼瞼下垂が軽度な場合の治し方

    眼瞼下垂が軽度な場合の治し方

    眼瞼下垂は自分で治すのは難しく、治療を希望する場合は手術する必要があります。しかし軽度の場合は、セルフケアである程度の改善や進行を遅らせることが期待できます。

    まぶたのマッサージは効果があるのか

    巷では眼瞼下垂の対処法としてまぶたのマッサージを紹介する記事などを見かけることがありますが、これは逆にたるみの原因となるため推奨されません。

    また、まぶたを支える挙筋は非常に薄い筋肉であり、足や腕を鍛えるような筋トレではほとんど効果を期待できません。しかし、まぶたのたるみの予防には一定の効果が見込まれると言われていますので、後ほどやり方を紹介します。

    アイプチなどには注意が必要

    眼瞼下垂はまぶたが下がってくるため、対処としてアイプチを使用する人もいます。アイプチは二重まぶたを作る効果があるため、目を大きく見せることができ、眼瞼下垂の一時的な改善が期待できます。

    しかしアイプチを使用することにより、かぶれなどの皮膚のトラブルやさらなるたるみの原因となる可能性があります。一時的な解決策としては有用ですが、根本的な治療法ではありません。

    コンタクトレンズによる眼瞼下垂

    上述した通り、コンタクトレンズの長時間の使用や不適切な取り外し方法はまぶたに負担をかけ、眼瞼下垂の原因となります。

    装用時間を短縮する、ハードコンタクトからソフトコンタクトに切り替える、メガネの使用時間を増やすなどの対策を取ることをおすすめします。

    眼瞼下垂の予防トレーニング

    眼瞼下垂を予防するためのトレーニング方法を紹介します。

    ・両目を大きく開くトレーニング
    1つ目は、目を開く筋肉を強化するトレーニング方法です。

    1. 1.目を閉じて額の力を抜きます。
    2. 2.下がった状態の眉毛が動かないように、手のひらで固定します。
    3. 3.限界まで両目を開け、5秒間キープします。
    4. 4.ゆっくりと目を閉じ、リラックスします。

    1~4を1セットとして、1日数セット行います。習慣化することで、眼瞼挙筋の衰えを防げます。

    ・ウインク・まばたきトレーニング
    目の周りの筋肉「眼輪筋(がんりんきん)」を鍛えるトレーニングも、眼瞼下垂の予防に効果的といわれています。2つ目は、ウインクとまばたきで眼輪筋を鍛えるトレーニング方法を紹介します。

    ・ウインク
     右目と左目で交互にウインクをします。左右各5回を1セットとして、1日数セット行いましょう。

    ・まばたき
     上、下、左、右を見ながらまばたきをします。各方向5回ずつを1セットとして、1日数セット行いましょう。

    軽度の眼瞼下垂の治し方を相談する病院の選び方

    軽度の眼瞼下垂の治し方を相談する病院の選び方

    軽度の眼瞼下垂を治療する場合の、病院の選び方を紹介します。

    眼科と美容外科はどちらが良いか

    年々、まぶたの重さや視野の狭まりを感じるようになった場合は、まず眼科や形成外科に相談しましょう。眼瞼下垂と診断された場合は、保険適用での治療が受けられます。しかし、その適用は症状の重度によって異なり、軽度の症状の場合は保険が適用されないこともあります。

    眼瞼下垂と診断される明確な基準はありません。一般的には、上まぶたが瞳孔(黒目の中心部分)の大部分まで下がっていて、まぶたを開けるために力が必要、視野障害を伴う場合に眼瞼下垂と診断されるケースが多いようです。これは重度もしくは中度の症状であり、軽度(上まぶたが瞳孔に少しだけ被さっている、視野障害を伴わない)の場合は保険適用にならない場合が多いです。

    保険適用外となる軽度の眼瞼下垂や美容目的の手術を希望する方は、美容外科での治療が適しています。美容外科では、機能回復と同時に「目を大きくする」「希望のデザインの二重にする」といった美容的な改善を目指す手術も行われます。

    安心して安全な治療を受けられるか

    手術は心身に大きなストレスを与えるものです。そのため、安心と安全を重視した病院選びが大切です。

    初回カウンセリングでの対応や院内の清潔さ、プライバシーの保護、経験豊富な医師の在籍状況などを確認しましょう。

    アフターフォローはどうか

    手術には多くのリスクが伴います。そのため、クリニックとの円滑なコミュニケーションが取れるか、充実したアフターフォローが受けられるかどうかを確認することが重要です。

    保証制度が整っているクリニックを選べば、万が一のトラブルにも対応してもらえて安心です。

    眼瞼下垂が軽度な場合の病院での治し方

    眼瞼下垂が軽度な場合の病院での治し方

    軽度の眼瞼下垂に対する病院での治療方法と、それにかかる費用について解説します。

    眼瞼下垂の治療費用はどれくらいかかるのか

    まぶたが重く感じる、目が開きにくい、視界が狭くなるなど眼瞼下垂の症状が表れたら、眼科や形成外科で診断・治療を受けることができます。健康保険が適用される場合は3割の自己負担となり、片目だけの治療で約2万円、両目だと約5万円が目安とされています。

    一方で、保険適用外の治療や美容目的での手術を希望する場合は自費診療となります。費用はクリニックによって異なりますが、おおよそ20〜30万円が相場となります。

    埋没法での治療

    埋没法は医療用の糸を用いて眼瞼挙筋を縫って固定し、目を開きやすくする治療法です。この方法では理想の二重ラインも作ることができます。

    施術時の痛みはほぼなく、まぶたに糸を通す際に内出血する場合はありますが、見た目にはそれほどわかりません。術後のケアも比較的簡単です。またメイクや洗顔、シャワーは施術当日から可能です。そのため、日常生活にも支障をきたしません。

    挙筋腱膜タッキングでの治療

    瞼板の上に腱膜の枝が張り付いている状態のまま、腱膜の根本から末梢へたぐりよせて固定する方法です。眼瞼下垂の治療法としては簡単な術式に含まれます。

    軽度から中度と幅広い眼瞼下垂に適しており、比較的簡単な手術です。腱膜と瞼板との瘢痕癒着が少ないという特徴があります。

    眉毛下切開術での治療

    眉毛の下のラインに合わせて切開し、余分な皮膚を除去して縫合する方法です。眼瞼下垂の症状が改善されるだけでなく、見た目も自然に仕上がります。術後の傷跡も目立ちにくく、ダウンタイムも比較的短いです。

    その他の治療法

    軽度の眼瞼下垂には埋没法でほぼ対応可能ですが、中度~重度の症状には切開法がおすすめされます。

    施術中の痛みはほぼなく、術後の腫れは2週間ほどで落ち着きます。また、術後1週間ほどで抜糸を行います。

    まとめ

    まとめ

    眼瞼下垂は症状の進行度に応じて、軽度から重度まで分類されます。軽度の場合は見た目にはあまり変化がなく、自覚症状もほとんどないことが多いです。

    加齢をはじめ、さまざまな原因が引き起こす眼瞼下垂は、発症したら基本的に自然治癒することはありません。セルフケアで治すことはできないため、自身の症状や希望に応じた治療方法を選択する必要があります。

    症状が軽度の場合、セルフケアによってある程度の改善が見込めたり、進行を一時的に遅らせることはできるかもしれません。しかし誤った対応によってはかえって症状を悪化させる可能性があるため、まぶたについて気になったことがあれば、まずは眼科や形成外科を受診することをおすすめします。

    この記事の監修医師