眼瞼下垂には眉下切開が向いている?眼瞼下垂の原因や治療方法・眉下切開のメリット・ダウンタイム・クリニック選びのポイントも解説
眼瞼下垂とは、まぶたが下方に垂れて瞳孔にかかってしまっている症状のことです。
加齢や疲労などによって生じやすい眼瞼下垂は、容姿以外にも様々な影響を及ぼします。眼精疲労や頭痛・肩こりの原因になる場合もあるので注意が必要です。
生活の質の低下にもつながりかねない眼瞼下垂。まぶたが下がってきた、肩がこりやすいなどの症状を感じている方は要注意かもしれません。
まぶたの垂れ下がりの有効な治療法として、眉の下を切開する眉下切開が挙げられます。
本記事では、眉下切開の方法やメリットについて詳しく解説します。ダウンタイムやクリニックの選び方についてもご紹介しますので、眼瞼下垂が気になっている方はぜひご覧ください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
眼瞼下垂には眉下切開が向いている?
まぶたが垂れ下がって見える症状には、大きく分けて3つの種類があります。
先天性のもの・後天性のもの・正確には眼瞼下垂ではないものの類似した状態を呈しているもの(偽眼瞼下垂)です。
3番目の偽眼瞼下垂の大きな原因のひとつとして、まぶたの皮膚のたるみがあります。
まぶたの皮膚のたるみ改善に大きな効果が期待できるのが、眉下切開による治療です。
眉下切開は文字通り眉の下の皮膚を切開し、余分な皮膚を切り取る手術を指します。
上まぶたのたるみ改善が図れる眉下切開は、皮膚のたるみが原因の偽眼瞼下垂の治療に適した治療であるといえるでしょう。
とはいえ、どのような場合でも眉下切開が最適なわけではありません。
一口に眼瞼下垂といっても、その原因や症状の度合は様々です。原因や症状を踏まえた上で、適切な治療方法を選択する必要があります。
また、眉下切開にはリスクも伴います。外科手術による出血やダウンタイムなどについても十分注意しておく必要があるでしょう。
眼瞼下垂を効果的に改善するためにも、ご自身の症状に適したアプローチについて医師に相談しながら治療を進めましょう。
眼瞼下垂の原因
生活の質の低下につながることもある眼瞼下垂。「適切な治療方法を知りたい」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?
効果的に治療を進めるためには、眼瞼下垂がどのようにして引き起こされるのかという「原因」をきちんと把握する必要があります。なぜなら、原因の違いによっても適切なアプローチは異なるからです。
先述した通り、眼瞼下垂は先天性のもの・後天性のもの・正確には眼瞼下垂ではないものの類似した状態を呈しているもの(偽眼瞼下垂)の3つに大別できます。
後天的な眼瞼下垂の主要な原因としては、加齢やコンタクトレンズの長期使用などが挙げられます。
それ以外にも、外傷や疾患などによってもまぶたの垂れ下がりが引き起こされる場合もあるので注意が必要です。
ここからは、眼瞼下垂の主な原因について具体的にご紹介します。
生まれつき
生まれつきの眼瞼下垂は先天性眼瞼下垂と呼ばれます。遺伝的な要因などにより、まぶたが生まれつき下がっている状態です。
まぶたを開け閉めする際には、それに関わる筋肉や神経が働きます。
まぶたを開け閉めする筋肉は上眼瞼拳筋(じょうがんけんきょきん)といいますが、この筋肉が未発達だと先天的に眼瞼下垂になる場合があるのです。
また、神経の発育異常なども先天性眼瞼下垂の原因になり得ます。
遺伝的な要因によって生じることも多い先天性眼瞼下垂。まぶたの左右の開き方に差が生じたり、眉を上げてものを見る傾向が強くなったりするので見た目の問題につながることがあります。
また、見た目の問題以外だけでなく視力の発達等に悪影響を及ぼす可能性もあるので、注意が必要です。
視力の問題など二次的な症状を予防するためにも、状態によっては早期からの治療が必要となるケースもあります。
早期発見と早期治療につなげるためにも、適切な医療機関を受診することが望ましいでしょう。
小児への治療・手術例などもあるので、気になる場合は早めに医師に相談するようにしましょう。
加齢による筋肉のゆるみ
眼瞼下垂には、後天的な要因によるものもあります。
加齢による皮膚や筋肉の衰えは、後天的な眼瞼下垂の大きな原因のひとつです。
「年齢を重ねて眼が小さくなってきた」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?
そのような場合は、加齢によって眼瞼下垂の症状が生じている可能性も考えられます。
加齢によって皮膚や筋肉は衰え、たるみやゆるみが生じます。まぶたに関してもそれは同様です。
筋肉が衰えることによりまぶたを開閉するための力が弱まり、まぶたが下がってしまうのです。
加齢による眼瞼下垂は、老けた印象につながってしまうこともあります。まぶたが下に垂れることによって眠そうに見えてしまう場合もあるでしょう。
さらに、おでこの筋肉を酷使してまぶたを上げようとするため、額のしわが目立つようになるなどの弊害も引き起こされます。
眼瞼下垂を改善することで若々しい印象を取り戻せる場合もあるので、気になる方は医師への相談をおすすめします。
コンタクトレンズの長期使用
コンタクトレンズを長期に渡って使用することも、眼瞼下垂の原因として挙げられます。
コンタクトレンズが眼瞼下垂の原因となる理由については諸説あるため注意が必要です。
一説によれば、コンタクトレンズを装着した状態でまばたきを繰り返すことで腱膜や筋肉が過度な負担を受け、まぶたが上がりにくくなるとされています。
コンタクトレンズの使用によって気になる症状が生じた場合は、すぐに医師に相談するようにしましょう。
眼瞼下垂の治療方法
眼瞼下垂の治療にあたっては、様々なアプローチがあります。特に手術的治療は、眼瞼下垂の治療でしばしば用いられる手法です。
手術的治療の代表的なものとして挙筋短縮術などが挙げられます。
今回ピックアップしてご紹介している眉下切開も、偽眼瞼下垂の治療において適用されることがある手術的手法のひとつです。
外科的なアプローチによりまぶたの垂れ下がりが大幅に改善されることもあり、大人だけでなく小児にも手術的治療が適用される場合もあります。
手術によって症状が改善される場合もありますが、一方でリスクや予後に関しての注意も必要です。医師に十分に相談し、納得した上で治療を進めるようにしましょう。
ここからは、眼瞼下垂の代表的な治療方法をいくつか紹介します。
挙筋筋膜の短縮
コンタクトレンズを長期に渡って使用することも、眼瞼下垂の原因として挙げられます。
挙筋腱膜は薄い膜状の組織で、まぶたの開閉に重要な役割を果たす部分のひとつです。
加齢などにより挙筋腱膜がゆるむとまぶたの開閉をつかさどる筋肉の働きが十分に作用しなくなり、結果として眼瞼下垂が生じる場合があります。
後天的な眼瞼下垂の多くが、加齢などによる腱膜の不具合に起因するものです。
そのため、挙筋腱膜を外科的に短縮する挙筋短縮術によって眼瞼下垂を改善できる場合があります。
挙筋短縮術によって腱膜のたるみが改善し、筋肉の力がしっかりと瞼板に伝わるようになる効果が期待できます。
なお、挙筋腱膜の衰えが著しいなどの理由により挙筋短縮術では十分な効果が見込めない場合もあるため注意が必要です。
その場合は組織の移植等他のアプローチの検討が求められるので、医師に相談し適切な治療方法を選択しましょう。
ミュラー筋のタッキング
ミュラー筋は挙筋のさらに裏にある筋肉組織で、挙筋腱膜と同様、まぶたの開閉に関わる大切な組織のひとつです。
このミュラー筋を剥離し、糸を用いて短縮・固定するのがミュラー筋のタッキング術です。
ミュラー筋をたくし上げるミュラー筋のタッキング術によって、眼瞼下垂の改善が図れる場合があります。
特に、まぶたの皮膚があまりたるんでいない軽~中度の眼瞼下垂に適用されることが多い治療法です。症状の度合が重くない場合は皮膚を切除せずに手術することも可能なので、傷跡などのリスクが少ない治療方法であるといえるでしょう。
とはいえ、皮膚がたるんでいる場合などは切除を行う場合もあることに留意しておく必要があります。また、一般的に重度の症例には適用されないことにもご注意ください。
なお、ミュラー筋のタッキングは挙筋前転術などの手術法と併用して行われることもあります。
眉下切開
まぶたのたるみは、まぶたが垂れ下がって見えてしまう大きな原因のひとつです。
眉下切開によって、まぶたのたるみ改善効果が期待できます。
眉下切開は、眉毛の下の皮膚を切除してから縫合することによってまぶたのたるみを上に引き上げる手術です。先述したようにまぶたの皮膚がたるむこと(上限皮膚弛緩症)によって、眼瞼下垂に類似した状態(偽眼瞼下垂)が生じる場合があります。
余分な皮膚が眼にかぶさってしまい、眼瞼下垂のような症状や外見になってしまうのです。
眉下切開によって、偽眼瞼下垂の悩みを改善できる可能性があります。
眉下切開のメリット
ここまで、眼瞼下垂の主な治療方法をいくつかご紹介してきました。
中でも眉下切開は、皮膚のたるみが原因の偽眼瞼下垂に特に効果を発揮しやすい治療方法です。
ここからは、眉下切開に焦点をあてて解説を進めます。
眉下切開には、傷跡が目立たない・自然な仕上がりが期待できるなどのメリットがあります。
眉下切開に関する正しい知識を身に付けて、まぶたのお悩み解決の一助としてみてください。
傷跡が目立たない
まぶたのたるみは、まぶたが垂れ下がって見えてしまう大きな原因のひとつです。
眉下切開は、傷跡が目立ちにくい手術のひとつといえるでしょう。
というのも、眉の下部は構造上傷跡が残りにくい部分であるといわれているのです。
そのため、手術跡が残りにくく傷跡が目立たないというメリットがあります。
さらに術後の腫れや痛みが比較的軽微で、手術当日からメイクなどが可能な場合もあります。
眉下という位置の特性上、前髪で傷跡を隠せる方もいらっしゃるでしょう。
上記のような観点から、日常生活に支障が出にくいのも眉下切開の利点といえます。
周囲にできるだけ気づかれずに施術を受けたい方や、忙しい日常の中で治療を進めたい方にもおすすめの治療方法です。
自然な仕上がりになる
「まぶたの垂れ下がりを改善したいけれど、手術後の美容的な仕上がりが心配」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
眉下切開は、適切に用いることで比較的自然な仕上がりが見込めます。
まぶたではなく眉の下の皮膚を切開するので、目元の印象が施術前後で過度に変わってしまうおそれが少ない施術のひとつです。
また、眉下切開では、取り除く皮膚の範囲などを微調整することで仕上がりに差を付けられます。
そのため、一人ひとりに適した仕上がりをきめ細かく追及しやすい治療法であるといえるでしょう。
顔の骨構造や肌質などは十人十色です。個人の希望に沿って適切な手術を行うことで、自然な仕上がりに近づけられます。
なお、自然な仕上がりを実現するためには高い技術を持った医療機関を選択することが重要です。
信頼できる医師のもとじっくりとカウンセリングを受け、理想の仕上がりに近づけましょう。
眉下切開のダウンタイム
眉下切開手術は比較的ダウンタイムが短い手術であるといえます。手術から抜糸までにかかる期間はおおよそ1週間です。
手術後は痛み・腫れ・赤らみなどが生じる場合もありますが、一般的に数日でおさまります。
また、手術当日からメイクなどができる場合もあります。
なお、ダウンタイムを長引かせないためには手術後の適切なケアも大切です。医師の指示に従い、手術部位を適切に管理しましょう。
眼瞼下垂の治療がおすすめな人
眼瞼下垂によって、様々な悩みが生じる場合があります。
適切な治療によって悩みを解決できる可能性もあるので、気になる方は医療機関への早期相談がおすすめです。
ここからは、眼瞼下垂の治療を特におすすめしたい方について詳しくご紹介します。
「自分も当てはまるかも」と感じた方は、ぜひ一度医療機関に相談してみてください。
まぶたが開きにくい
「まぶたが開きにくい」と感じていませんか?
加齢による腱膜の衰えや、先天的な筋肉や神経の異常によってまぶたが開きにくくなることがあります。これがいわゆる眼瞼下垂の状態です。
まぶたが開きにくい状態では、おでこの筋肉に力を入れて何とかまぶたを開こうとします。
さらに、ものを見る際にあごを上げるなど姿勢にも無理が生じてしまいます。
その結果としておでこにしわが生じてしまったり、肩こりや眼精疲労を感じやすくなったりするなど様々なデメリットがあるのです。
二次的な困りごとを防ぐためにも、まぶたが開きにくいと感じている方はぜひ一度眼瞼下垂の治療を検討してみてください。
眼精疲労が強い
現代社会においては、長時間のパソコンやスマートフォンの使用によって目が疲れてしまうこともしばしばです。
目を酷使する生活をしている方も多いかもしれませんが、それだけでなく眼瞼下垂によっても眼精疲労が生じる場合があることをご存知でしょうか?
先述したように、眼瞼下垂が生じている場合無意識にまぶたを上げようとして、おでこの筋肉や顔の向きに無理が生じます。
その結果として眼精疲労が強くなり、ものがかすんで見えたり目が痛んだりする場合もあるのです。
眼瞼下垂は、軽度な場合自分ではなかなか気づかないこともあります。
しかし、日常的な眼精疲労などが眼瞼下垂に起因していることもあるのです。
眼瞼下垂を早期に発見し適切な治療につなげるためにも、眼精疲労がある場合は医師への相談をおすすめします。
肩こりや頭痛がある
眼精疲労と同様、肩こりや頭痛も現代社会にはつきもののお悩みのひとつです。仕方がないと放置している方も多いかもしれません。
しかし、日常的な肩こりや頭痛にも眼瞼下垂という隠れた原因が潜んでいる場合があるため注意が必要です。
自分でも意識しないうちに垂れ下がったまぶたに起因する見にくさを補おうとして、慢性的に筋肉が緊張してしまっていることがあります。
その結果として、肩が凝ったり頭痛を生じたりする可能性も考えられるのです。
肩こりや頭痛にお悩みの場合は、眼瞼下垂を疑ってみてもよいかもしれません。
気になる症状がある場合は、できるだけ早めに医師に相談するようにしましょう。
眉下切開の手術を受けるクリニックを選ぶポイント
ここまで、偽眼瞼下垂の治療に効果的な眉下切開について様々な情報をお伝えしてきました。
眉下切開の手術を受ける際には、クリニック選びも重要なポイントです。
眉下切開は比較的傷跡が残りにくくダウンタイムも短い施術ですが、治療が適切でなければリスクは上がり、希望の仕上がりも実現しにくくなります。
経験豊富な医師のもとで施術を受けることが、極めて重要であるといえるでしょう。
クリニック選びの際には、手術実績やアフターケアなど様々な要素を複合的にチェックするのがおすすめです。
また、医師の技術や施設・設備についても慎重に検討する必要があります。
さらに、理想の仕上がりに近づけるためには十分なコミュニケーションも必要不可欠です。そのため、カウンセリングの充実度も大切な検討材料のひとつであるといえるでしょう。
様々な角度から慎重に検討し、納得して施術を受けられるクリニックを探してみてください。
編集部まとめ
眼瞼下垂には様々な原因があり、それぞれの原因や症状の出方に適した治療方法を選択する必要があります。
眉下切開は、まぶたの皮膚の弛緩に起因する偽眼瞼下垂に効果を発揮しやすい治療方法です。
ダウンタイムの短さなど様々なメリットがある眉下切開は、加齢によるまぶたのお悩みにもアプローチしやすい手法であるといえるでしょう。
まぶたの垂れ下がりにお悩みの方は、専門の医療機関へ相談するのがおすすめです。
適切なクリニックを選択しご自身にあった治療を受けることで、まぶたのお悩みが解消できるかもしれません。
参考文献
- 腱膜性眼瞼下垂症について|日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第二病院
- 加齢性眼瞼下垂|一般社団法人 日本形成外科学会
- 眼瞼下垂|KOSMOS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
- 先天性眼瞼下垂|一般社団法人 日本形成外科学会
- 眼瞼下垂に悩むかたへ|公益社団法人 日本眼科学会
- 眼瞼挙筋切除および吊り上げ術を施工したMarcus Gunn症候群の小児の一例
- 眼瞼下垂には眉下切開リフトがおすすめ!期待できる効果や注意点を全解説|銀座長澤クリニック
- 眼瞼下垂|神戸大学医学部附属病院美容外科
- 眼瞼下垂症の治療|近畿大学病院
- タッキング法|見た目年齢-10歳 瞳のたるみ・眼瞼下垂の名医紹介サイト
- 展示発表
- 上まぶたのタルミを取る|日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第二病院